原発問題

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『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<アメリカで行われた乳がん死亡率調査の驚き> ※24回目の紹介

2015-11-24 22:00:00 | 【美味しんぼ】

 

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。24回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 アメリカで行われた乳がん死亡率調査の驚き

 さらにもう1冊、大事な本があります。

 これもやはり、肥田舜太郎、竹野内真理、それに齋藤紀、戸田清によって翻訳された、ジェイ・マーティン・グールド著の『低線量内部被曝の脅威』(原題『The Enemy Within』)です。原題を日本語訳すれば「わが内なる敵」とでもなるでしょうか。

 この本も低線量被ばくの脅威について説明していますが、それより、私にとって一番の驚きは、アメリカの60カ所の原子炉施設ごとに、その施設から半径50マイル(80キロメートル)と100マイル(160キロメートル)以内の1300郡の調査を行い、全米3000あまりの郡全体と比較したところ、原子炉施設に近い1300郡の女性の乳ガンによる死亡率は、原子炉施設のない郡より高いのを統計的に示したことです。

 しかも、この統計は、1950年から1984年という長期にわたって行われた調査を元にしたものなのです。

 アメリカは原子炉はもとより、国内で核爆発実験を何度も行なってきたため、放射能に対する意識が高いのだと思いますが、日本でも、既に国中に54基も原発を持っているのです。

 所在地も、北海道から九州まで、17カ所にあります。

 この日本で、ジェイ・マーティン・グールドたちのような、長期にわたる詳細な統計がとられているのでしょうか。

 取られていたとして、私たち市民が、自由にその結果を見ることができるのでしょうか。

 私は、このアメリカでの調査を見ても、原子炉の近くに住むべきではないと思うのです。

 ここで紹介した2冊の本は、低線量被曝について大事な情報を与えてくれます。

 (紹介はここで終わり。以下、『低線量内部被曝の脅威』著書について)

低線量内部被曝の脅威―原子炉周辺の健康破壊と疫学的立証の記録

低線量内部被曝の脅威―原子炉周辺の健康破壊と疫学的立証の記録 のカスタマーレビューより

原発からの放射性物質の影響を疫学的に分析した労作
本書の原題“The Enemy Within”が本書の内容を的確に表しているように、本書は米国の原子力発電所から放出される放射性物質の影響を疫学的に分析し、低線量内部被爆が確実にがん死亡者数を増大させていることを証明したものである。米国では、1970年に最初の商業用原発が稼動し、その後急速にその数が増えたが、1979年のスリーマイルアイランド原発事故を経験した後は、稼動数が漸減した。本書では、原発の影響がない1950~54年を基準に、原発稼動後10年を経た80~84年、85~89年を対比している。また、原発からの距離を50マイル(80km)以内と100マイル(160km)以内の郡(カウンティ)とそれ以外の郡(郡の総数は3053)に分け、乳がんのほか、低出生体重児についても分析するという、気の遠くなるような疫学調査を行い、図表を駆使して結果をまとめたものである。

本書によれば、原発から100マイル以内の郡における乳がん死亡数は、100マイル以上離れた郡の乳がん死亡率よりも確実に(統計学的に有意に)大きくなる。その死亡率の増加分は10万人当たり約5人であり、原発の影響が少ないと考えられる100マイル以遠の郡の死亡率22人を約20%増大させることになる(本書中の「原子炉から100マイル(160km)以内の原子炉数と乳がん死亡率の関係」から概算)。


低線量内部ヒバクのリスクを疫学的に証明した科学書
原発や再処理工場は日常の運転でも乳がんなど放射線の被害を人類にもたらすことが明らかにされている。核の平和利用が不可能であることがわかる。

カスタマーレビューからここまで)

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』の紹介は今回で終わります。

引き続き『原発ゼロ』著者:小出裕章 の紹介を始めます。

1回目の紹介(「第3章 果てしなき廃炉への道」から)は、11/25(水)22:00に投稿予定です。


美味しんぼ「鼻血問題」に答える

 


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<「訳のわからない疲労感」も説明がつく> ※23回目の紹介

2015-11-19 22:15:05 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。23回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 「訳のわからない疲労感」も説明がつく

 さらに、この本の中で興味深いのは、訳者竹野内真理氏による「訳者あとがき」です。

 この「訳者あとがき」はただのあとがきではなく、資料集ではないかと私のような素人には思われます。

 一番衝撃的だったのは、科学技術庁の付属機関である『独立行政法人・放射線医学総合研究所」が2007年に、

 『虎の巻 低線量放射線と健康影響 ー 先生、放射線を浴びても大丈夫?と聞かれたら』

 という本を出していたのを紹介してくれたことです。

 私も、この本を書くのに、放射線医学総合研究所(略して放医研)の発表した論文をかなり参考にしています。しかし、この「虎の巻」などというものが存在していると知って呆れました。

 私は「放医研」が政府寄りと知っています。だからこそ、「放医研」のデータを使うことが私の偏りのなさを語るものだと思っていたのですが、とんでもないことでした。

 「虎の巻」とはねえ。

 いかに、低線量放射線は無害なものであるか、それを人々に説得するための「虎の巻」なのです。

 参りました。いわゆる、「原子力村」の人たちは抜かりがありません。

 その「訳者のあとがき」の中で知ったのは、「放医研」がペトカウ効果を十分意識して、それに対する反論を考えているということです。

 「放医研」もなんとか対策を講じなければならないほど、ペトカウ効果は原発推進者にとっては脅威なのです。

 この「訳者あとがき」で紹介されている論文の中で、私が大いにひかれたのは、ニュージーランドのレス・シンプソン博士の研究です。

 それは、

 「低線量被曝によって赤血球が変形し、筋肉と脳からの適切な酸素と栄養を奪うことで、慢性疲労症候群、いわゆる『ぶらぶら病』が生じる」

 というものです。

 おお、これこそ、私たちが苦しんでいる、あの「訳のわからない疲労感」を説明するものではありませんか。

 ロシアのブルラコーワ博士によれば、チェルノブイリの事故処理作業者の間にこの「ぶらぶら病」が発生し、しかも、この人たちの間には免疫系の低下が認められるということです。

