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情報公開・個人情報保護審査会 平成18年度(行情)答申第73号 対外情報機能強化に関する懇談会…

2006年05月16日 | 国/公共の安全等に関する情報
諮問庁 : 外務大臣
諮問日 : 平成17年12月13日 (平成17年(行情)諮問第638号)
答申日 : 平成18年 5月16日 (平成18年度(行情)答申第73号)
事件名 : 「対外情報機能強化に関する懇談会」関連資料の不開示決定に関する件

答 申 書


第1  審査会の結論
 「対外情報機能強化に関する懇談会」関連資料のうち,第一回ないし第六回会合議事録(以下「本件対象文書」という。)につき,その全部を不開示とした決定は,妥当であるが,懇談会メンバーの誓約書及び会合における配布資料6文書を対象として,改めて開示決定等をすべきである。

第2  異議申立人の主張の要旨

1  異議申立ての趣旨
 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成17年11月2日付け情報公開第02397号により外務大臣(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った本件対象文書の不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

2  異議申立ての理由
 異議申立人の主張する異議申立ての理由は,異議申立書及び意見書の記載によると,おおむね以下のとおりである。

(1)  記録された内容を精査し,支障が生じない部分については開示すべきである。

(2)  諮問庁は理由説明書において,「バーベータム」,「フォローアップ」といったおよそ日本語とは思われない用語を使用しているが,これらの用語の意味を異議申立人には理解できない。これらの用語を日本語に直すか,注釈を加えるなどして,通常人に理解できるように改めるべきである。

(3)  平成11年4月27日付け閣議決定「審議会等の整理合理化に関する基本計画」では,審議会等について「会議又は議事録を速やかに公開することを原則とし,審議内容の透明性を確保する。なお,特段の理由により会議及び議事録を非公開とする場合には,その理由を明示するとともに,議事要旨を公開する」こととされている。また,懇談会等行政運営上の会合については,審議会等の公開に関する措置に準ずるとされている。
 したがって,懇談会等の議事内容も原則公開されるべきである。
 また,上記閣議決定を受けて「情報公開に関する公務員の氏名・不服申立事案の事務処理に関する取扱方針(各府省申合せ等)」(平成17年8月4日)では,「懇談会等行政運営上の会合の議事録における発言者の氏名について,特段の理由がない限り,発言者が公務員であるか否かを問わず公開する」との確認を行っている。
 処分庁の主張は,上記閣議決定及び申合せの趣旨を完全に逸脱している。

(4)  懇談会参加メンバーは内容を公開しないとの誓約を交わしたわけではない。
 処分庁は,理由説明書(2005-00660)において「各メンバーに対しあらかじめ外部に内容を公開しない旨の誓約書の提出を求めた」としているが,当該誓約書の文面はそのような取決めになっていない。当該誓約書を字句どおりに解釈するなら,「本件懇談会にて知り得た秘密」のみを漏洩しない旨の誓約であると理解できる。つまり懇談会で知り得た内容のうち,国会公務員法100条でいう「秘密」に該当する事項のみを漏洩しないとの誓約であり,懇談会の知り得た内容のすべてを秘密として守るという誓約ではないことは文面からも明らかである。仮に諮問庁の主張のとおり外部に内容を公開しない旨の誓約であれば,その文面は「懇談会で知り得た事項については一切他言しないことを誓う」といった字句になるはずである。

第3  諮問庁の説明の要旨

1  本件対象文書について
 本件異議申立の対象となる文書は,その全部を不開示とした「対外情報機能強化に関する懇談会」の第1回ないし第6回会合議事録の6文書である。

2  不開示とした部分についての理由説明書による説明について

(1)  不開示決定を行った本件対象文書には,懇談会参加メンバーの発言が発言どおりバーベータムで記載されているが,本懇談会は非公開を前提に,各メンバーに対しあらかじめ外部に内容を公開しない旨の誓約書の提出を求めた上で,自由な意見交換を行ったものである。したがって,本件対象文書については,公にすることにより各個人の発言内容が特定され,当該個人の権利利益を害するおそれがあるので,法5条1号に基づき不開示とするのが妥当である。

(2)  また,本件対象文書には非公開を前提とする我が国の情報収集・分析,及び他国の情報収集・分析についての記載があり,公にすることにより我が国の情報収集・分析活動の対象等が明らかになり,国の安全が害されるおそれがあること,及び非公開を前提として入手した情報が明らかになることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれがあることから,法5条3号に基づき不開示とするのが妥当である。

