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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「クール・エール2」 砂押司

2018-10-07 | 異世界転移・召喚
「正しさを理由に、他者を害するならば。同じ正しさを理由に、自身が害されることにも納得しなければいけないのだ」

 生贄として召喚された異世界で、水の大精霊アイザンの後継者となったことで、ソーマは最強の水属性魔導士となった。彼が文字通りの魔王とならなかったのは、アイザンの贖罪とアリスの暖かさに救われたからにすぎない。
 自分と親しくする者を害するというのであれば、ソーマは一国を相手に戦い、滅ぼすことも厭わない。それが「戦争をなくし、不幸な子供たちを救いたい」というアリスの夢を叶えることに繋がり、「この世界から召喚魔法を消し去る」というソーマの目的達成のためになるのなら、なおさら躊躇う理由もないし、それを可能とする力もあった……。

 この世界から戦争をなくす!といって戦う主人公の物語は過去にもいろいろありましたが、中途半端に高い能力しかないとグダグダになってしまって「わざわざ戦争を泥沼にしなくても」とか「やはり個人でできることには限界が」という展開になりそうなものですが、そこは有無をも言わせない精霊力で立ちふさがる不逞の輩を蹂躙していきます。
 そして、最後のウォルの街造りパートは、竜と接触する順番が変わったこともあって、かなりダイジェスト。うーん。ここが楽しいとこなんだけどな、ホワイトクローに仕事を押しつけたり報酬を支払うくだりも端折られているのは、本の構成としては正しいけれど寂しくもあるので、3巻以降、挿話みたいに語られると嬉しいかな。

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「クール・エール1」 砂押司

2018-10-06 | 異世界転移・召喚
「誇れ、アリス。英雄と呼ばれるのはお前であって、俺じゃない。……俺じゃないんだ」
 まだ幼かった妹が行方不明になり、それを嘆いた母も自殺。1人きりで殺伐とした生活を送っていた中畑蒼馬は、ある朝、魔法と精霊の存在する異世界に召喚されてしまった。村の生け贄の代役としてだ。そして、そこで知ったのは、行方不明となった妹も村の生贄として召喚され、既に殺されていたという事実。
 蒼馬は手に入れた力で、妹を殺した村人たちを殺し、村を跡形もなく消し去ると、記憶喪失の超高位魔導士ソーマとして生きることとした。母と妹の死を招いた召喚魔法を消し去るために……。

 すべての水を支配する能力を手にした主人公が復讐の旅に……というか、初っ端でほとんど恨みを晴らしているわけですが、こんなことは繰り返させないとばかりに元凶を叩きに行こうとする話。敵は召喚魔法・異世界紀行って感じ。そんな主人公が完全に闇落ちするのを救うのは、偶然に出会い、一度は殺し合った森人エルフの少女アリス。彼女の純粋にして青臭い理想が、かろうじて、こっちの世界に主人公を引き止める力となります。それゆえの「英雄は俺じゃない」セリフです。
 ウェブ連載時と比較すると、アリスが少し消極的で2人とも淡泊かな。あの朝夕暮れまでぐちゃぐちゃなくだりが少しおとなしくなってます。

【クール・エール1】【砂押司】【霜月えいと】【プライムノベルス】【魔導士となった青年の復讐劇】【召喚魔法】【朝チュン】【小説家になろう】【愛賛】【召喚術】【精霊】
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「トカゲといっしょ(3)」 岩舘野良猫

2018-10-01 | 異世界転移・召喚
「戦は……実際の戦闘よりも、その前準備と後始末の方が数倍面倒で気を使う」
 そのことを弁えている人材は貴重だとアルマヌニア公の次男、ムヒライヒ・アルマヌニアの言葉。

 山岳民との戦争で招集され、アルマヌニア公の陣に加わったハザマたち洞窟衆は、バタス川制圧に参加。攻勢の前面に立つ盾兵に志願したがバジルの能力とハザマのパワーで敵陣を突破、そのまま敵中を本陣めがけて一直線に突き進んだ。
 ハザマはただ、いかに効率よく手柄を立て、面倒事を他人に押しつけるかだけを考えていた……。