 この「ペトカウ効果」は日本でももっと真剣に考えなければならない問題でしょう。

 少なくとも、鼻血問題と激しい疲労感について説明することができるのです。

(中略)

 アブラム・ペトカウ博士は1930年生まれ、1962年にカナダ原子力公社の研究員となり、ペトカウ効果を発見しました。

 しかしながら被曝労働者の白血球に関する研究をしているさなかの1989年、政府からの研究費が突然打ち切られていまい、ペトカウの研究所は閉鎖され、それ以後放射線研究者としての道が絶たれてしまいました。

 その後、ペトカウは自らの診療所を開業し、2010年11月末に引退するまで医師として働きました。2011年1月18日に急逝しています。

(次回は「アメリカで行われた乳がん死亡率調査の驚き」を紹介します)


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/24(火)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<放射線が作り出すフリー・ラジカル> ※22回目の紹介

2015-11-18 22:16:46 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。22回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

  放射線が作り出すフリー・ラジカル

 なぜ低線量の方が高線量よりリスクが大きいのでしょう。

 それは、ペトカウによれば、次のようになります。

 「酸素が溶け込んだ細胞液で、イオン化(電離)放射線は酸素分子に衝突して、活性酸素、フリー・ラジカルというものを作り出す」

 これを、わかりやすく説明してみましょう。

 原子とは原子核の周りに電子がまわっている形です。

 私たちの体を作る筋肉でも骨でも、たった一つの原子で出来ているものはありません。すべて、二つ以上の様々な原子が結合して作る分子によって作られています。

 細胞の中に必ず含まれている水の分子の一つ一つは、水素原子二つ、酸素原子一つで出来ています。

 分子記号でいえばH二つとO一つです(H2O)。

 放射線はこの水素と酸素の結合で必要な電子を吹き飛ばし、あるいは自分に取り込んでしまい、HとOだけの非常に不安定な物質を作ってしまいます(・OH)。

 これが、フリーラジカルの典型、活性酸素(ヒドロキシ・ラジカル)と呼ばれるものです。

 なぜラジカルと呼ばれるかというと、このラジカルはもとの安定的な状態に戻りたいのです。
 
 安定した状態に戻りたいから、周囲の分子を攻撃して、自分が安定化するために必要な電子を奪いとるのです。取られた方は自分が壊れてしまいます。

 壊される方から見れば、壊す相手はラジカルで、放射線ではないのです。

 (ラジカルは、英語ではradicalと表記されます。元々はラテン語の「根」を意味するradixからきた言葉で、国の体制の根っこまでひっくり返そうとする人たちを「ラジカル」と呼んだことが、ラジカルは過激、という意味に捉えられるようになったようです。)

 ペトカウによれば、

 「フリー・ラジカルが細胞膜に引き寄せられて、細胞膜を次々に酸化する連鎖反応を起こし、細胞膜を弱らせ破壊する」

 「このように、細胞膜の場合はDNAと違って、受ける被害は放射線の直接の結果ではなく、放射線の作り出す活性酸素、フリーラジカルによって間接的に起こる」

 というものです。

 ペトカウ効果によれば低線量の被曝は極めて危険である、ということになります。


(次回は「訳のわからない疲労感」も説明がつく」を紹介します)


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/19(木)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<高線量より怖い「低線量被曝」とは> ※21回目の紹介

2015-11-17 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。21回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 高線量より怖い「低線量被曝」とは

 肥田舜太郎・竹野内真理の訳になる、ラルフ・グロイブとアーネスト・スターングラス著の『人間と環境への低レベル放射能の脅威』(原題は『The Petkau Effect』)という本は、低線量被曝が地球環境と人体に被害を与えることを、様々な例を挙げて示しています。

 以下、その本の中でも、いかにICRPが原子力産業の都合のいいように基準値を作り上げているか、その実態が描かれています。

 日本のマスコミは、ICRPの実態を国民に知らせようとしません。

 前節で取り上げたNHKの番組はわれわれ日本人にICRPの実態を知らせる優れたものでした。NHKは以前にも「チェルノブイリの子供たち」のような良い番組を作りましたが、安倍内閣になって任命されたNHKの会長や一部の経営委員は、原発推進を方針とする政府に従順な姿勢を見せています。

 これから先、NHKはこれまでのような番組を作ることができるのでしょうか。

 この本の中で衝撃的なのは、原題になってる「Petkau Effect(ペトカウ効果)」でしょう。

 ペトカウ効果とは、カナダのマニトバ州にあるカナダ原子力公社ホワイトシェル研究所の医学・生物物理学生主任だったアブラム・ペトカウが1972年に発見したものです。

 ペトカウが生きている細胞に似ている人口膜に、水中で放射線を当てたところ、放射線照射を長時間続けると、X線フィルムで写真を撮るような線量よりはるかに低い線量の吸収で、細胞膜が破れることを発見したのです。

 ペトカウは最初自分でも疑って何度も実験を繰り返しましたが、常に同じ結果が得られました。

 細胞膜を破壊するためにはX線なら毎分260ミリシーベルト、全量が35シーベルトという高線量の被曝が必要だったのが、水に溶かした放射線食塩(塩化ナトリウム22)から毎分0.01ミリシーベルトという低線量を長時間照射すると、全量でわずか7ミリシーベルトの照射で細胞膜は破壊されたのです。

 しかも、照射時間を長引かせるほど、細胞膜を破壊するのに必要な線量は低くなりました。

 結果として、

 「少量で慢性的な放射線被曝は、高線量の放射線を短時間被曝するよりその影響がより大きい

 という結論に達したのです。

 これまで、細胞の中のDNAが放射線の衝突によって直接損傷を受けることは長い間知られてきました。しかし、細胞膜の場合はペトカウが発見したような、間接的に損傷を与える仕組みが作用するのです。


