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情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

神奈川県情報公開審査会 答申第527号 農協不祥事件一覧一部非公開の件

2009年09月10日 | 法人等に関する情報
1 審査会の結論
農業協同組合の不祥事件一覧のうち、平成17年度の個人情報漏えい事件に係る農業協同組合の名称は、公開すべきである。

2 不服申立人の主張要旨
(1)不服申立ての趣旨
不服申立ての趣旨は、神奈川県知事(以下「知事」という。)が、平成20年12月18日付けで、農業協同組合(以下「農協」という。)の不祥事件の内容等を記載した文書(以下「本件行政文書」という。)を一部非公開とした処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める、というものである。

(2)不服申立ての理由
不服申立人の主張を総合すると、次のとおりである。

ア 不祥事件について
(ア)不祥事件が広く知られることによって、農協の信用が一定程度害されるおそれがあることは否定できない。
しかしながら、金融機関は利益を追求することを目的とする一方で、預金者等の信用の下に成り立っており、一定の公共性を有している。その点は、農協においても何ら変わることはない。公平で公正な市場の実現、十分な情報に基づいて金融商品のリスクを取るという観点から、農協を含む金融機関の不祥事件については、知事が一律公表すべきである。

(イ)不祥事件が公開されていない状態では、再発防止策の策定及びその取組を着実に実施しているか否かも不明である。不祥事件が明らかでない状態にあっては、その取組の成果についても公表できない。

(ウ)金融庁が不祥事件を不開示情報として取り扱っているとしても、そのことを非公開とする論拠とすれば、公開が永久に不可能となる。銀行の取扱いとの均衡性を考慮することは許されない。

(エ)不祥事件が農協の財務状態を著しく悪化させ、破産に至った場合には、すべての金額が預金者に戻ってくるわけではなく、農協に預金等を預けている人の財産が喪失するおそれがあるから、人の財産を保護するために、本件行政文書を公開することが明らかに必要である。

(オ)農協の不祥事件が公表されたとしても、農協だけが不祥事件の発生が顕著であるという印象を与えるとは限らない。むしろ、不祥事件が公表され、隠ぺいが不可能となれば、健全な印象を与える可能性が高い。

(カ)平成19年度の特定の不祥事件(以下「本件特定不祥事件」という。)について、農協の名称及び不祥事件の種類が明らかでない現状では、被害額を公表しても本件特定不祥事件に係る農協(以下「本件特定農協」という。)を特定することは不可能である。さらに、本件特定不祥事件の被害額は確定されていないというのであるから、当該被害額を公表することが犯罪の捜査等に悪影響をもたらすおそれのあるものとはいい難い。

イ 個人情報漏えい事件について
個人情報漏えい事件については、業種に関わりなく多数報道され、公表することが通例となっている。また、自己情報コントロール権侵害行為に該当する場合があるので、原則として公表すべきものである。

3 実施機関(環境農政部農業振興課)の説明要旨
実施機関の説明を総合すると、次のとおりである。

(1)本件行政文書について
本件行政文書は、農業協同組合法(以下「法」という。)第97条の2第12号、同法施行規則第231条第1項第20号並びに農業協同組合及び農業協同組合連合会の信用事業に関する命令第58条第1項第15号に基づき、農協から報告を受けた不祥事件等届出書の内容を抜粋し、作成した不祥事件一覧である。
本件行政文書には、平成15年度から平成20年度までに不祥事件が発生した農協(以下「本件農協」と総称する。)の名称、不祥事件の種類及び被害額並びに個人情報漏えいの概要及び漏えい件数が記載されている。

(2)第三者に対する意見書提出の機会の付与について
本件行政文書には、実施機関以外の者に関する情報が記録されているため、神奈川県情報公開条例(以下「条例」という。)第12条第1項の規定に基づき、平成20年10月27日付けで本件農協に対して意見書提出の機会を付与したところ、本件農協すべてから、本件行政文書の全部を非公開とすべきという趣旨の意見が提出された。本件農協の意見の概要は、次のとおりである。