 攻勢の成功に「足りねーよ! 全然足りねーよ! 予算も食料も全然足りねーよ!」と怒り狂う兵站担当者。そこから始まる業者との駆け引きが、テレビショッピングというか商店街のたたき売りというか、ドタバタではあるけれど愉しい。
 ただ、ちょい時間の流れがおかしいというか1日が長すぎないかというのが読んでいての感想。捕虜や物資の移動とか、打ち合わせやら交渉があまりにもみっちり右から左に流れすぎている気がします。

【トカゲといっしょ(3)】【岩舘野良猫】【ぴず】【モンスター文庫】【サバイバルファンタジー】【小説家になろう】【兵站計画】【経費削減】【死亡フラグ】【数の暴力】
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「異世界語入門」 Fafs F. Sashimi

2018-09-25 | 異世界転移・召喚
「たいてい異世界転生するような人間はサブカルクソひきこもりで美少女だけ助けるようなジゴロで、殺戮を苦としない一般無能サイコパスと相場が決まっている」

 八ヶ崎翠は気がついたら見知らぬ家の中にいた。どうやら異世界に転移しているらしいのだけれど、前後の記憶がはっきりしないどころか、過去の記憶もほとんどない。
 異世界転生ならチートでハーレムだろうと期待する翠だったが、言語スキルがあるわけでもなく、目の前にいた銀髪の美少女と会話すべく、転移前の世界の知見を総動員して、異世界語マスターに挑むのだが……。

 内乱による混乱が収まらず、市内のあちらこちらで民兵と政府軍の銃撃戦が散発する中、ひたすら文字や単語を拾い出し、過去に学んだあらゆる言語のパターンから類推し、表現を確認していく物語。派手なシーンもないわけじゃないけれど、主人公が言葉が分からないまま右往左往するだけなので、映像化するとすごく地味な通好みの作品になりそう。

【異世界語入門~転生したけど日本語が通じなかった~】【Fafs F. Sashimi】【藤ちょこ】【KADOKAWA】【L-エンタメ小説】【異世界語習得ストーリー】【インド先輩】
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「異世界修学旅行DX」 岡本タクヤ

2018-09-12 | 異世界転移・召喚
 『異世界修学旅行』の本編ではなく、読売中高生新聞に掲載された、毎回1つのテーマをお題に登場人物たちが雑談を繰り広げるウダ話集な外伝短編集。すごく分厚くて、本編の倍くらいあります。

「おぬしが先ほど言うたように文学そのものの定義とはあやふやなものなんじゃろう。じゃが、戯曲とは、俳句とは、小説とは--と個別に一定の定義が可能なように、ライトノベルというのもまた、なんらかの定義づけは可能なのではないか?」
 プリシラ王女の宝田への問い。
 作者の数だけ、そして読者の数だけライトノベルがある……と逃げているけれど、そもそも論に戻れば簡単な話なんよ?

 そもそも1980年代にニフティサーブの掲示板で、ソノラマ文庫やコバルト文庫みたいに、表紙イラストにマンガ絵やアニメ絵を採用した若者向けの文庫本を「ライトノベル」と呼ぼうと、新たな言葉を作り、その内容ではなくパッケージの区分として定義されているのだから、それ以上でも以下でもないのです。それをライトノベルという言葉だけ聞きかじった半可通が、勝手に汎用性のない独自解釈を広めたから混乱しているだけなのです。新たな定義をするなら、山ほど例外が出たり、1年ごとに再定義が必要なものにしちゃいかんです。
 そんな「オレの考えた、最強のライトノベルの定義」みたいなものがいくらでも出てくるあたりは、いかにも中高生がメインターゲットのパッケージらしくありますが。

【異世界修学旅行DX】【岡本タクヤ】【しらび】【ガガガ文庫】【異文化コミュニケーションコメディ】【読売中高生新聞】
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「異世界おっさん道中記」 坂東太郎

2018-09-04 | 異世界転移・召喚
「異世界、かあ。楽しいっちゃ楽しいんだけど……トイレもアレだし衛生観念もアレだし不潔だし虫は出るしマジで危ないし娯楽は少ないし美味いメシは高いしメニューは少ないし」

