付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

★「タイムループ」もの

2024-06-07 | ランキング・カテゴリー
 時間SFの一種だけれど、なんらかの原因で主人公が同じ時間を繰り返し体験することがストーリーの根幹となる作品です。起きていることは「タイムリープ」と同じなのだけれど、その中でも「同じイベント」「同じ事件」を何度も繰り返しを強要されるものを「タイムループ」とします。自由度が低いのと、ループする原因を解明して解決しないといけないという作劇上の強制力があるのが特徴です。なので、渚カヲルが「さあ約束の時だ、碇シンジ君。今度こそ君だけは、幸せにしてみせるよ」などと言い放った『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』も、もしかしたらループものになるのかもしれません。(その元祖はスウィントンの小説仕立ての兵法書『愚者の渡しの防御』らしいのですが入手不能なので参考までにメモ。)
 また、主人公たちが同じ物語を繰り返していることに気づかず、メタ的な読者/観客視点でのみ気づくことができるものも含みません。なので『ひぐらしのなく頃に』『ガンパレード・マーチ』などは該当しないものとします。

『いまひとたびの』 H・ビーム・パイパー(1947)
 第三次大戦に従軍して瀕死の重傷を負ったアラン・ハートリー大尉は、気がつくと30年前の自分の身体に戻っていた。少年の妄想では無い。アランは化学的知識や語学、その他30年間に学んだ知識やその間の歴史的事件について覚えていたのだ。彼は父親を説得すると……。
 『ここがウィネトカなら、きみはジュディ-時間SF傑作選』に収録。単なる2回目なので、ループと言うには回数足りてないかも。

『倒産前日』小松左京 (1964)
 悪魔に会社が倒産しないように頼んだら、倒産前日を繰り返すようになった……。
 ブラック・ユーモア譚。

『12:01PM』 リチャード・A・ルポフ(1973)
 世界がタイムループにはまり、午後12時1分と1時の間を延々と繰り返す時の牢獄と化してしまう……。
 <ループものの元祖というべき作品で、派生した映画等も多い。ただ、この話が収録されている『ここがウィネトカなら、きみはジュディ-時間SF傑作選』の解説によれば、筒井康隆の『しゃっくり』(1965)の方が早いそうです。BR clear="left">
『ねじれた時間』 奥友志津子(1975)
 難病で脳に腫瘍にできた少女が、自分の平穏な日々を時間のループに閉じ込める……。
 「明日への終止符」に改題。

『うる星やつら2/ビューティフル・ドリーマー』 スタジオぴえろ/キティ・フィルム(1984)
 何度も繰り返される「学園祭の前日」。同じ1日が繰り返されることに気づいた教師もいたが、周囲の生徒はそれで何が困るのかと開き直る……。
 押井守の出世作となった劇場アニメ。

『リプレイ』 ケン・グリムウッド(1987)
 43歳で心臓発作による突然死を迎えたラジオ局ディレクターのジェフ・ウィンストンは、気がつくと記憶を持ったまま18歳に戻っていて、人生をやり直すことになるのだが……。
 

『12:01PM』 ジョナサン・ヒープ(1990)
 世界がタイムループにはまり、午後12時1分と1時の間を延々と繰り返すことになった。そのことに気づいた中年男マイロンは、なんとか原因を探ろうとするが……。
 ルポフ原案のアメリカ映画。

『タイムアクセル12:01』 ジャック・ショルダー(1993)
 粒子加速機実験の失敗で時間の反復運動が起きてしまい、世界は同じ1日を繰り返すことになるが、午前12時1分の実験開始直後に感電していたバリー以外は誰も気づいていない。そしてバリーは実験のために殺されてしまう美人の同僚リサを救えるのか……。
 ルポフ原案のアメリカ映画。

『恋はデジャ・ブ』 ハロルド・レイミス(1993)
 立春のお祭りを取材するため小さな田舎町に来たテレビの天気予報官が、お祭りの2月2日を何度も繰り返すうちに「2月2日」のベテランになる。……。
 ルポフらがアイデア盗用と訴えようとしたアメリカ映画。

『スタートレックTNG~恐怖の宇宙時間連続体』 パラマウント・テレビジョン(1992)
 タイフォン星団の調査に向かうエンタープライズ号で医療主任のクラッシャー中佐は強いデジャ・ヴュと深夜の幻聴に悩まされていた。ポーカーの勝負で、医療室での受診で、前にも同じことをしたような気がするのだ。どうやら時間がループしているらしいと判明したのだが、時既に遅くエンタープライズ号は大破爆沈してしまう……。
 

『七回死んだ男』 西澤保彦(1995)
 時間のループにとらわれ同じ1日を9回繰り返してしまう少年が、祖父の死を食い止めようとするのだが……。
 

『はるかリフレイン』 伊藤伸平(1997)
 高校生になり付き合い始めた星はるかと上条啓太だったが、啓太は自動車事故で死んでしまう。悲しみに暮れるはるかだったが、時計塔の午後4時の鐘の音を聞くと事故の前日に戻っていた。何とか啓太を事故から救おうとするはるかだが……。
 進研ゼミ『高一Challenge』に連載されていたコミック。