(次回は「放射線が作り出すフリー・ラジカル」(なぜ低線量の方が高線量よりリスクが大きいのか)を紹介します)


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/18(水)22:00に投稿予定です。

 

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『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<福島の人たちはなぜ怒らないのか> ※20回目の紹介

2015-11-16 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。20回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 福島の人たちはなぜ怒らないのか

 X線撮影を行う場所、業務として放射性物質を扱わなければならない研究室などは、「放射線管理区域」とされていて、そこの基準値は、年間5.2ミリシーベルトです。

 法律では、5.2ミリシーベルトの放射線を放射線管理区域の外に出してはいけない、と決められています。

 さらに、放射線管理区域に指定されたところでは、18歳以下の人は働くことはできないとも決められています。しかも、その放射線管理区域では飲食が禁止されているのです。

 ところが、年間20ミリシーベルト以下だから帰還しろと勧められている田村市、川村氏の住民は、子供も妊婦もそこで暮らし、普通に飲み食いをしろというのです。

 こんな馬鹿な話があるでしょうか。

 ①一般の基準値は年間1ミリシーベルト。

 ②放射線管理区域の基準値は年間5.2ミリシーベルト。

 ここには18歳以下の人間は立入り禁止で、飲食も禁止。

 ③そして、田村市、川内村の基準値は年間20ミリシーベルト。

 子供も、幼児も、妊婦も住むことができ、飲食も自由。

 日本という一つの国に3つの基準があります。

 ②の放射線管理区域は世界中どこにでもあります。

 放射線を使用しなければならない職業の人たちだけは、犠牲になってもらうといったら語弊がありますが、研究と職業のために我慢してもらうためのぎりぎりの数字として、認めるしかない。仕方がない。

 しかし、①と③を一つの国で認めるとは、どういうことなのでしょう。

 福島の人たちだけ、他の県の人たちより放射線に対する耐性が高いとでもいうのでしょうか。

 途方もないことです。

 これは、福島の人たちに対するとんでもない差別でしょう。

 福島第一原発の事故で苦しんだ福島の人たちを完全に救済するのが東電と国の義務なのに、これからさらに長い間苦しめ、というのですか。

 福島の人たちはなぜ怒らないのか、私には理解が行きません。

(次回は「高線量より怖い「低線量被曝」とは」を紹介します)


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/17(火)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<大雑把すぎるICRPの計算方法> ※19回目の紹介

2015-11-12 22:08:10 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。19回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 大雑把すぎるICRPの計算方法

 ICRPは内部被曝についても基準を決めています。

 しかしその決め方は、恐ろしく面倒くさいものです。

 臓器ごとに等価線量というものを計算し、さらに組織荷重係数というものを使った計算をし、そして「実効線量」というものを得る、という仕組みです。

 こんなことの説明文はネットでいくらでも転がっているので、興味のある方は、いろいろ調べて下さい。

 ICRPの結論である実行線量を簡単に丸めていってしまうと、

 ①体内に放射線源がある場合、

 ②体内の各臓器が被曝するだろう。

 ③臓器によって放射線から受ける影響の度合いが違うだろう。

 ④その影響を計算に入れて、臓器ごとの被曝量を計算する。

 ⑤その、それぞれの臓器の被曝量を足しあわせて、全身の内部被曝による被曝量とする。

 ⑥この体全体の内部被曝量を「実効線量」という。

 これがICRPの、内部被曝についての考えです。

 だから、体内に1キログラム当たり100ベクレルの線量のものを1日2キログラム取り込んでも、このように分散して計算すると、年間1ミリシーベルトの体内被曝量になる、というわけです。

 私は、こんな大雑把な考えを真面目に主張できる人がいることが信じられません。

 先ほどからいっているように、現在福島の人たちに被曝させているのは、直径が2~3マイクロメートルの放射性微粒子です。それが、体内の臓器に付着した、あるいは入り込んだときの被曝を、私たちは考えているのです。

 アルファー線は体内で40ミクロン(マイクロメートル)ほど、ベーター線は2~4ミリメートルほどしか飛びません。

 わざと小さい臓器を選んでみます。例えば甲状腺は、上下3センチから5センチ、卵巣は1つ当たり直径が平均3センチほどです。

 ベーター線アルファー線は、甲状腺や卵巣のような小さい臓器すらまんべんなく照射するなどということはできません。

 しかし、一つの細胞だけでなく、次の細胞まで達する飛距離はあります。

 ベーター線アルファー線は自らの直近の細胞に自分のもつすべてのエネルギーを放出します。放射性微粒子周辺の細胞は、ベーター線アルファー線によって破壊されたり、あるいは染色体の異常をおこすでしょう。

 キログラム当たり小さいと判断される線量でも、実際に細胞にあたるところでは大きな被害を起こし、それが、臓器に影響を与えるのです。

 それが本当の内部被曝であるのに、どうしてわずかな数の微粒子の出す放射線の影響を臓器全体に広げ、さらに体全体に広げるのでしょう。


 水道の消毒には次亜塩素酸ナトリウムという塩素の化合物が使われています。

 この次亜塩素酸ナトリウムを耳かき半分の量でも直接舌に乗せたら、大変な害を及ぼします。

 しかし、それを1リットルの水に溶いたら、水を消毒し、飲んでも何の被害も及ぼしません。

 ICRPの内部被曝の計算は、今私が例に挙げた次亜塩素酸ナトリウムの場合と同じです。

 耳かき半分の次亜塩素酸ナトリウムは舌に大きな害を与える。

 しかし、それを1リットルの水で割ってしまったら、その外がわからない。

 放射性微粒子が臓器にくっついたか入ったかした場合、その放射性微粒子の直近の細胞が被害を受けるのです。

 その線量を体全体で割って計算するなど、次亜塩素酸が舌に与える被害を計算するのに、体全体で次亜塩素酸の強さを割ってしまうと同じです。

 私たちが心配している内部被曝は、次亜塩素酸を乗せられた舌の心配をしているのと同じで、その次亜塩素酸を水で割ってそれを飲んだ時の、体全体の心配をしているわけではありません。