 ある朝、目を覚ましたら異世界に放り出されていた高校生、孫乃悟ももう30歳。一度は冒険者となり、帰る方法を探してダンジョンを攻略していったが、それでは帰れないことが分かって冒険者は廃業した。彼のチートスキル【分身術】は、装備もレベルもそのままに分身できるが、最後にはその分身の痛みも苦しみも疲労も全部本体に復ってくるので辛いのだ。分身が死んだ日にゃ。まさに死ぬ苦しみである。
 幸いにも、読み書きはできたし、高校程度の数学能力があれば文官仕事には十二分で、小役人として王宮に勤めること10年。それなりに満足できる生活だったが、突然に下された辞令は、8歳の王女とその護衛だけを道連れに、遙か東の島国、日の本の国に向かえというものであった。
 過去10年に100組1000名の使者が遣東使として派遣されたが、無事に帰還したのはただ1人という旅である……。

 主人公の名前とか武器とかスキルで分かるように、お供にオークと人間のハーフがいて白馬に変化する龍が仲間に加わるように、古来何度も映像化やコミック化やら二次創作やら翻案やらされていたアレのリメイク版。それがちゃんと巧く換骨奪胎できているのは見事。あの八戒を破りまくっている娘は一度思いっきりぶん殴っても許されるかと思いますが。

【異世界おっさん道中記】【小役人の俺がお姫様と行く死亡率99.9%の旅】【坂東太郎】【東西】【MFブックス】【のんびり異世界ぶらり旅】【スープパスタ】【スペアリブ】【チーズフォンデュ】【ウォシュレット】【いのちだいじに】【異端審問官】【金角銀角】【ろうそくの火】【混浴】
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「タタの魔法使い」 うーぱー

2018-08-23 | 異世界転移・召喚
 2015年7月22日12時20分。弘橋高校の教師生徒全員が校舎ごと消失。やがて、校舎は再び出現したが行方不明者は200名を超えていた。帰還者たちはいずれも、異世界の魔法使いタタを名乗る謎の女性によって異世界に連れ去られたと主張したが、その証言は脅迫による偽証、あるいは心神喪失による妄言として公式記録としては扱われなかった。
 その公立高校消失事件「ハメルンの笛吹事件」の全貌を関係者の証言によって記録したのが、本書である……。

 古くは『アンドロメダ病原体』『ワールド・ウォー・ゼット』、最近では『GODZILLA 怪獣黙示録』『巨神計画』で使われたオーラル・ヒストリー風フィクションの体裁で書かれた異世界冒険譚。ライトノベルとしては初めてかな。
 異世界に召喚された高校生や教師たちが願ったチート能力を手に入れるけれど、その願いが過去の卒業文集からピックアップされるとか、異世界召喚ものとしては最悪のギフト方式。異世界召喚の理由としては最低な動機の1つ。
 こういう学校ごととかクラス単位で異世界召喚される話だと内部分裂とかスキル強奪とか定番ネタの1つだけれど、本当にろくな説明もなく突然召喚されるので、そもそも分裂どころかまとまることもできずに各個撃破で雲散霧消していく序盤は熾烈。サバイバルものとしては正統にして王道。生ぬるい「俺ツエー」展開に食傷気味な人には特にお勧め。
 最終的な帰還者たちの視点からすればハッピーエンドだけれど、それまでに周囲で犠牲になったものを考えると手放しで喜べないなあと思うあたり、名前がついているかいないかのチョイ役にも感情移入しがちな自分には辛い本でした。面白かったから、続巻も買うけど……。

【タタの魔法使い】【うーぱー】【佐藤ショウジ】【電撃文庫】【過酷な異世界サバイバル】【異世界ドキュメント】【中学校の卒業文集】【第24回電撃小説大賞】【変身ヒーロー】【魔法少女】【ドイツ軍人】【F1レーサー】【医師】
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「数学で救う! 弱小国家」 長田信織

2018-08-21 | 異世界転移・召喚
「おっぱいはひとりでこっそり見るほうが嬉しい」
 この言葉が形を変え、終盤でリフレインされるとは思う余地もなかったのである。

 小国ファヴェールは存亡の危機に立たされ、病気の王に代わって指揮を執るソアラ王女は頭を抱えていた。周辺を軍事大国に囲まれ、今まさに血船王エイベル率いるオルデンボー王国が攻め込まんばかりになっていた。しかし、臣下たる諸侯は彼我の戦力非も考慮できず、戦はやってみないと分からないと正面決戦を志向するばかり。
 そんな王女の前に姿を現したのは、現代日本から異世界転移してしまった数学者のナオキだった……。