(3)  加えて,本件懇談会に係るフォローアップはいまだ継続中であり,本件対象文書を公にすることにより,フォローアップにおける率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるため,法5条5号に基づき不開示とするのが妥当である。

(4)  さらに,本件対象文書には諮問庁が行う情報収集・分析の具体的手法等についての情報が含まれており,公にすることにより諮問庁の情報収集・分析活動の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,法5条6号柱書きに基づき不開示とするのが妥当である。

3  補充の理由説明書による説明について

(1)  「バーベータム」,「フォローアップ」の意味について
 「バーベータム」は,英語の「verbatim」を日本語読みしたものであり,「逐語的な(に)」「言葉どおりの(に)」「一語一句そのままの(に)」という意味である。すなわち,「懇談会参加メンバーの発言が発言どおりバーベータムで記載されている」とは,「懇談会参加メンバーの発言が発言どおり,一語一句そのままに記載されている」ことを意味する。また,「フォローアップ」は英語の「follow-up」を日本語読みにしたものであり,「続行」「追い打ち(撃ち)」「追いかけ」等の意味がある。処分庁の理由説明書では,「物事を徹底するために,その物事の展開を継続的に調査すること」といった意味で用いており,本件懇談会終了後も懇談会の目的を達成するための調査・研究・検討が継続的に行われていることを説明するものである。

(2)  処分庁の決定が,懇談会の議事内容を原則公開とする平成11年4月27日付け閣議決定の趣旨から逸脱するものであるとの主張について
 「審議会等の整理合理化に関する基本計画」では,その別紙4において,懇談会の運営については,審議会等の公開に係る措置に準ずるものとし,その別紙3「審議会等の運営に関する指針」の「(4)公開」において,議事録の速やかな公開を原則としている。しかしながら,そのなお書きにおいて,議事録を非公開とする場合には,その理由を明示するとともに議事要旨を公開するものとし,議事録が非公開とされる余地を残している。本件異議申立ての対象となった「対外情報機能強化に関する懇談会」の議事録は,理由説明書にも記載したとおり,公にすることにより個人の発言内容が特定され,当該個人の権利利益を害するおそれ,我が国の情報収集・分析活動の対象等が明らかになり,国の安全が害されるおそれ,非公開を前提として入手した情報が明らかになることにより他国との信頼関係が損なわれるおそれ,いまだ継続中の本件懇談会に係るフォローアップにおける率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,外務省の情報収集・分析活動の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとの理由により,一般に公開し得ないものである。よって,処分庁では,閣議決定の趣旨どおり,議事録に替えて議事要旨を公開しているほか,懇談会報告書を外務省ホームページ上等で公開しており,本件開示請求の開示等決定においても議事要旨,報告書については開示の決定をしており,平成11年4月27日付閣議決定の趣旨から逸脱するものではない。

4  異議申立人の主張について
 異議申立人は,「記録された内容を精査し,支障が生じない部分については開示すべきである」として,原処分の取消しを求めている。
 しかしながら,処分庁は各文書ごとに不開示該当事由の有無を精査の上,開示決定等通知書のとおり決定を行ったものであり,法に基づいて開示されるべき文書は既に開示しており,本件対象文書の不開示決定は妥当なものである。
 また,懇談会の要旨は,開示決定をした「議論の概要」等において既に開示したものと考えられるため,本件対象文書の不開示決定は妥当なものである。

5  結論
 上記の論拠に基づき,処分庁としては,原処分を維持することが適当であると判断する。

第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

①  平成17年12月13日  諮問の受理
②  同日  諮問庁から理由説明書を収受
③  平成18年1月10日  異議申立人から意見書を収受
④  同年2月8日  異議申立人から意見書を収受
⑤  同月10日  諮問庁から補充理由説明書を収受
⑥  同年3月3日  本件対象文書の見分及び審議
⑦  同年4月18日  諮問庁の職員(外務省大臣官房情報公開室長ほか)からの口頭説明の聴取
⑧  同年5月12日  審議

第5  審査会の判断の理由

1  本件対象文書について
 本件対象文書は,当審査会において見分したところ,国内有識者により構成される「対外情報機能強化に関する懇談会」(計6回開催)において非公開を前提に議論された外務省組織の現状と課題,インテリジェンスの在り方検討において踏まえるべき主要論点などのテーマについての6回にわたる会合の内容を発言者ごとに一言一句詳細に記録した議事録,計6文書である。