ア 不祥事件の報告は、行政庁による農協の指導監督上の必要から提出されるもので、公開を想定していない。
本件農協では、本件行政文書に記載されている事案について、再発防止策の策定とその取組を着実に実施しており、本件行政文書が公開された場合、その取組の成果にかかわらず、本件農協に対する組合員の評価が適切になされない結果となり、事業利用の低下等の弊害を招くおそれがある。
また、本件行政文書が公開された場合、信用事業を行う農協の権利利益の侵害は一般の法人より大きく、現に金融庁は、農協と同様に信用事業を行う銀行の不祥事件について、存否を明らかにせずに不開示情報として処理している。
したがって、本件処分に当たり、農協の権利の保護及び金融庁における銀行の取扱いとの均衡を考慮した的確な対応を望むものであり、県と農協の信頼関係についても配慮願いたい。

イ 本件行政文書は、次に示す理由のとおり、条例第5条第2号に規定する非公開情報に該当するため、全部を非公開とすべきである。

(ア)本件行政文書は、法に基づく届出対象の不祥事件に関して記述したもので、本件農協の内部管理の事項に関する情報が記述されており、公開されれば、本件農協に信用上の不利益を与えるおそれがある。
なお、明らかに人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するために公開することが必要なものではない。また、農協以外の他業態の金融機関で、不祥事件に関する行政文書が公開されていない状況では、公開される農協においてのみ、不祥事件の発生が顕著であるかのような誤った印象を組合員や地域社会に与える懸念もあり、農協が被る不利益が大きい。

(イ)本件行政文書の記述を何ら除外することなく公開した場合のみならず、あるいは本件農協を特定できない形で公開した場合でも、農協で不祥事件が発生したことが明らかになり、県内の全農協の信用が害される結果、本件農協の権利、競争上の地位その他正当な利益が侵害されるおそれがある。また、本件行政文書のうち事案の具体的内容の記述を削除した場合であっても、本件農協において何らかの不祥事件が発生したことは明らかになるため、本件農協の権利、競争上の地位その他正当な利益が侵害されるおそれがある。

(3)本件処分を行った理由について
条例第6条第1項の規定では、公開請求に係る行政文書に非公開情報とそれ以外の情報が記録されている場合において、当該非公開情報とそれ以外の情報とを容易に、かつ請求の趣旨を失わない程度に合理的に分離できるときは、当該非公開情報が記録されている部分を除いて当該行政文書の公開をしなければならないとしている。
本件行政文書については、前記(2)の本件農協からの意見及び条例の規定を踏まえ、非公開部分とそれ以外の部分の判断を行ったうえで、これらを容易に区分できるため一部公開決定を行ったものであり、非公開部分の概要及び非公開とした理由は次のとおりである。

ア 非公開部分の概要について
本件行政文書のうち非公開とした部分は、本件農協の名称並びに本件特定不祥事件に係る不祥事件の種類及び被害額に関する記述である。併せて、平成19年度被害額計及び平成15年度から平成20年度までの被害額総計の記述も非公開とした。

イ 条例第5条第2号該当性について
条例第5条第2号の規定は、法人等に関する情報であって、人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、公開することが必要であると認められる情報を除き、公開することにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれがあるものは、非公開情報としている。
本件行政文書には、不祥事件ごとの内容が記載されており、本件農協の名称が公開されると、本件農協がその事業地域において信用できない事業者とみなされ、他業態の金融機関で不祥事件に関する行政文書が公開されていない現状では、信用事業をはじめ各種事業において他の金融機関等との競争上の不利益が生じるおそれがあると考えられ、条例第5条第2号に該当する。