 数学理論で戦略を練る異世界戦記。理論や理屈だけで戦えると思うなよという部分はきっちりちゃぶ台返しを食らうけれど、それでぐちゃぐちゃになった状況を立て直すのもやはり数学理論なのだ。
 荒唐無稽で強引な無双によるハッピーエンドではなくて、ストーリーの流れそのものはオーソドックスで、つまりは小国にとってシビア。けれど、しっかり足場を固めて終わるので、雨降って地が固まるので今後に期待……という読後感。設定がきちんとした仕事をしていて、印象的な単語や台詞は形を変え、語り手を変え、再登場するあたりの面白さも好き。

【数学で救う!弱小国家】【電卓で戦争する方法を求めよ。ただし、敵は剣と火薬で武装しているものとする。】【長田信織】【紅緒】【電撃文庫】【異世界数学戦記】【おっぱい方程式】【数学は、時を超える】【タカハト理論】【囚人のジレンマ】【ミニマックス戦略】【酒保商人】【無限繰り返しゲーム】【傭兵隊】【輜重隊】【数学は宇宙共通語】
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「図書室のドラゴン」 マイクル・カンデル

2018-08-11 | 異世界転移・召喚
「状況は深刻。この冒険は戦争なのだ」

 16歳の高校2年生、シャーマン・ポッツは来るプロム(学年末のダンスパーティー)にペアを組むことになったでぶのクララのことで悩んでいたが、気がつくと別世界の図書室に転相してしまっていた。その魔法の図書室で本を読めば、実際に物語のなかにはいりこんで冒険ができるのだ。
 現実世界の憂さを吹き飛ばせとばかりに、シャーマンはさまざまな本を試して、悪の組織みたいな姑息な手段で人類社会に害をなすドラゴンを退治する騎士になったり近未来のニューヨークで悪の超能力者と戦う捜査官になってみたり……。

 さまざまな世界を渡り歩いてドラゴンを退治しながら、エロ本を探し回る高校生の思春期小説。
 ネタそのものは最近のウェブ小説にもありそうだけれど、最初にあらすじの「ある日、ため息を23回ついた拍子に、なんと別世界の図書室に転相してしまった。」というくだりを頭に入れて読み始めないと、説明なしに複数の世界での冒険が次々に切り替わるのに気づかず混乱。理解していても、本当に世界間移動しているのか単なる妄想なのかも定かではありません。ちょい読みづらい。今のウェブ小説なら、読者からいろいろ叩かれるだろうなあ。

【図書室のドラゴン】【マイクル・カンデル】【坂田靖子】【ハヤカワ文庫FT】【ユーモア・ファンタジー】【ドクター・ストレンジ】【日本のロボット呪術医】【アフリカの王女】【プロム】【時間魔女】【超能力悪鬼】
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「異世界のんびり農家03」 内藤騎之介

2018-08-04 | 異世界転移・召喚
「コミュニケーション不足です!! こんちくしょうっ!!」
 誰にも悪意がなくても、意思の疎通に齟齬が生じて戦争が起きることもある。

 死の森のど真ん中の大樹の森も着実に住人が増え、ルールーたちにも子供が生まれて賑やかになっている。
 そんな中、巨人たちの洞窟につながった迷宮の、そのまた奥で不吉な気配のする黒い巨岩が発見された……。

 農具が槍になるのはおかしいと、それだけが気になっていたけれど、逆だったのか。農具が槍になったのではなく、槍が農具になったのね。それなら納得。
 今回も楽しく読めて、読み応えたっぷり。本作りがあいかわらず丁寧なのが嬉しいですね。

【異世界のんびり農家03】【内藤騎之介】【やすも】【エンターブレイン】【ほのぼのスローライフ・ファンタジー】【万能農具】【温泉】【餅つき】【恵方巻き】【交易】【滑走祭】【第2回武闘会】【死霊王】【競馬場】
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「誰にでもできる 影から助ける魔王討伐4」 槻影

2018-08-02 | 異世界転移・召喚
「正義の名の下にあらゆる悪徳は許される」
 教会が予算をくれないので、自分は使命を果たすために最善を尽くしているとアレスは自負している。