2  「対外情報機能強化に関する懇談会」の性格について
 本件懇談会は,諮問庁の説明によれば,国内有識者により,外務省における対外情報収集・分析や情報組織の在るべき姿などにつき,広範かつ自由な議論を行い,その結果,外務省における情報機能の強化等に向けて,有益な示唆を得ることを目的として立ち上げられ,平成17年4月から9月にかけて計6回の会合が開催された。また,本件懇談会に参加した有識者に対しては,あらかじめ,各会合において自由闊達な議論が行われるように議論の詳細については非公開とし,各会合の議論の概要及び全体の議論の要点を取りまとめた最終報告書については公開するとの前提でメンバー就任を依頼したものである。

3  本件諮問事件の不開示情報該当性について

(1)  法5条3号該当性について
 本件対象文書は,諮問庁が諸外国より入手した当該国情報機関に関する機微な具体例も参照しつつ,我が国の情報収集・分析・評価等に関する現状と今後の在り方についての有識者同士の忌憚のない意見交換の様子が一言一句ごと詳細に記録された文書であり,国の安全に関する率直かつ機微な発言が随所に記録された文書であると認められる。
 このような記載は,これを公にした場合,我が国の情報収集・分析・評価等の在り方についての議論がつまびらかになり,国の安全が害されるおそれがあり,また,非公開を前提として入手した情報が明らかになることにより,他国との信頼関係が損なわれるおそれがあると諮問庁が認めることにつき相当の理由があると認められる。
 したがって,本件対象文書は,これを公にした場合,我が国の安全が害され又は他国との信頼関係が損なわれるおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があると認められ,法5条3号に該当し,不開示とすることが妥当である。

(2)  法5条6号柱書き該当性について
 諮問庁は,懇談会の各メンバーに対しては,あらかじめ,各会合において自由闊達な議論が行われるように議論の詳細については非公開とし,議論の要点を取りまとめた最終報告書については公開するとの前提でメンバー就任を要請しており,さらに,本件会合が各有識者の知見に基づき忌憚のない自由な議論を行うという性質を有し,しかも,議論の対象が外務省,日本政府の対外情報機能がどうあるべきかという極めて機微なものであることから,その議論の過程の一部なりとも発言内容の細部が公開されることとなれば,今後,自由闊達な意見交換が必要不可欠なこの種会合において,発言者が慎重になる余り無難な発言に終始し,本来,有意義かつ忌憚のない意見交換が行われるべき議論が無用に萎縮したり,あるいは,然るべき有識者に参加を依頼することができなくなるなど,この種会合の運営に支障が生じ,法5条6号柱書きに該当すると説明しているところ,かかる諮問庁の説明は首肯し得るものである。

4  文書特定について
 諮問庁の理由説明書に懇談会メンバーに対し誓約書の提出を求めた旨の記載があること,及び当審査会において本件対象文書を見分したところ,6回の会合で計6件の資料が席上配布されたことを窺わせる記載があることから,当審査会が諮問庁より文書特定について聴取したところ,本件対象文書以外にも懇談会メンバーの誓約書及び席上配布資料6文書が存在し,これらの文書は,担当部署において引き続き保有している組織共用文書であり,異議申立人が開示請求する「対外情報機能強化に関する懇談会」関連文書に該当すると認められる。したがって,当該文書については,これを本件開示請求の対象として特定した上,改めて開示決定等をすべきである。

5  異議申立人のその他の主張について

(1)  閣議決定及び申合せとの整合性
 異議申立人は,意見書において,平成11年4月27日付け閣議決定「審議会等の整理合理化に関する基本計画」を引用し,懇談会の議事録は公開されるべきであると主張するが,同基本計画はその別紙において,議事録を非公開とする場合には,その理由を明示するとともに議事要旨を公開するものと規定されており,議事録が非公開とされる余地を残す規定振りとなっている。諮問庁の説明によれば,本件については,議事録に替えて議事要旨を公開しているほか,懇談会報告書を外務省ホームページ上等で公開しており,本件開示請求の開示等決定においても議事要旨,報告書については開示の決定をしていることから,かかる対応は上記閣議決定の趣旨から逸脱するものではないと認められる。

(2)  異議申立人は,意見書においてその他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。

6  本件不開示決定の妥当性
 以上のことから,本件対象文書につき,その全部を法5条1号,3号,5号及び6号に該当するとして不開示とした決定については,同条3号及び6号柱書きに該当すると認められるので,同条1号及び5号について判断するまでもなく,妥当であるが,本件対象文書の外に開示請求の対象として特定すべき懇談会メンバーの誓約書及び会合における配布資料6文書を保有していると認められるので,これらを対象として,改めて開示決定等をすべきであると判断した。

 (第2部会)

 委員 寳金敏明,委員 秋田瑞枝,委員 戸松秀典


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