『一体、この世界に何が起こったんだろう?』私は訳も分からず只々動揺するばかりでした。
周りをよく見ようと何度か目を擦って見てみるのですが、太陽光線の射る様な光をまともに受けた私の目は眩んだ儘でした。そう容易に元には戻りません。私は視界が利かないせいでしょうか、遂には目眩までして来ました。今迄立っていた足元がグラグラとぐらついて来るようです。そう感じると踏みしめる足が益々覚束無くなり、よろめいて来て大地の上に突っ伏してしまいそうになるのでした。私はフラフラヨロヨロと両足が縺れて垂直に地面に立つ為の平衡感覚が得られずに、両手をばたつかせて思わずクルクル1、2回転してしまいました。そうこうしている内に、こんな状態で自分が倒れなかったのは不思議な事だと、自ら感心したり驚いたりするのでした。
この状態を何とかしたいと考える内に、『そうだ!』目を開けて見ているからいけないのだ!。私はそう気付くと確りと両目を閉じました。大地を踏みしめる足の感覚だけを頼りにして両足を踏ん張りました。ふらつく頭を気遣いつつその場に立ち、バランスを取る様に上げていた両手もそっと下へ下ろしてみます。すると頭の中心からクラクラ感が引いて行き、その内頭内部の揺れは収まったように平静になりました。
どうやら目眩が落ち着いた様です。私はそっと目を開いてみました。目の前にはぼんやりと広場のそれらしい風景が広がっているようです。ここでまた目眩がしては大変です、私はすぐに視線を下方へ落とし地面を見ました。その後はゆっくりと、体調に気を使いながら風景の下方から自分の目の高さへ、順に目を慣らすように視線を上げてみました。目が現在の世界や溢れている光に慣れてくると、自分に全く目眩が無いのを確認してから、漸く何が起こっているのか見極めようときょろきょろ辺りを見回してみるのでした。
そこには、いつも遊んでいる広場の風景が何の変哲も無く広がっていました。施設の側壁、土埃の立ちそうなむき出しの大地、地面には砂利や石ころ。広場中央近くを見ると1本の木、相変わらず曲線的で女性的な容姿をしています。木にも何の変化も無い様です。
近くに目を移して来ると、並んで寄り添うように立ちこちらを見ているいとこ達の顔が2つ目に入りました。彼等は何だか悪戯っぽそうに、可笑しそうな目をして笑んだ儘でこちらを見ています。
更に私が横に目を移すと、そこには何時もある石碑が、何時もある通りの場所にいつもある通りに存在していました。その直ぐ傍らには先程の男の子達2人が並んで立っていました。2人は揃って俯いて何かを観察している気配でした。彼等は順繰りに話しをしているようです。石碑の足元に何か彼等の気を引くような物でもあるのでしょうか、目を下に向けた儘、夢中で何か話し込んでいるようです。