ウ 条例第5条第6号該当性について
条例第5条第6号の規定では、公開することにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由があるものについては、非公開情報としている。
本件特定不祥事件については、本件特定農協が警察に告訴をしていることから、本件特定農協の名称、本件特定不祥事件の種類及び被害額に関する記述が公表され、警察の捜査が及んでいることが被疑者に分かると、証拠隠滅等のおそれがある。さらに、現時点では被害額が確定しておらず、実際の被害額と本件行政文書に記載された被害額との差額について証拠隠滅のおそれもある。また、警察から本件特定不祥事件の公表等は指示があるまで行わないよう要請があった旨、本件特定農協から報告を受けている。
したがって、本件特定農協の名称並びに本件特定不祥事件の種類及び被害額を公開すると、犯罪の捜査等を有効かつ能率的に行うことが困難となるおそれがあると考えられ、条例第5条第6号に該当する。
また、本件特定不祥事件の被害額が逆算できないよう、平成19年度被害額計及び平成15年度から平成20年度までの被害額総計についても非公開とした。

4 参加人(本件農協)の主張要旨
本件農協は、実施機関に対し不服申立てへの参加許可申請を行い、実施機関は行政不服審査法第24条第1項の規定に基づきこれを許可した。参加人の主張を総合すると、次のとおりである。

(1)条例第5条第2号該当性について
ア 条例第5条第2号本文該当性について
(ア)本件農協の名称が公開されれば、不祥事件及び個人情報漏えい事件が発生した農協が特定され、本件農協の社会的・経済的評価等が低下し、権利、競争上の地位その他正当な利益が侵害されることは明らかである。

(イ)金融庁は、監督する金融機関から提出された不祥事件等届出書の存否すら明らかにすることなく、不開示とする方針を採用している。本件農協の名称が明らかになることは、他の金融機関との間で著しく不平等な取扱いであるばかりか、それら金融機関との関係で本件農協の競争上の地位を害するものである。また、他県においては、不祥事件が発生した農協の名称を公開しないことが通例であるから、本件農協の名称が明らかにされることは、他県の農協との間でも著しく不平等な取扱いとなる。

イ 条例第5条第2号ただし書該当性について
(ア)本件農協の名称は、条例第5条第2号ただし書の「人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、公開することが必要であると認められる情報」には該当しない。

(イ)本件行政文書に記載された不祥事件はいずれも、不服申立人の主張する「不祥事件が農協の財務状態を著しく悪化させ、破産に至った場合」に該当するものではない。不服申立人が主張する架空の利益を保護することが、本件行政文書を公開することによる本件農協の不利益を上回るものではないことは明らかである。

(2)条例第5条第1号該当性について
ア 条例第5条第1号本文該当性について
(ア)農協は地域に密着した経営を行っており、組合員、利用者等は通常、農協に関する事柄について特定の個人を識別し得る情報を数多く保有している。本件農協の名称が明らかとなった場合、不祥事件及び個人情報漏えい事件に関係した特定の個人が、組合員、利用者等に識別され得ることは十分に想定できる。
特に、別途公開されている不祥事件に係る行政文書には、セクハラ行為の被害者等が退職した旨も記載されていることから、本件農協の名称が明らかになれば、当該セクハラ行為の被害者等が誰であったのかを識別することは容易に可能となる。

(イ)特定の個人が識別されるに至らなかった場合でも、本件農協の名称が明らかとなることにより、特定の地位にある職員又は全職員の名誉・信用等の権利利益が害されるおそれがある。

イ 条例第5条第1号ただし書該当性について
(ア)本件農協の名称は、条例第5条第1号ただし書アからエまでのいずれにも該当しない。

(イ)同号ただし書エとの関係では、不祥事件及び個人情報漏えい事件に関係したという事実は、当該個人にとっては高度にセンシティブな情報であり、かつ当該個人のプライバシーに他ならないから、当該個人の利益を保護すべき必要性は、条例第5条第2号ただし書の場合よりも一層大きいことは明らかである。

(3)条例第5条第4号該当性について
ア 法第97条の2第12号等に基づく不祥事件に係る届出は、不祥事件の再発防止と農協の改善を目的として、県による農協に対する指導・監督のために行われるものであり、不祥事件の内容が広く公表されることを前提とするものではない。本件農協の名称が公開されるとすれば、届出の内容等が現在と異なるものにならざるを得ず、当該内容等に関して県との意見の相違等が生じることも懸念される。よって、本件農協の名称は条例第5条第4号に該当する。

