付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「山椒魚戦争」 カレル・チャペック

2007-08-22 | 破滅SF・侵略・新世界
 水の星と呼ばれる地球。その水のかなりの量が極地の氷となっているため、地球温暖化などで氷が溶け出したら地表の大部分は水に沈むと言われています。映画『ウォーター・ワールド』やTVアニメ版『未来少年コナン』はそうした世界を扱った物語です。話として面白かったのは後者だけれど、設定が面白かったのは前者。陸地が消え、人々は小さな人工島や廃船の寄せ集めに住み、砂や土は金銀宝石より貴重な存在。オイルタンカーを手に入れたならず者たちだけが水上バイクなどを駆使して略奪を繰り返しているけれど、暗いタンカーの底では小舟に乗った爺さんが残り少なくなったオイルの量を測っている…という状況。
 沈んでいく過程を扱った代表は、チャペックの『山椒魚戦争』とジョン・ウィンダムの『海竜めざめる』かな。文明批判色が強い「山椒魚」の方は知能を持つ山椒魚を安価な労働者として使うようになった人類が、やがてその山椒魚に世界の主導権を奪われていく話。侵略SFの古典である「海竜めざめる」は海の底に潜んだ何ものかによって地球侵略が進み、大地が静かに水没しはじめ、各所で人類が孤立していく話。ちらほら登場する巨大水母のような海底戦車が不気味で良いですね。
 現実に少しずつ海面が上昇していることもあって、海面が上昇する作品は多いけれど、下がる作品はほとんどありません。たいていいきなり水も海もない砂漠の世界になってしまったりします。

 最初に「山椒魚戦争」を読んだときはイヤな気分に。「猿の惑星」とか「トリフィドの時代」と同じで、人間が使役するために育てた存在に人間自身が駆逐される話というのは良い気分ではありません。しかし、それが文明批判でありSFというジャンルの醍醐味ではあるのですが。(09.04.14改稿)

【山椒魚戦争】【カレル・チャペック】【創元推理文庫】【ウォーター・ワールド】【未来少年コナン】【海竜めざめる】【侵略】【怪獣】【滅亡】

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ドラキュラ伯爵―ルーマニア... | トップ | 「蓬莱学園の冒険!」 柳川... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

破滅SF・侵略・新世界」カテゴリの最新記事