 まだまだレベル上げは不十分だけれど、魔王軍の標的になった現状では一刻も早い戦力のかさ上げが必要と、聖勇者・藤堂直継とその仲間たちは、水の大精霊と契約すべく水の都レーンへと向かうことになった。しかし、水の大精霊は高度な魔術を使わねば到達できない海底の神殿に居り、そもそもポンコツ勇者の一行が到達できるはずもなかった。
 そこで勇者一行を影からサポートする僧侶アレスは、海中への移動手段の確保から障害となるであろう海魔の掃討まで大忙しとなるのであった……。

 勇者は勇者なりに頑張っているのだろうけれど、力不足とは如何ともしがたく、本人が直接魔王軍と戦った方が早いんじゃないかという僧侶アレスが予算不足の中、獅子奮迅でお膳立てして回る異世界冒険譚。今回は水着回でイラストもたっぷりだけれど、人魚のしっぽが1枚も写ってないなー。

【誰にでもできる 影から助ける魔王討伐4】【槻影】【bob】【エンターブレイン】【カクヨム】【人魚アーマー】【マーマン】【海底決戦】【ボーパルラビット】【首狩り】
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「ひとりぼっちの異世界攻略2」 五示正司

2018-07-28 | 異世界転移・召喚
「笑ってお迎えしに行かないといけないんだから、私達はみんなで」
 これ以上誰1人欠けても駄目なのだと委員長。

 いびつなスキル構成のため、遙はどれだけ戦って経験値を稼いでも、レベルはちっとも上がらない。敵の攻撃がかすったら、その瞬間に死んでしまうような遙には、ダンジョン進入の許可どころか冒険者登録の許可も下りない。
 それでも好感度を上げるアイテム欲しさに、勝手に最古の大迷宮に行ってしまった遥をクラスメイトたちは心配して追いかけるが、彼女らの目の前で遥はトラップに引っかかって迷宮最下層にまで転落してしまう。
 最高踏破階が43階、最深部が推定100階という最下層に向けて、委員長が指揮する女子高生たちは救出に向かうのだが、立ちはだかる魔物の数は多く、強敵ばかりだった……。

 いきなり迷宮最下層で、すべての迷宮を支配するという滅びの帝王と対峙する主人公と、彼の救出に向かう委員長たちの探索行の2サイドで語られる迷宮譚で、「心配しても仕方がないぞ」「心配すると馬鹿を見る」と言い合いながら遮二無二下層めがけて突進していく委員長たち。
 ぶっちゃけ大森林からあふれ出る魔物のスタンピードは前座の前菜。迷宮は下から攻略される想定ではできてないんだよ?みたいな。
 
 最弱にして最強、強欲にして無欲、論理的にして論理破綻、博覧強記にして狂気という、主人公についていけない読者もいそうだけれど、主人公視点の合間に他の者の視点が入るからこそ面白いし、何が起きているか把握できるという読み込みが必要な物語。遥の答弁に委員長が通訳として引っ張り出されるのが、お約束になりつつあります。
 イラスト的にはジト目の甲冑委員長が見たかったです。

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「10年ごしの引きニートを辞めて外出したら (5)」 坂東太郎

2018-07-12 | 異世界転移・召喚
 バリア修復の手がかりを探す過程で、元の世界に戻れる可能性が出てきたユージたちは、旅で知り合った仲間や日本にいるネット掲示板住人の力を借りて実験を開始。どうやら、産地が同じ物品であれば送り返せるというところまで到達した。
 しかし、喜ぶ従妹のヨーコに対し、ユージは団長になった開拓地や冒険した仲間たちを残し、還ってしまっていいのかとひとり考えていた。それに自分はもう人殺しなのだ……。

 オリジナル展開で、ウェブ版より短く切り詰めての5巻完結。うまいこと、適当な巻数でまとまったなと思いました。
 とはいえ、結局、掲示板の住人たちの出番が掲示板のみで終わって残念。ニートが異世界に転移して右往左往する話も、異世界に飛ばされた人間が元の世界とインターネット経由でいろいろ情報や物品を取り寄せる話も他にいくらでもあるけれど、異世界に飛ばされた日本人を救おうとネットの掲示板で知恵を出し合っていた同じようなニート集団が、事件をきっかけにニートを辞めて外出し、人と人との関係を強化して新たな道に踏み出す閑話はありませんでした。
 書籍化にあたって切り詰めるなら、むしろ異世界のユージのパートだったと思いました。ユージの異世界冒険と、掲示板の住人のおっかなびっくり現代日本での旅と、どちらが面白かったかといえば後者が好きですから。なにより、ユージが冒険者と商人に連れられ、森の奥から街まで出かけるのも冒険ですが、何年も引きこもっていた男がたかだか徒歩で往復1時間かけて夜中のコンビニに出かけるのも冒険だった……というウェブ版ならではの視点が面白かったんです。

