原発問題

原発事故によるさまざまな問題、ニュース

『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~アメ玉の限界~> ※12回目の紹介

2016-06-30 22:14:59 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。12回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第1章 オフサイトで起きていること

アメ玉の限界

 交渉が進まない背景には、最終処分場の問題もある。

「環境省は元の土地に造成して30年後に返すと説明している。でも、他の場所に移すのは現実的に考えてありえないとみんなも思っている。30年たってやっぱり駄目でした、最終処分場はできませんでしたので再契約をしてくださいというのでは納得がいかない。そうではなく、今きちんとした話をしてもらいたいと地権者は思っている。アメでもなめて我慢してくださいというのが今の状態。子供だましではなく、嘘をついてごまかさないでほしい。すべてをはっきり明確にしないから、キツネにつままれたような状態にあり、そんな煙みたいな話ではとても交渉は進まない」とSさんは言う。

 だが、そう割り切って話を進められない事情もわかる。Sさんにとっても、人生を懸けて建てた、家族との思い出がたくさん詰まった家を失うことは、もちろんつらい。つらいの一言で言い表せるものではない。それ以上に、先祖代々の土地を守ることに強い使命感を持っている住民のことを考えると、切なくなる。

「狭い仮設住宅に仏壇を置いて、毎日欠かさずご先祖様にお祈りをしているおじいちゃん。『早く帰りたい』と言って、毎日拝んでいるおばあちゃん。そんな人の前で、『もう帰れないんだよ』とは、口が裂けても言えない。『帰るのにあと数十年かかるんだよ』とも、とても言えない」。

 先祖代々の土地を自ら手放すことができない人、理屈では仕方がないことと思いながらも、ふるさとを失うことにやりきれなさを抱いている人、理屈ではなく、東京など他の地域の犠牲になることに憤りを感じている人。町民の思いは様々だ。

「双葉町は将来的に”放射性物質のごみ置き場”になってしまう。これも仕方ないと思ってはいる。まるで”第二の沖縄”みたいになってしまうなという感じだ」

 ※「アメ玉の限界」は次回に続く

2016/7/4(月)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


6月29日(水)のつぶやき

2016-06-30 02:33:07 | つぶやき

『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~オリンピックと福島県~> ※11回目の紹介

2016-06-29 22:18:03 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。11回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第1章 オフサイトで起きていること

オリンピックと福島県

(前回からの続き)  

 Sさん自身、中間貯蔵施設の建設はやむを得ないと考えている。「福島県内外の人の生活の安心のことを考えると、中間貯蔵施設はどうしたって必要不可欠。そう考えている町民も多いと思う」という。

「町のみんながダメだとは思っていない。町民も他の市町村に避難してお世話になっているわけだし、福島県内のみんなが困っているから、双葉町に中間貯蔵施設を造るのはしょうがないと思っている。でも、双葉町民と大熊町民が納得しないせいで建設が進まないと思われていて、町民が悪者扱いされているようでとてもつらい」

 実際には、建設が進まないのは地権者が了承しないからではないようだ。大熊、双葉町の両町が中間貯蔵施設の建設を了承した後、環境省は建設予定地の地権者との交渉を即座に始めた。だが、用地買収の交渉はいっこうに進んでいない。

 一部の地権者によると、建設了承の直後、環境省の関係者が1回訪れて挨拶をしたきり、その後1年たっても全く環境省から音沙汰がないという。条件も示さず、金額の提示にも至っていない。地権者の間では「国は何をやっているんだ。土地を買い上げなければ何も始まっていない。地権者の間では「国は何をやっているんだ。土地を買い上げなければ何も始まらないのに、本当に交渉する気があるのだろうか。もう中間貯蔵を造らない気なのだろうか」と首をかしげている状況だ。(略)

 ※次回は「アメ玉の限界」

2016/6/30(木)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


6月28日(火)のつぶやき

2016-06-29 02:33:37 | つぶやき

『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~オリンピックと福島県~> ※10回目の紹介

2016-06-28 22:03:10 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。10回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第1章 オフサイトで起きていること

オリンピックと福島県

(前回からの続き)  