 そんな心配は意味がないではありませんか。


 結論を述べます。

 福島の内部被曝の構造は、次の通りです。

 ①放射性微粒子を、呼吸器、食べ物、水などから体内に取り込む。

 ②放射性微粒子が、様々な経路をたどって、体内の臓器に入り込む。あるいは付着する。

 ③放射性微粒子は、排泄されることもあるが、ストロンチウムのように骨に入り込んでしまって外に出ないものもある。

 ④放射性微粒子は体内にある限り、放射線を出し続ける。

 ⑤ガンマー線は体の外に出て行ってしまう。

 ⑥ベーター線アルファー線は遠くに飛ぶことはなく、すぐ近くの細胞にその持つエネルギーをすべて放出する。

 ⑦臓器全体から見れば低い線量でも、放射性微粒子の周囲の細胞は大きな被害を受ける。

 ⑧結果的に臓器は損傷を受ける。

 ⑨細胞のDNZAも損傷を受ける。

 ⑩ガン化だけでなく、臓器の損壊はこうして始まる。

(次回は「福島の人たちはなぜ怒らないのか」を紹介します)


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/16(月)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<ICRPを信じてはいけない> ※18回目の紹介

2015-11-11 22:09:37 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。18回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

  ICRPを信じてはいけない

 前に述べたように、呼吸器から取り込んでも、食べ物と一緒に体内に取り込んでも、放射性微粒子は体内のどこか一ヵ所に留まって、放射線を放出し続けます。

 中でも、ベーター線とアルファー線は遠くまで飛ばない代わりに、付着した細胞にそのエネルギー全部を放出します。

 原子の種類によって、出す放射線は違います。セシウム134,137はガンマー線とベーター線を放出します。

 プルトニウム239はアルファー線を放出します。

 ストロンチウムはベーター線を放出します。

 福島第一原発から放出された放射性微粒子は、セシウム134、137、プルトニウム、さらにストロンチウムも含まれています。

 これらのものを呼吸によって、あるいは食べ物によって口から体内に取り入れたらどうなるか。

 その体内被曝について、ICRP(国際放射線防護委員会)は指針を作っており、日本の政府はそのICRPの指針に沿って、政府の方針を決めているといっています。

 さて、このICRPとは何でしょうか。私たち日本人は、ICRPを権威のある国際的な中立の機関である、と思っていないでしょうか。

 事実はそうではありません。ICRPとは文科省によれば、

 「専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う国際組織」

 となっています。しかし、ICRPは1928年にその前身が設立され、現在はイギリスのNPOとして公認の慈善団体です。その資金は、各国の行政部門・研究所から66パーセント、政府間組織から21パーセント、企業関連から8パーセント、専門職団体から4パーセント、となっています。

 また、常設の5つの委員会がありますが、そのメンバーはボランティアで参加する世界の専門家たちです。

 その資金の出所からし、世界の原発推進勢力の影響が強いことが伺えます。つまりICRPは民間の団体であり、国連の機関でも何でもありません。このICRPの発表する数値を絶対的なものとしてありがたがって使うのは、日本政府のような原発推進勢力だけです。

 NHKが2011年12月28日に放送した番組「追跡!真相ファイル<低線量被ばく揺らぐ国際基準>」という番組の中で、思いもよらぬ真相が暴露されています。

 低線量被曝については次で述べることにして、ICRPを構成している人間がどんな人たちなのか知っておくことは意味があるでしょう。

 低線量被曝の基準を緩和した当時のICRPの委員17人のうち13人が、各国の原発・核兵器関係者であり、原子力推進派でした。

 しかも、ICRPは1950年にできた当初持っていた、内部被曝を扱う委員会の審議を中止してしまいました。その理由は、内部被曝委員会から報告書が出てきたら、原子力政策を進められなくなるからです。

 廃止された内部被曝委員会の初代委員長、カール・モーガンは2003年に発行されたその著書『原子力開発の光と影』(昭和堂)の中で、

 「ICRPは原子力産業界の支配から自由でない。(中略)この組織がかつて持っていた崇高な立場を失いつつある」といっています。

 NHKの取材では、さらに恐ろしいことをかつての委員たちがいっています。

 「どうせ低線量のリスクはよくわからないので、基準値を半分にした

 「原発・核施設への配慮があった。労働者への基準を甘くしてほしいという要望があった

 などと答えています。

 このようなICRPのいうことをどうして信じることができるでしょうか。

(次回は「大雑把すぎるICRPの計算方法」を紹介します)


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/12(木)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<鼻血問題を無視する態度> ※17回目の紹介

2015-11-10 22:11:24 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。17回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

  鼻血問題を無視するのは「科学的」な態度か

 放射性物質を初めて発見したマリー・キュリーも、自分自身の白血病をラジウムにより放射線のせいだとは考えなかったそうです。

 マリー・キュリーも、そもそも放射線の存在に気がついたアンリ・ベクレルも、放射線が人体に被害を与えるとは思ってもいなかったのです。アンリ・ベクレルに至っては、ラジウムを小さな試験菅のような菅に入れて、いつも持ち歩いて人に自慢して見せていたのです。これが、目に見えない、体に直接感じない放射能の恐ろしさではないでしょうか。福島の皆さんにはよくよく考えていただきたいことです。

 医学が、放射線の人体に与える被害に対する知見を得たのは、それから後のことです。

 第3章にも述べましたが、科学というものは、最初に何かの事象を認識することから始まります。

 今までの科学知識では説明できない事象に出会う。

 一体それは何なのだろうと、研究を始めることで、科学は進歩するのです。

 それまで見たことがない事象でも、今までの科学知識の枠内で説明できると考える。それに反する新しいものの見方を、事実をもって提出しても、今までの科学の権威にあぐらをかいて否定する。

