古都探索日記

奈良や京都の散策日記

バッハのカンタータの魅力について

2007-07-22 22:21:35 | 自己紹介
 バッハのカンタータは演技部分の無いミニオペラと言えよう。平均20分間の1曲の中に合唱、合奏、アリア、レシタティーヴォが現れる。これほど多様性に富んだジャンルは他に見当たらないと思う。教会、世俗、合わせて220曲が現存しているが、これらは合計演奏時間ではバッハの全作品の40%以上を占めるし、彼が最も心血を注いだ作品群と言えよう。しかし、バッハコレギウムジャパンが定期演奏会を開くまでは、録音以外、ほとんど日本で聴く機会は無かった。 「カンタータを聴かずしてバッハを語る無かれ」と言いたい。次に挙げる3つの理由で私はその魅力にとりつかれている。

理由、其の1、 旋律の美しさ
バッハと言うと難しい、馴染めない、と言う答えがすぐ返ってくるがこれは大変な誤解である。彼の肖像画と公演、放送される曲目の偏りが原因と思われる。肖像を想いながら、無伴奏ヴァイオリンパルティータの第2番のシャコンヌを聴いたら、馴染み易いとはいえない。しかし、カンタータの中にはチャーミングで優しい旋律が無数に存在する。「これらのすばらしいカンタータ! 私の生涯の夢の一つは、私たちが所有しているそれらの全部の演奏を指揮することだ・・・」とパブロ・カザルスに言わせた程である。当世風にグルメレポーターに言わせれば、「バッハのカンタータは音楽の宝石箱ヤー!」となる。
   
    其の2、 躍動するリズム感
「最高にスウィングする音楽、それは紛れも無くヨハン・セバスティアン・バッハである。私は誇りを持ってこう言う。」とグレン・グールドはある対談で語っている。聴いていると踊りたくなるような衝動に駆られるのは私だけでは無いと思う。
事実、BCJのコンサートでは鈴木雅明さんは指揮しているよりは踊っているように見える。(失礼)。反対にリズムに乗れないバッハは全く頂けない。「スウィングが無ければ意味が無い。」のである。バッハのスウィング感とジャズのそれとの差はイタリア協奏曲(BWV971)のグールドとジャック・ルーシェ・トリオの演奏を聴き較べれば、良く解る。

    其の3、 色彩溢れるポリフォニー
バッハ音楽を特徴付ける1番の要素と考えられる。常に複数の旋律が存在する。特にカンタータではヴォーカルに様々のオブリガート楽器が組み合わされる。それらは人声と同じ様に歌う,
その組み合わせはとても覚えきれるものではない。他では先ずお目にかかれないヴァイオリンチェロ・ピッコロやオーボエ・ダ・カッチャが登場する。普段は通奏低音として演奏を下支えする、チェロ、オルガン、ファゴットまでが、そして最も地味な楽器と思われるヴィオラがソプラノやバスと華々しく渡り合うのである。有名な例としてBWV140「目覚めよという声が聞かれ」の第6曲は愛のデュェットと知られているが、2重唱と言うよりはソプラノ、バス&オーボエのテルツェット(3重唱)と言うほうがふさわしいと思われる。通奏低音が軽快にリズムを刻む(これだけに集中してもかなり聴き応えがある)その上に3声部は互いに追いかけ、絡み合い、重なりそうで重ならない。バッハのカンタータをカラー映画にたとえれば、19世紀以降のドイツ歌曲などはピアノの伴奏だけで白黒映画に過ぎない。
バッハのこの特質はホモフォニックなヘンデルの作品と聴き較べれば良く解る。

 以上2と3の理由からバッハの声楽作品については、私は他のクラシック作曲家のそれよりもジャズヴォーカルにその類似性を見出している。
コメント
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