 建設予定地の地権者は公共用地の取得制度に基づいた補償を受けられる。だが、国道6号線の道路1本を隔てた敷地外の土地で暮らしていた住民は、補償を受けられない。目の前に高濃度の放射性廃棄物が保管された施設が造られ、安心して暮らせない、事実上帰れないに等しいという点では建設予定地の地権者と同じなのに、道路1本で扱いは全く異なる。それはあまりにも理不尽だという意見が多く聞かれた。

「私の家は国道6号線から西側に300メートルほど入ったところにある。果たして、私の土地、建物、近い将来に民間不動産で売買ができるでしょうか。私はできないと思っています。隣に中間貯蔵施設、6号線は放射線量の高い廃棄物を1日に数千台運ぶ、そういうメイン道路になる、誰がこんな場所に好きこのんで土地を買ってくれて引っ越してくるのか。そうなると、40年先の原発の廃炉まで私たちの土地、建物の資産価値というのはゼロということになる。どうしたら良いのか。教えてください」

「私も熊川を境にして、その中に入らない組だ。大熊町全世帯の住民、双葉町全世帯の住民、全部の世帯の人たちに賠償してください。施設の外にいる人たちにも全世帯、全住民に賠償してください」

 双葉町のSさんの自宅は、中間貯蔵施設の建設地から約300メートル離れたところにある。2階建ての家に、手入れの行き届いた庭木が並ぶ広い庭。双葉郡の温暖な気候に会う南洋系の植物も育ち、彩りを添えていた。庭木の手入れをするのがいつも楽しみだった。

 原発関係の仕事をしていたSさんは、福島第一原発のメルトダウンを知り、「もううちには戻れないな」と悟った。郡山市の借り上げ住宅で約3年間暮らした後、2014年、郡山市に新居を購入した。閑静な住宅街にある新居だが、庭先には除染で出た放射性物質の汚染度が爪れれたフレコンが埋まっている。Sさんの家だけでなく、周辺のそこここの家の庭先にフレコンがあり、日々の暮らしの中でフレコンから目を背けることはできない。

 そうしたフレコンを見るにつけ、Sさんはプレッシャーを感じている。

「このフレコン、いつ持っていくんだろう、早くどこかへ持っていてほしい。双葉町の人たちが中間貯蔵施設の交渉で了解しないから、フレオンはいまだにここに置かれているんだ。双葉の人はいったい何をやっているんだ。あの人たちのせいだ。みんな陰ではそう言っているんだろうなと思う」

 ※「オリンピックと福島県」は、次回に続く

2016/6/29(水)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


6月27日(月)のつぶやき

2016-06-28 02:44:09 | つぶやき

『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~オリンピックと福島県~> ※9回目の紹介

2016-06-27 22:32:21 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。9回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第1章 オフサイトで起きていること

オリンピックと福島県

(前回からの続き)  最終処分場ではなく、あくまでも中間貯蔵施設であるという位置づけについても、住民は納得しなかった。国は「30年以内に福島県外に最終処分場を造り、中間貯蔵施設に保管した放射性廃棄物はすべて搬出する。中間貯蔵施設の敷地は元の状態に造成し直して地権者に返還する。きちんと法制化もする。中間貯蔵施設には福島県内で出た放射性廃棄物のみを保管し、福島県外のものはけっして持ち込まない」と説明した。だが、それがいかに現実性に乏しい話であるかは、住民も重々承知していた。

「双葉町に中間貯蔵施設ができたならば、これは最終処分になっちゃうんです。最終処分場に。そんな掘り起こして県外に持ってってなんてできないと思いますよ」

「30年後に福島県外に持っていきますなんて、どこが受け入れるんですか。結局は持っていくところがなくて、ここに置きましょうってなるに決まってるんですよ。そのとき、30年後、必ず法律の改正をしないで施行しますなんて保障はどこにもありません。そうでしょう。誰が保障するんですか。あなた方の一人一人の誰かが保障するんですか。答えてみろ。指定廃棄物だって、持ってくとこなければ、結局ここにくるんじゃないですか。違うんですか。福島県内のものしか受け入れませんて、今は言ってますよ、今はね、今は。しかし、時間は流れます。人も変わります。そしたら、考え方も変わるんです。30年もたったら。誰が保障するんですか。国は責任持ってやりますと言うが、その国が一番信用できないんですよ」