イ 仮に、県が法第93条に基づき、農協に対してあらゆる不祥事件に関する報告及び資料の提出を命じなければならないような事態に至れば、そのこと自体が農協に対する指導・監督事務の適正な遂行に支障が生じていることを示すものに他ならない。

(4)条例第5条第6号該当性について
本件特定不祥事件については、本件特定農協が警察に告訴を行っており、警察において捜査中である。また、現時点では被害額が確定しておらず、本件特定農協は、警察から本件特定不祥事件については別途指示があるまで公表しないよう要請を受けている。したがって、本件特定不祥事件に係る情報は条例第5条第6号に該当する。

5 審査会の判断理由
(1)審査会における審査方法
当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査会審議要領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は参加人から口頭により意見を、また、実施機関の職員から口頭による説明を聴取した。それらの結果も踏まえて次のとおり判断する。

(2)本件行政文書について
本件行政文書は、法第97条の2第12号の規定等に基づき提出された、平成15年度から平成20年度までの不祥事件等届出書の内容を、実施機関が抜粋し、作成した農協に係る不祥事件一覧である。
本件行政文書には、本件農協の名称、不祥事件の種類、被害額等が記載されており、併せて、平成17年度の個人情報漏えい事件(以下「本件漏えい事件」と総称する。)に係る個人情報漏えいの概要及び漏えい件数が記載されている。

(3)条例第5条第2号該当性について
ア 条例第5条第2号本文該当性について
(ア)条例第5条第2号本文は、「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は非公開とすることができると規定している。

(イ)本件行政文書には、本件農協の名称のほか、発生した不祥事件の種類及び被害額等に関する情報が記載されているが、不祥事件の種類及び被害額等に係る情報は、本件処分において既に公開されている。
したがって、本件行政文書に記載された、本件漏えい事件を除く不祥事件(以下「本件不祥事件」と総称する。)に係る農協の名称を公開すれば、本件不祥事件が当該農協において発生したことが明らかになることから、本件不祥事件に係る農協の名称は、公開することにより当該農協の権利、競争上の利益その他正当な利益を害するおそれがあるものと認められる。

(ウ)本件行政文書には、本件漏えい事件に係る農協の名称、個人情報漏えいの概要及び漏えい件数が記載されているが、これは、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)の平成17年4月1日からの全面施行に伴い、平成17年度の農協における個人情報漏えい事件が、法第97条の2第12号の規定等に基づく不祥事件として届出されていたことによるものである。

(エ)「個人情報の保護に関する基本方針」(平成16年4月2日閣議決定)は、事業者において、個人情報の漏えい等の事案が発生した場合は、二次被害の防止、類似事案の発生回避等の観点から、可能な限り事実関係等を公表することが重要であるとしている。
また、「個人情報の適正な取扱いを確保するために農林水産分野における事業者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成16年11月9日農林水産省告示第2013号)に代わり新たに定められた「農林水産分野における個人情報保護に関するガイドライン」(平成21年7月10日農林水産省告示第924号。以下「ガイドライン」という。)は「法違反の中でも、特に個人データの安全管理(法第20条から第22条まで)について違反があった場合には、二次被害の防止、類似事案の発生回避等の観点から、事実関係及び再発防止策等について、速やかに、公表することが望ましい」と規定している。
これらのことからすると、個人情報の漏えい等の事案が発生した場合、事業者には、業態業種を問わず、個人情報の漏えいに係る事実関係等を外部へ説明する一定の責任が求められているものと認められる。

(オ)個人情報漏えい等の事案に係る事業者の説明責任及び本件行政文書に記載された本件漏えい事件の内容を考え合わせると、本件漏えい事件に係る農協の名称が公開されることにより、当該農協の権利、競争上の利益その他正当な利益を害するおそれがあるとまでは認められない。