『ターン』 北村薫(1997)
 版画家の真希は夏の午後にダンプと衝突するが、気がつくと自宅の座椅子で目覚めていた。いつも通りの日常だが、真希以外には誰も居ない。そして、気がつくとまた前日に戻って座椅子に戻っているのだった……。

『ゼルダの伝説-ムジュラの仮面』 任天堂(2000)
 妖精リンクは3日後には月が落ちてきて滅びてしまうことが定められた世界で、最初の日からの3日間を繰り返しながら、世界の謎を解き明かしていく……。
 NINTENDO64ゲーム。

『エンドレスエイト』 谷川流 (2004)
 夏休みの8月17日から8月31日までの15日間が延々とループしてしまい、同じ日々が繰り返されるが誰も気がつかないまま15000回を突破した……。
 『涼宮ハルヒの暴走』収録の短編。

『ALL YOU NEED IS KILL』 桜坂洋 (2004)
 謎の敵ギタイとの戦いに負けつつある人類。新兵だったキリヤは、戦死したはずが30時間前に戻っていた。何度も繰り返される戦闘の中、キリヤは経験のみを過去に引き継ぐことで、新兵なのにいつしか歴戦の勇士と化していた……。
 ヤングジャンプでコミック化して、さらにハリウッドで映画化。コミックナタリーのインタビューで著者が「「高機動幻想ガンパレード・マーチ」っていうループを題材にしたゲームのプレイ日記をWEBで読んで、そこから着想を得たんです」と語ってます。

『秋の牢獄』恒川光太郎 (2007)
 女子大生の藍は11月7日を何度も繰り返している。同じ講義、同じ会話、朝になれば全てがリセットされ、同じ1日が始まる……。
 ホラー小説。

『STEINS;GATE』 5pb. (2009)
 マッドサイエンティストの岡部倫太郎が、自分の記憶のみを過去に送る「タイムリープマシン」でなんとか未来を変えて友人たちを救おうと同じ時間をループし続ける……。
 アドベンチャーゲーム。後にアニメ化、ノベライズもされ、秋葉原に原寸大モニュメントも出現した。
 
『魔法少女まどか☆マギカ』 シャフト(2011)
 親友であった鹿目まどかの死を回避するため、時間を操作する能力を得た魔法少女・暁美ほむらは、2人の出会いから死別までの1か月間を幾度となく繰り返していく……。
 元祖魔法少女からあれこれ変遷しながらバリエーションを増やしていた魔法少女ものを、一気に別のレールに載せ替えてしまったターニングポイント的存在。これ以降、誰もマスコットキャラの言葉も魔法少女の善性も信じられなくなりました。

『僕だけがいない街』 三部けい(2012)
 藤沼悟には「再上映(リバイバル)」という特殊能力があった。事件や事故など身の回りに悪い事が起きると本人の意志に関係なくタイムリープしてしまい、その原因が取り除かれるまで同じ時間を何度もタイムリープしてしまうというものだ。そんな藤沼の母親の佐知子が殺され、彼はそれまで経験したことがないほど過去へ、まだ少年時代の1988年の北海道へと飛ばされてしまう。それは当時起きていた連続誘拐殺人事件に関係しているらしく……。
 コミック誌ではややマイナーな「ヤングエース」で連載されていたけれど、口コミで面白いよと伝わってきて、気がついたらコミックはヒットしてるし、映画やアニメや小説になるし、フランスで賞は取るしで、きっと以後はタイムリープものの企画が通りやすくなったかも。

『Re:ゼロから始める異世界生活』 長月達平(2013)
 引きこもり気味の高校生スバルはコンビニ帰りに気がついたらファンタジー世界にいた。これはゲームなんかでおなじみのパターンと調子に乗るスバルだが、特別な力があるわけもなく、知り合った謎の銀髪美少女の手助けをして何者かによって殺されてしまうのだが、そこで彼の真の力が明らかになった。「死に戻り」。死んでしまったら、時間を巻き戻して最初からやり直せる力だった。……。
 誰かを助けても、好きになっても、約束しても、すべてリセットされてしまって思い出してももらえない「死に戻り」。無知にして無能、無力なのに無謀という少年が、名前も知らない少女を救うために何度も苦しみながら死んでは生き返り、五里霧中な状況の中で圧倒的な敵を相手に一歩もひるまない物語。

『宵山迷路』森見登美彦 (2007)
 目が覚めると、また祇園祭宵山の朝。男はこの繰り返しから抜け出せるのか?……。
 『宵山万華鏡』の一篇。

『私の幸せは貴方のそれではない』汀こるもの (2014)
 見慣れないコスチュームを身につけて、ペット動物をお供にしていて、ステッキみたいなものを手に怪異と戦っているけれど、出屋敷市子は魔法少女でもプリキュアでもない。今は引退しているけれど、ちょっとコミュ障だけれど、かつては日本の地を脅威から守護していた、やんごとなき中学生少女であった……。
 日本の守護者を引退した、やんごとなき女子中学生の物語『ただし少女はレベル99』の1編。「長門のように壊れたくはないので適宜重複データを破棄しておくべきじゃの」というのが、ループを認識した時の執るべき手段。


 浅羽通明の『時間ループ物語論』などを目を通すと、まだまだいくらでもあるようですが、とりあえずここまで。

(2014/07/01 2024/06/07改稿)
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