 もしすべての科学者が、そのような態度を維持していたら、ガリレオは異端者のままだったでしょうし、そもそも原子爆弾も、原発も、この世に現れなかったでしょう。

 一番大事なことは、今まで経験したことのない事象が起こったら、まずその事象が特殊な条件のもとでしか起こらない異常現象なのか、同じ条件の下では誰にでも起こる普遍的な現象であるか、確かめることです。

 特殊な条件で特殊な人にしか起こらない事象であれば、いままでの科学で説明できる可能性は高いでしょう。

 しかし、ある条件下では、かなりのパーセントの人に、今までの科学では説明のできない、同じ事象が起こるとなれば、それは特殊な事象ではない。単に、これまでの科学ではつかみ切れていなかった何かがある、と考えるのが本当の科学者です。

 私が体験した鼻血。ひどい疲労感。これは私たちだけに起こった特殊な事象ではありません。私以外に多くの人たちが体験しています。

 私が鼻血を出したと書いたら、多くのマスコミ、政府の大臣たち、そして首相まで「風評被害だ」といいました。

 政治家はどうせ政治屋です。自分に利があると思えば何でもいうのが政治家です。

 しかし、マスコミの中には、科学的に物事を考えようという人がいてもおかしくないと思うのに、そうではありませんでした。

 科学的に無知なのか、政治的に既に屈服した人たちなのか。

 そのどちらか、あるいは両方でしょう。

 これまでの科学が認めない事象は受けつけないという科学者がいたら、それは科学者ではなく、権威の上にあぐらをかく怠惰な失格科学者か、政治の要請に従ってそれまでのカビの生えた科学的知識を振りかざして人々を圧迫する、雇われ科学職人です。

 どちらも、本当の科学者ではありません。

 本当の科学者は、今までの科学的知識では理解できない事象に真摯に対処する勇気のある、真理の開拓者です。

 今度の福島第一原発の事故では日本の科学者、医学者たちが、初めて身近で体験する事象が次々に起こっています。今まで自分たちが学んできた科学的、医学的知識では追いつかないものが多いはずです。

 しかし、私の見るところ、その新しい事象に追いつくための研究をしている研究者の数はまだ少ないように思います。

(次回は「ICRPを信じてはいけない」を紹介します)


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/11(水)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<ベーター線の測定を国がしないのはなぜか> ※16回目の紹介

2015-11-09 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。16回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 ベーター線の測定に国が乗り出さないのはなぜか

 私が2011年から2013年まで、福島を回って、多くの福島の放射線汚染についての問題を伺ってきましたが、その間に内部被曝の問題を持ちだした人は、たった一人だけでした。

 福島の人たちは、内部被曝について考えたこともないのではないか、あるいは、考えないようにしているのか、そのどちらかだと思います。

 体内に放射性物質を取り込む経路としては、食べ物によって消化器経由で取り込むのと、呼吸によって鼻腔、喉、気管、肺経由で取り込むのと、この2つが主なものでしょう。

 手や体が放射性物質に接触することで体内に取り込むこともありますが、ここでは、簡単にするために、呼吸によるものと飲食によるものの2つの場合に絞ります。

 まず呼吸による放射性物質の体内取り込みを考えます。

 第3章にも書きましたが、福島を汚染しているのは、福島第一原発が爆発したときに放出された放射性微粒子です。

 この放射性微粒子は様々な場所にあります。

 地面に落下している物の場合、その地面を掘り起こしたり、歩いたり、走ったりすることで土埃をかきたてれば、土埃と一緒に舞い上がり、それを呼吸するときに吸い込みます。

 空中を浮遊している物もあります。

 そういう放射性微粒子を吸い込んだ場合、鼻腔、喉、気管、肺の粘膜に放射性微粒子は付着します。

 放射性微粒子は直径が2~3マイクロメートルほどの極めて小さいものです。

   我々が通常線量計で測定しているのはガンマー線です。

 セシウムはベーター線も出しますが、ベータ線は原子から放出されるときに与えられたエネルギーによって、飛距離が違います。(この辺の核物理学は面倒なので省略します)。セシウム137のベーター線が、最大のエネルギーを与えられたときの飛距離が、大体4メートル。平均的にはとてもその最大値に及ばず、1メートルから1.5メートル以内に留まるし、電磁波であるガンマー線と違って電子の流れなので、測定しづらいのでしょうか、普及型の線量計でベーター線を測定できるものは滅多にありません。

 そのせいであまりベーター線については真剣に考えられていませんが、体内に入った場合非常に厄介であることは、第3章に書いたとおりです。

 セシウムはガンマー線を大量に放出しますが、ベーター線も放出します。

 第3章の、私が鼻血を出した理由について、思い出して下さい。

 私は国がベーター線について、何一ついわないのは大きな問題だと思います。

 国が一般的に使うように推奨している線量計は、ガンマー線しか測れません。ベーター線を考慮に入れたくないのです。

 私はベーター線について国が口を閉ざしているのは、ベーター線の線量まで発表したら、原発推進の国の方針を保てなくなるからだと思います。

 邪推かもしれませんが、国は現在の福島の状態を安全だと主張したいばかりに、ベーター線を測らないように指導しているのではないでしょうか。

 そもそも、国の推奨しているシンチレーション方式の線量計ではガンマー線しか測れません。

 ベーター線の内部被曝の影響の強さを考えると、ベーター線もきちんと測定するべきです。

(次回は「鼻血問題を無視するのは「科学的」な態度か」を紹介します)


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/10(火)22:00に投稿予定です。

 

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『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<「紙一枚で止まる」アルファー線の怖さ> ※15回目の紹介

2015-11-06 22:24:37 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。15回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