 もう一つ大きく懸念されたのが、中間貯蔵施設の建設地から外れた住民の扱いだ。

 「オリンピックと福島県」は、次回に続く

2016/6/28(火)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


6月26日(日)のつぶやき

2016-06-27 02:31:37 | つぶやき

6月25日(土)のつぶやき

2016-06-26 02:31:25 | つぶやき

6月24日(金)のつぶやき

2016-06-25 02:40:25 | つぶやき

6月23日(木)のつぶやき

2016-06-24 02:31:03 | つぶやき

『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~オリンピックと福島県~> ※8回目の紹介

2016-06-23 22:11:41 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。8回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第1章 オフサイトで起きていること

オリンピックと福島県

(前回からの続き) 汚染水問題と並行して大きな課題となっていたのが、中間貯蔵施設問題だ。建設候補地の大熊、双葉、樽葉町の3町ではボーリング調査が行われていた。建設受け入れの是非をめぐって、住民は先行きの見えない状況に立たされていた。中間貯蔵施設ではなく、最終処分場になってしまうのではないか。そうなると、もう一生ふるさとにはもどれない。東京に電気を送り続け、原発事故で避難生活を余儀なくされ、今度はふるさとをごみ捨て場として提供する。東京のためにまた犠牲になる。なぜ福島ばかりが犠牲にならなければならないのか。2014年5~6月、国が主催した中間貯蔵施設の住民説明会では、そんな住民のやり切れない思いが爆発した。

「なぜ恩恵を受けてきた東京が、何も知らないでオリンピックに浮かれて、私たちがその思いまで受け止めなければならないのか。東京に造ればいいでしょう。東京湾とか埋め立てて、そういうことがなぜできないんですか。すべてを福島で受け入れるなんて無理ですよ、そんなの」

「最終処分場はどこに造るのか。最終処分場を造る場所を選定して、それから中間貯蔵施設を造らせてくださいというのが当たり前じゃないのか。我々のふるさとをどうしてくれるのか。いいですか。新潟や福島で造った電気は、埼玉や東京や神奈川でみんな使っているんでしょう、そこに処分場を造ったらどうなんですか。安全安心だって言った原発を、東京に造ったらどうなんですか。安全だって言ったんだ。絶対に」

「オリンピックと福島県」は、次回に続く

2016/6/27(月)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


6月22日(水)のつぶやき

2016-06-23 02:30:49 | つぶやき

『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~オリンピックと福島県~> ※7回目の紹介

2016-06-22 22:23:51 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。7回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第1章 オフサイトで起きていること

オリンピックと福島県

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定した頃、福島県では何が起こっていたか。招致活動を振り返るVTRが連日テレビで流され、半世紀ぶりのオリンピック開催の決定の喜びに沸く東京をよそに、福島県では東京電力福島第一原発の汚染水問題が深刻化していた。

 2013年4月、貯水槽にためられていた汚染水が土壌に染み出していることがわかった。これを機に、東京電力は貯水槽ではなく、タンクに汚染水を貯蔵する方針に切り替えた。だが、短期間に突貫工事で大量製造されたタンクの密閉性は十分ではなく、タンクの継ぎ目から汚染水が漏えいするアクシデントが相次いだ。汚染水そのものが、原発構内の排水路を通じて直接海洋流出したこともあった。度重なる汚染水問題の発生に、地元の不安はピークに達していた。

 地元にとって汚染水問題は、単なる環境問題ではない。『水の管理さえ満足にできないのに、溶け落ちた燃料デブリが眠る原子炉を安全な状態に持っていくことなどできるのか」。「やっぱり福島第一原発には近づけない。きっとまた何かが起こる」。やがて自宅近くの放射線量が下がったら、再び自宅に戻って暮らすことを考えていた住民にとって、汚染水問題は「やっぱりもう帰ることはできない」というあきらめに心を傾かせていく大きなきっかけになった。

 そんな頃、東日本大震災からの復興を開催意義の一つとしてアピールしたオリンピック招致活動は、福島県民にどのように映ったか。もちろん、快く思わなかった人も多い。特に安部晋三首相がオリンピック招致のプレゼンテーションで行った「福島第一原発はアンダーコントロール」発言には批判が集中した。地元の新聞の投稿欄には、オリンピックの開催に批判的な意見がたびたび載った。「福島県は東京オリンピックの踏み台にされた」そんな風に感じている人もいた。

「オリンピックと福島県」は、次回に続く

2016/6/23(木)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


6月21日(火)のつぶやき

2016-06-22 02:31:45 | つぶやき