シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

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豪潜水艦受注を逃して日本は残念? 良かった? (1)

2016年05月15日 | 政治家 政治屋?
左は、海上自衛隊の「そうりゅう型」潜水艦。 アボット前豪首相と安倍首相 (14年11月)。
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オーストラリアの次期潜水艦建造を競っていた日仏独による受注競争は、決着しました。 過去 これを巡る報道では、日本有利との観測が多かったように感じますが、なぜ日本は受注できなかったのでしょうか? そして日本側が大いに残念だという報道が少ないのはなぜ?

潜水艦開発建造能力を有していない (人口二千万の) オーストラリアは、同盟国とはいえ 米原潜の輸入が見込めないなら、それに代わる大型の高性能通常動力の潜水艦の輸入あるいは共同開発を見込めるとして日仏独の潜水艦を検討してきました。

日本有利といわれた日豪蜜月の発端は、2年前の潜水艦の研究や防衛装備品の輸出・共同研究について合意してからです。 日本の潜水艦の優秀性は、動力に原子力技術を使わず、AIP (非大気依存推進) 機関を採用した点にあります。
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ウィキペディアから __ 2014年4月に武器輸出三原則の改訂を受け、防衛装備品の日豪共同開発の協議が進み、6月に日豪は、潜水艦の研究や防衛装備品の輸出・共同研究について実質的に合意した。

AIP は、内燃機関 (ディーゼル機関) の作動に必要な大気中の酸素を取り込むために浮上もしくはシュノーケル航走をせずに 潜水艦を潜航させることを可能にする技術の総称。 そうりゅう型潜水艦は、海上自衛隊が運用する AIP の通常動力型潜水艦の艦級。 2014年度計画の10番艦の価格は約 513億円、リチウムイオン電池を搭載する11番艦の価格は 643億円 である。

『日豪、潜水艦技術を共同研究 武器輸出新原則受け』(2014年4月5日 日経)
『日豪が潜水艦念頭に共同研究、防衛装備品の協定で実質合意』(2014年6月11日 ロイター)

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その数ヶ月後の報道では、オーストラリア側の希望に合致するのが日本製の “そうりゅう型潜水艦” だとしています ―― 潜航期間が2週間程度と長い上、静穏性に優れているのが特徴で、敵に見つかりにくい。 ただし 500億円 という高価格と海上自衛隊が難色を示していること、国外建造案に対し 国内で反発が強いことが難点だとも (2014年9月1日付けロイター記事)。

そして オーストラリアは 200億豪ドル (約 1兆9600億円) で日本から潜水艦を最大 10隻を購入する可能性が高まっている、と2014年9月8日付け米ウォール・ストリート・ジャーナル誌 (WSJ) が報じると、多くの豪メディアが、反対派議員や業界・労働組合の声を取り上げます。

南オーストラリア州では 27,000人が軍需産業に携わり、うち 3,000人は造船業ですから、日本での製造 (=輸入) になると数千人の職が危うくなるのです。 以前 豪与党は、「オーストラリア潜水艦企業体 (ASC)」に、400億豪ドル (約 3兆9300億円) で12隻の新型潜水艦を発注することを選挙公約に掲げていました (英ガーディアン紙 日付不明ですが2014年9月9日以前です)。

当初予算の半額で済むとはいえ、さっそく豪野党は、”公約破り” を激しく非難したそうですから、与党の立場がどういうものか容易にうかがえますね。

海上自衛隊・米海軍と共通の装備や通信システムを持つことで、日米豪の軍事同盟を強化することと、中国は安全保障上の脅威であると同時に経済的には「重要なパートナー」であるため、これらのバランスをとるのは難しく、さらに “国内雇用の継続” という考慮すべき変数が持ち上がってきました。
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WSJ 記事が出た後の2014年11月 仏国防相が初めて豪州を訪れ、豪国防相・首相と話す機会を得ました。 当時 日豪は首脳同士の仲が緊密で、中国けん制のために防衛協力を強化したいとの思いも共有しており、日本が受注することは確実とみられていました。

しかし 日本が受注すると豪州に経済効果がないとの声が高まり、15年2月 強権的との批判や景気減速などで支持率の低下したアボット首相は、競争入札への変更に切り替えざるを得なくなります。 一方 同じ2月には「米軍制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長は、訪問先のオーストラリアで、調達先は同国が決定することだとしつつ、同盟国との “相互運用性” がカギだと指摘しています」(2015年4月2日付けロイター)。