  「紙一枚で止まる」アルファー線の怖さ

 福島第一原発の爆発でその放出が文科省によって確認されたプルトニウムは、アルファー線を放出します。

 アルファー線はヘリウムの原子核の流れで、空気中では数センチメートル、体内では40マイクロメートルしか飛びません。

 しかも、空気中では紙一枚で止めてしまえるほど、透過力は弱いのです。

 ただし、透過力と放射能の人体に与える影響とは違いがあります。

 もちろん、X線はガンマー線のような電磁波は人体の細胞を損ないます。ガンマー線による人体の被害は大きなものです。

 しかし、ガンマー線のような電磁波は、人体に被害を与えたあと、突き抜けて行ってしまうのです。

 ということは自分の持っているエネルギーのすべてを人体に残すとうことはしません。

 よく、アルファー線、ベーター線、ガンマー線について説明する画像をネットで見ますが、それを見ると、アルファー線は「紙一枚で止まる」となっています。

 それを見た人たちは、紙一枚で止まるならアルファー線はなんでもないんだ、と思ってしまうようです。

 それはとんでもない思い違いです。

 誤解を恐れずにいいますが、アルファー線は紙一枚に出会っただけで、その紙に自分のすべてのエネルギーを使い果たすから、それから先に飛んでいけないだけなのです。

 アルファー線、ベーター線、ガンマー線、それぞれにその成り立ちが違い、性質が違います。

 放射能、と一口にいっていますが、実状は大きく違うのです。

(次回は「ベータ線の測定に国が乗り出さないのはなぜか」を紹介します)


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/9(月)22:00に投稿予定です。

 

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『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<一過性で済まないのが「内部被曝」> ※14回目の紹介

2015-11-05 22:02:12 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。14回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 一過性で済まないのが「内部被曝」

 普通我々は、放射線というと、「今ここは、何マイクロシーベルト」などと、その場所の線量を気にします。

 自分の身体の外部からの放射線被害を考えるときに、線量計の数字は、その被害の程度を予測するのにわかりやすいものです。

 一方、体内からの放射線被曝は気にはなるのですが、測定しづらいのでなかなか明確には捉えることが難しいのです。

 では、体内からの放射線被曝、内部被曝とは何なのか。

 それは、体の中に放射性物質を取り込んでしまったために、その放射性物質の放射する放射線を自分自身の体の中で受けることです。

 体外からの放射線被害も問題ですが、体内に取り込んでしまった放射性物質からの放射線被害はもっと深刻なものがあります。

 体外から受ける放射線被害は一過性のものです。

 強烈な放射線に晒されればもちろん被害を受けます。

 しかし、体外の放射線源がなくなる、あるいは放射線源から遠ざかれば、体に残る被害は自分が放射線源に近い間にいた時に受けたものしか残りません(深刻な被害か、軽いものかは別として)。

 しかし、体内に放射性物質を取り込んでしまって、しかもそれがなかなか体外に出ない場合、放射線被害は、その放射性物質が体内にある限り続きます。一過性のものではないのです。

 なぜなら、放射線源が自分の体の中にあるからです。

 体内に取り込んでしまった放射線源から、長い間放射線被害を受け続けるのです。

 それが、体内被曝の恐ろしさだし、被害の大きさです。

 そして、何より恐ろしいのは、人々はその恐ろしさを知らないばかりに、いや、これははっきりいいますが、国が敢えて教えようとしないばかりに、体内被曝が自分たちを侵し続けていることに全然関心を払っていないのです。

 私が福島を回ってみて、痛切に感じたことがそれです。

 「作物の放射線が国の基準値の1キログラム当たり100ベクレルまで下がってよかったね。これで安心だ」

 それが、私がお会いした福島のほとんどの人たちの態度でした

 米でも野菜でも、1キログラム当たり100ベクレルという国の基準を満たしたから、これで安心だ、と99%の方がおっしゃっていました。

 その1キログラム当たり100ベクレルのものを食べても本当に安全なのか、考えようとしない。1キログラム当たり100ベクレルの放射性物質が体内に取り込むことがどんなことを意味するのか考えない。

 ほとんどの人が、国の基準値を満たしていれば安全だと信じている、あるいは信じたいと思っている、と私は感じました。


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/6(金)22:00に投稿予定です。

 

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『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<地面の底にビニールを敷いた貯水槽> ※13回目の紹介

2015-11-04 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。13回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 地面の底にビニールシートを敷いた貯水槽

 私は以前東電の発表した画像で、タンクに汚染水を運ぶホースが何十本もうねうねと地面を這っているのを見て驚きましたが、そのホースの材質を知ってさらに驚きました。

 放射線に耐える特別の材質ではなく、そこらの建材屋で売っている普通のホースなのです。

 私たちは敷地内を回る前に、新品のホース置き場を通りました。

 そこで、バスの窓からですがホースの断面も確かめることができました。

 なぜか表面に縦の筋が入った、直径が15センチくらいで、肉厚が3センチもないような何の変哲もないビニールホースでした。

 以前、地面に直に置かれたそのホースを雑草が突き抜けて上まで出てしまっている写真を見てたまげましたが、「ああ、これなら雑草が突き抜けるだろうな」と思わせるような、柔な材質に見えました。

 こんなホースで汚染水を移動させているとは信じられません。

 さらに、これはあとで知ったことですが、私たちが敷地内を見学したその日に、福島第一原発では事故が起こっていました。

 私たちが原発に入った直後、地面に掘った汚染水を貯める地下貯水槽7基が水漏れしていることがわかって、その中の汚染水をタンクに移しました。

 その地下貯水槽なるものはどんなものだったか。

 地面に穴を掘ってその穴の表面をビニールシートで覆ってそこに汚染水をためるというものでした。ところが、そこに使われたビニールシートが一般用に使われているもので、放射線に対して特別に対策をほどこしたものではなく、しかも、シートとシートの継ぎ目から水が漏れたのです。それで、その地下貯水槽は使用中止になりました。

