付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「万葉と沙羅」 中江有里

2024-06-07 | 本屋・図書館・愛書家
「本は生ものなんだ。いつまでもあると思っちゃいけない。読みたい、と思ったらぼくはできるだけ買う。次に行った時にあるとは限らないから」
 万葉は目が合った本は買えと。

 中学時代に不登校だった一橋沙羅は通信制高校に進む事にしたが、その登校日に幼馴染みの近藤万葉と再会する。だが、万葉の方は知らないふりで素っ気ない。いつも本を読んでいる理由のひとつが「返事しなくていい理由になる」というくらい人付き合いが嫌いだ。
 そんな万葉につれなくされても積極的に話しかけ続ける沙羅だが、もともと彼女だって人付き合いは苦手だし、そもそも人間関係のトラブルが不登校の理由だ。着ている服もゴシックっぽいドール風のドレスにした沙羅は、万葉との再会に高校デビューのすべてをかけていたのだ……。

 本を通じて広がっていく人間関係の中で、自分は何者になるのか、何をしたら良いのか、どう生きたら良いのか試行錯誤を続ける2人の男女の青春ストーリー。明解な結論はないし、登場人物は最後まで迷い続けているけれど、もつれていた糸がほどけ始めて、なんとなく方向性が見えてきたかな……くらいの連作短編集。
 進路や人間関係に悩み続ける高校生向けに書いたというけれど、あまりそれっぽくないので初出を見たら「オール讀物」。確かに納得。「オール讀物」なら確かに載ってそうなカラーです。

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