ここで 現役のコリンズ級潜水艦の状況について言及します。
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ウィキペディアから __ コリンズ級潜水艦はオーストラリア海軍の潜水艦の艦級 (追加1へ)。 潜水艦更新計画 (追加2へ)。
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15年3月に オーストラリアで開かれた潜水艦会議に豪国防相が出席したにもかかわらず、日本が現役の政府・企業関係者を送らなかったことは、豪国内で驚きを持って受け止められました。 仏独はこの場で自社の潜水艦建造能力を大いにアピールしました。

豪企業の参画をできるだけ高めるのが入札の条件だったのですが、戦後長らく武器の禁輸政策を取ってきた日本の防衛産業は同国内に足掛かりがなかったのです。 そして 独が情報戦を仕掛け、日本は豪国内で建造しない、最先端の鋼材を使うつもりがないなどの現地報道が相次ぎます。

また、「日本は入札への参加に消極的だという。 静音性や高度な溶接技術といった機密性の高い潜水艦技術に配慮し、日本の業界も重要な建造工程をオーストラリアで行うことに慎重だとみられている」(15年4月2日付けロイター) という記述もあります。
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一方で 日本国内のメディアからも、日本の最先端軍事技術を安易に他国 (同盟国であっても) に出すのはどうか?という記事が出てきます。 “気前よく” オーストラリアに提供するのは、“お人好し” に過ぎるというのです。
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『安易に売るべきではない日本の潜水艦 “先端技術”』(2015年5月14日 北村 淳/JB Press) ―― 米海軍関係者には、日本政府の「潜水艦先端技術売り込み」方針に驚きを隠せないものが少なくない。 いくらオーストラリアが友好国といっても、つい最近には親中派が政権を担ったこともある国に最先端の潜水艦技術を提供することは危険ではないか? 海自の AIP 技術は、日本にとっては米原潜技術に匹敵する。 日本政府は最先端潜水艦技術の重大性を正しく認識しているのだろうか?
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(2) へ続く


追加1_ 設計はスウェーデン海軍の潜水艦を設計していることで知られるコックムス社で、本艦級はスウェーデン海軍のヴェステルイェトランド級等を参考にしている。 ただし それらスウェーデンの主力潜水艦に比べて2倍から3倍の排水量を有するほど大型化されており、搭乗する乗員数も増加している。

評価 ―― コリンズ級は設計の段階から様々な問題が指摘されており、導入後も技術的な問題やオーストラリア海軍の人員不足から運用に支障が生じるなどした。 オーストラリアのメディアから厳しい批判をあびている。

コリンズ級は優れた潜水艦とはいえず、騒音は劣悪で、信頼性は低く、故障も頻発し、時には就役可能な潜水艦がわずか1隻という時すらあった。 オーストラリア国内では、コリンズ級の開発は「失敗」とする意見もある。

建造所 ASC
建造費 10億オーストラリア・ドル
建造期間 1990年2月 – 2001年11月
就役期間 1996年7月 – 現在
建造数 6隻
排水量 浮上時: 3,051 トン 潜水時: 3,353 トン
長さ 77.8 m
乗員 45人 (士官8人)
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追加2_ コリンズ級潜水艦更新計画 (1) ―― 現用のコリンズ級は改良を行いつつ、28年間の運用を予定しており、7年程度の期間延長が可能と考えられているため、2020年代か2030年代より後継艦が就役することとなる。

アメリカは、日米豪3カ国の武器の相互運用性が強まるとして、そうりゅう型のオーストラリアへの輸出を歓迎している。 アボット政権は、選挙時の公約の一つに、コリンズ級の次の潜水艦を国内で建造すると表明しており、そうりゅう型の完成型を輸入することは、この公約に反することになる。

しかし アボット首相は地元経済への影響という観点から判断することはないと強調しており、あくまで軍事的な観点から判断するとしている。 だが オーストラリアでは、トヨタ、フォード、ホールデンなどの撤退が相次いでおり、製造業が急速に縮小している。 2017年には、オーストラリアで自動車を製造する世界的な自動車メーカーは存在しなくなる。

このような状況で、さらに潜水艦建造という大型案件も外国に奪われる形となれば、アボット政権にはかなりの打撃になる可能性があり、与党内からも潜水艦建造はオーストラリア国内ですべきとの声が出ている。

以上

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