 地面に穴を掘って底にビニールシート敷いて貯水槽とする、とはまるでボーイ・スカウトの野外活動ではありませんか。

 ボルトで締めただけの汚染水タンクや、地面に穴を掘って作る貯水槽など、福島第一原発で働いている技術者が自ら考えたものではないと思います。

 現場の厳しい状況を知っていれば、そんな安易なものを作ったらかえって危険だということはわかります。

 しかし、東電の幹部たちは戦前の陸軍大本営の将校たちのように、机上で立てた計画、金をけちる計画をたて、福島第一原発の職員たちはそれに従うしかなかったのでしょう。

 私は、福島第一原発で働いている方たちが献身的に作業している姿に「深い感銘を受けた」と書きました。

 しかし、その方たちは、現場知らずで金おしみの東電の上層部が作った、こんな安易な計画の下で自分の身を犠牲にして働いているのです。

 私は福島第一原発の職員の皆さんたちに対して、いう言葉が見つからないのです。

 「感銘を受けた」などと、職員の皆さんのこの働きに対して、あまりに軽い言葉ではありませんか。


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/5(木)22:00に投稿予定です。

 

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『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<あまりに安易な、汚染水タンク> ※12回目の紹介

2015-10-29 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。12回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 あまりに安易な、汚染水タンク

 だが、原発敷地内を見て、一番強く感じたことは、すべてが「応急処理」にしか過ぎないということです。

 それを一番感じたのは、汚染水の問題でした。

 私が敷地内に入って一番最初に驚いたのは、すさまじい数の汚染水保存タンクでした。

 1号機から3号機まで、圧力容器から解け落ちた核燃料は、2014年12月現在でもどこにあるのかわからない。
 その燃料が再び爆発しないために海水をかけて冷やし続けるしかない。

 原子炉にかけた水は放射能に汚染される。そこに、地下水が流れこむ。

 こうして、1日に400トンもの汚染水がたまる。それを、汚染水タンクに移す。

 私が原発敷地内に入って、まず驚いたのが、汚染水タンクの数でした。

 敷地内を埋めて、といってもいいすぎでないほど、汚染水タンクが並んでいるのです。

 その数は何百本あったのでしょうか。

 2014年3月10日の共同通信によれば、2014年2月末時点で1095基、保管されている高濃度汚染水は37万8000トンだそうです。

 その汚染水タンクは、東電の発表した映像を見ると、鋼板をボルトで締めて鋼板の間に水漏れを防ぐパッキングを入れる形になっています。


 あまりに安易な作りです。

 このタンクの作成を請け負った会社の社長は、「寿命は、2~3年の簡易型のものだ」といっています。しかもそのタンクを、基礎も何も打たず、コンクリートの地面の上に置いてあるだけです。これはあまりに、安易を通り越していい加減なのではありませんか。

 2013年9月7日、安倍首相はIOC総会で、東京にオリンピックを招致する目的で、福島第一原発による放射能汚染は心配ないと強調し、汚染水問題に対して出された質問について、「結論から申し上げれば、全く問題ないということであります。汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされています」と答えました。

 しかし、10月になって、東電は安倍首相の演説以前の8月20日、福島第一原発の貯蔵タンクから、ストロンチウムなどのβ線を出す放射性物質を最大1リットル当たり8000万ベクレル、放射性セシウムを同14万6000ベクレル含む高濃度放射能汚染水が推計300トン漏出していたと発表しました。


 ベーター線は遠くまで飛べないから心配ないといいますが、ストロンチウムが体内に入ったら大変です。

 だが、この件は、2013年10月に東電が発表したより実際はもっと深刻だったようです。

 『知恵袋2014』によれば、

 「2013年に地下貯水槽および地上タンクから数百トンの汚染水が漏れ出ていることが発覚。2011年に起きた国際原子力事象評価尺度(INES)レベル7(最悪)の原子炉本体の事故に加え、本件もレベル3の重大な異常事象となった。垂れ流された放射性物質は大量で、放射線量は数十兆ベクレルに上る」
 ということです。

 京都大学の小出裕章氏によれば、「広島の原爆の放出した放射能は24兆ベクレル」ということです。東電は、広島原爆の全放射能以上の量の放射能を海に垂れ流していたのです。

 安倍首相が、演説をする前にです。安倍首相はIOC総会で、世界に向けて、嘘をついたのです。

 こんな嘘は「風評」どころではないでしょう。

 それとも、福島について嘘でも安全だといえば、マスコミはそんな嘘を「風評被害」でなく、「風評利益」として褒めたたえるのでしょうか。

 あんな、鋼板をボルトで締めただけの簡易型のタンクが漏れないわけがないでしょう。


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/4(水)22:00に投稿予定です。

 

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『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<攻撃的な牛の群れは何を物語るのか> ※11回目の紹介

2015-10-28 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。11回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 攻撃的な牛の群れは何を物語るのか

 富岡町の中を菅野さんに案内していただきました。

 菅野さんのご自宅は新築したばかり、現代的なすてきな造りの家です。中を見せていただきましたが、家具も電気器具も真新しい上等なものばかりです。

 菅野さんはただ、ため息をつくばかりでした。

 菅野さんのご自宅の前の線量は、2マイクロシーベルトありました。

 これでは、居住は難しいでしょう。

 富岡町のJR駅舎にも行きました。

 ひどく破壊された駅舎に、「富岡」という駅名の表示板が残っているのが無惨でした。

 プラットホームから海が近くに見えます。海までは何もありません。

 菅野さんによれば、大震災前は駅から海まで家が立ち並んでいたのだそうです。

 それまでに、青森、岩手、宮城と被災地の様々な姿を見てきましたが、この富岡町の姿は、無惨としかいいようのないもので、心の中に冷たい風が吹き込むような思いがしました。


 富岡町で、一番怖かったのは、牛の群れに襲われたことです。

 かつて肉牛として飼育されていた、いわゆる黒毛和牛の群れです。震災後逃げ出して野生化したのでしょう。

 牛は放射線の怖さを知らないから、草をふんだんに食べることができて、元気そうです。

 飼育されている牛は耳に黄色い札がついています。しかし、何頭かの子牛には耳に札がついていません。菅野さんによれば、震災後逃げ出してから生まれた子牛だから、人の手がかけられておらず、耳に認識用の札もついていないのだそうです。