(カ)以上のことから、本件不祥事件に係る農協の名称は、条例第5条第2号本文に該当するが、本件漏えい事件に係る農協の名称は、同号本文に該当しないと判断する。

イ 条例第5条第2号ただし書該当性について
(ア)条例第5条第2号ただし書は、同号本文に該当する情報であっても、「人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、公開することが必要であると認められる」場合には、例外的に公開できると規定している。
この規定は、人の生命、身体等への危害等が現に発生している場合に限らず、将来発生することが予測される状態が存在しており、当該情報を公開することにより保護される人の生命、身体等の利益とこれを公開しないことにより保護される法人等の権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護する必要性が後者のそれを上回る場合にも、当該情報を公開しなければならないとする趣旨であると解される。

(イ)本件行政文書に記載されている本件不祥事件の内容はいずれも、人の生命、身体等への危害等が現に発生している場合又は将来発生することが予測される状態が存在している場合に該当するとは認められず、本件不祥事件に係る農協の名称は、条例第5条第2号ただし書に該当しないと判断する。

(4)条例第5条第1号該当性について
条例第5条第1号は、情報公開請求権の尊重と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要請を調整しながら、個人を尊重する観点から、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規定している。

ア 条例第5条第1号本文は、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別することはできないが、公開することにより、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を非公開とすることができると規定している。
したがって、同号本文は、明白にプライバシーと思われる場合はもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも含めて非公開とすることを明文をもって定めたものと解される。

イ 本件行政文書に記載されている本件漏えい事件の内容からすると、本件漏えい事件に係る農協の名称を公開しても、特定の個人が識別され、若しくは識別され得る場合又は特定の個人を識別することはできないが、公開することにより、個人の権利利益を害するおそれがある場合に該当するとは認められず、本件漏えい事件に係る農協の名称は、条例第5条第1号本文に該当しないと判断する。

(5)条例第5条第4号該当性について
ア 条例第5条第4号は、「県の機関、国等の機関、独立行政法人等又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公開することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は非公開とすることができるとして、アからオまでの各規定においてその典型を例示している。

イ 本号アからオまでの各規定に掲げられている情報は、本号の柱書に該当する情報の典型的な例を示すものであり、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」には、これらに類似し、又は関連する情報も含まれるものと解される。

ウ ガイドラインは、個人情報保護法違反又は同法違反のおそれが発覚した場合には、農林水産関係事業者は、事実関係及び再発防止策等について、速やかに、主務大臣等に報告するよう努めなければならないことを規定している。このことからすると、実施機関は、個人情報漏えい事件に係る報告の内容等に関して、農協との間で意見の相違等が生じたとしても、実施機関が必要と認める内容の報告を求めることができるものと認められる。
したがって、本件漏えい事件に係る農協の名称を公開しても、実施機関による農協に対する指導・監督事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、条例第5条第4号に該当しないと判断する。

(6)条例第5条第6号該当性について
ア 条例第5条第6号は、「公開することにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」は非公開とすることができるとしている。
ここでいう「捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに犯人及び証拠を発見し、証拠を収集及び保全する活動をいうと解される。

イ 本件特定不祥事件については、本件特定農協が警察に告訴しており、本件特定農協の名称、本件特定不祥事件の種類及び被害額に関する記述が公開されると、証拠隠滅等のおそれがあるといった事情が認められ、本件特定農協は、警察から本件特定不祥事件の公表等は指示があるまで行わないよう要請されている。
したがって、本件特定農協の名称並びに本件特定不祥事件の種類及び被害額を公開すると、犯罪の捜査等を有効かつ能率的に行うことが困難となるおそれがある。
また、平成19年度被害額計及び平成15年度から平成20年度までの被害額総計は、公開することにより本件特定不祥事件の被害額が明らかとなる情報である。

ウ 以上のことから、本件特定農協の名称、本件特定不祥事件の種類及び被害額並びに平成19年度被害額計及び平成15年度から平成20年度までの被害額総計は、これらを公開することにより、犯罪の捜査に重大な支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報であると認められ、条例第5条第6号に該当すると判断する。

6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別 紙
(略)


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