 私たちが牛を見ていると、牛たちも私たちの存在に気がついたようで、全頭私たちの方に視線を向けます。

 そのうちの数頭が私たちに向かって走ってきました。

 その牛の表情は凄かった。牧場で見る牛とはまるで目つきが違います。

 闘牛場で見る牛の目つきです。

 数頭がこちらに向かってくると他の牛も全頭従って、やってきます。頭を下げて角を突き出し、本気で攻撃する姿勢です。

 私は、撮影をしていたカメラマンを慌てて呼び戻し、菅野さんは車を発進させました。

 そのとき、先頭の牛は私の窓の近くまで迫っていました。

 その表情の恐ろしかったこと。

 何が怖かったといって、その目つきです。いわゆる、完全に行ってしまっている、という目です。闘牛士の味わう恐怖がどんなものかわかりました。こんな体験は初めてです。

 柔和なはずの牛がどうしてこんなに凶暴に攻撃的になったのでしょうか。

 人間の飼育から自由になって、野生を取り戻したのだ、といえば良い理屈付になりますが、1万年以上も人間に家畜として飼われてきた家牛は、1年や2年でいきなりアフリカのバッファローのようにはなりません。

 私は一つの牧場の大きさが富岡町自体の数十倍以上あるオーストラリアの牧場で、自由に生きている牛をたくさん見てきています。

 オーストラリアの牧場では人は牛の健康状態を気にかけこそすれ、牛が食べられる大きさにまるまで、全く手をかけません。

 富岡町で私が会った牛たちよりはるかに野生です。そんな自由な環境にいても、牛は攻撃的にはなりません。

 富岡町の牛はどうしてしまったのか。

 こちらから、何を仕掛けたわけでもないのに、突然牛の方から攻撃してくるとは、信じられないことでした。

 本当に怖い思いをしました。菅野さんによると、自動車と牛が衝突する事故も多いそうです。


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/29(木)22:00に投稿予定です。

 

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『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<線量がどんどん上がる「魔の部屋」> ※10回目の紹介

2015-10-27 22:04:52 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。10回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

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 線量がどんどん上がる「魔の部屋」

 富岡町は桜の花の名所です。

 今でも、富岡町のホームページを開くと、村一番の桜の名所の360度のパノラマ映像を見ることができます。

 しかし、私たちが入ったとき、富岡町は荒涼たるものでした。

 役場の中は、地震のために天井は破れ、机の上も床の上も、書類、事務用品、コンピュータなどが散乱して、惨憺たる有様です。

 とても使える状態にないので、役場機能は、すぐ近くの文化交流センターの2階に移し、富岡町の災害対策本部にしたのだそうです。

 その文化交流センター入り口前の板敷きの上で、毎時4.7マイクロシーベルトの線量を計測しました。

 これは途方もない線量で、年間41ミリシーベルトです。人間がいてはいけない場所です。

 2011年3月11日、震災後、町役場は文化交流センターの2階に災害本部を構え、町民は、小、中学校に避難していました。

 翌12日、だいぶ危ないとわかって、朝7時過ぎに緊急避難指示を出し、午後3時半に福島第一原発が爆発したため、もう駄目だと思って全員川内村に避難したのだそうです。

 災害対策本部だったその部屋には、当時の切迫した雰囲気がそのまま残っていました。

 ホワイトボードには避難する以前に災害対策本部が把握していた、死亡者と行方不明者の氏名が書かれていました。

 住民がどこに避難しているか、どこが通行止めになっているか、その時点で判明していた各地の被害状況も書き込まれていて、その時の災害外対策本部の必死の活動状況がよくわかり、見ていて胸が苦しくなりました。

 テーブルの上にも、どこに何人避難しているか書いた紙が何枚も置かれていました。ガスマスク、非常用食料、飲料水なども、あちこちに置かれています。

 菅野さんが笑いながら見せてくれた、ファイルがあります。

 3センチほどの厚さのファイルの表紙には、「富岡町地域防災計画」と書かれていました。

 菅野さんは笑っていいました。

 「災害の際にはただちに連絡を取る場所がいくつも指定されているんだけれど、そんなの、あんな大災害の時にはだめだよ。だって、電話なんかつながらないんだから。こんな防災計画は何の役にも立たなかった」

 その防災計画を作ったのは町役場です。

 だからでしょう、菅野さんは自嘲的に笑っていました。

 当時、災害本部内の線量は、0.25でした。その線量を見て、菅野さんはいいました。

 「線量がどんどん上がるところに行ってみましょうか」

 それはどんなところなのか伺うと、この文化交流センターの視聴覚室、「魔の視聴覚室だ」といいます。

 私たちは菅野さんの後に従いました。

 廊下を歩いて視聴覚室に近づくにつれて、線量がどんどん上がります。

 視聴覚室に入ると、線量は、なんと毎時7.68、8.06マイクロシーベルトという途方もない数値を示します。

 視聴覚室のすみの天井が破れています。

 放射性物資を含んだ雨水が流れこんで天井を破ったのだそうです。

 その破れ目に近くづと線量はどんどん上がります。

 ついに、線量は毎時15.52マイクロシーベルトを指しました。

 菅野さんが「ほら、15.52ですよ。すごいでしょう。いや、線量を楽しんでいるわけじゃないんですが」

 とおっしゃるので、私がつい、「でも、そう見えますが」というと、菅野さんは、辛そうに笑って、

 「だって、笑うしかないんですもん。泣いたってしようがないから、笑うしかないでしょう」

 私はその時の菅野さんの笑顔ほど辛い笑顔を見たことがありません。

 「泣くのがいやさに、笑って御座る」という昔の言葉がありますが、私はその言葉を思い出しました。


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/28(水)22:00に投稿予定です。

 

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