【10年ごしの引きニートを辞めて外出したら (5)】【自宅ごと異世界から転移する?】【坂東太郎】【紅緒】【オーバーラップ文庫】【快適環境で異世界交流する@ホームコメディ】【小説家になろう】
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「異世界のんびり農家02」 内藤騎之介

2018-07-07 | 異世界転移・召喚
「大事な話だ。率直に聞く。ゴードン。お前たちは、他種族との交配は可能か?」
 別に女の子は嫌いじゃないけれど、村に女性ばかり増えてしまうのは困るので、どんな種族でも良いから独身男性に来て欲しいのだ。

 吸血姫ルーがヒラクの子を産み、天使のティアも妊娠中。村の住人もかなり増えていて、男性も何人か加わっているが、獣人の男はまだ子供で、リザードマンは他種族の異性に興味がなく、エルダードワーフは「ロリコンではない」ので髯の生えていない女に興味はないという。ヒラクの夜はあいかわらず忙しく、つてを頼っての移住者探しはやめられない。
 やっと新たな移住希望者が見つかったのだが、今度は逆に予定の3倍を超える数の難民が、既に大樹の森に向けて移動開始しているという。ヒラクは慌てて開拓村の拡張に動き出した……。

 登場人物の急増に合わせて、巻末に人名辞典を掲載した安心設計。かゆいところに手が届く親切な本造りがされてます。
 ほんわかのんびりした小さな村だけど、敵に回したら国の1つや2つは簡単に滅んでしまいそうなのに、村長にはあまり自覚がなく、村を訪れた人が気を失ったり服を何度も着替えるのを軽くスルーしている怖さ。本人は前世のままの普通の人間のつもりなので、自分がたいして怖くもないものは他人にもたいして脅威じゃないと思っちゃうんですよね。
 ヒトばかりでなく、蜘蛛も狼も繁殖しまくって、たいへんなことになっていますが。

【異世界のんびり農家02】【内藤騎之介】【やすも】【エンターブレイン】【ほのぼのスローライフ・ファンタジー】【万能農具】【鉄腕DASH】【小説家になろう】【武闘会】【報償メダル】【水車】【ダンジョン探索】【始祖】
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「異世界のんびり農家01」 内藤騎之介

2018-07-06 | 異世界転移・召喚
「落ち着いたら、あの42人も俺の寝室に来るのだろうか」
 村も少しずつ住民が増えてくるが、なぜか移住希望者はすべて若い女性ばかり。こんな森の奥まで逃れてくるにはそれなりの訳ありで、戦に巻き込まれて男は残って最後まで戦ったからとかいう事情があったりするわけだけれど、村でただ1人の男としてはせめてもう何人か男性が欲しいとヒラクは思わないではいられない。

 街尾火楽は39歳で病死した。良いこともない人生で、ブラック企業で酷使され、病院で10年近く闘病しての死だ。
 そんな彼に異世界で人生をやり直しさせてやろうという神様に、ヒラクは願った。今度の人生は、健康な体で、人のあまりいないところで農業をやって生きてみたいと。
 彼が送り込まれたのは森の中。死の森と呼ばれ、普通の人間なら兵士や猟師でも1時間も持たずに死んでしまうであろう、魔獣の跋扈する土地だった……。

 健康な体にしてもらった男が、人の住めるはずもない危険な密林の真ん中に住居と畑を作り、そこに人が集まり、次第に村が大きくなっていく物語。最初120ページほどは、ひたすら住居を作り、畑を耕し、やってくる獣や魔獣を相手にする日々。文字通りののんびり農家。普通にチートでハーレムになっていくわけですが、この序盤の農作業の日々が溜になってます。
 本の作りも丁寧で、表紙を開くとまず野菜。そこの仕掛けにどっきり。章ごとに村が大きくなっていく様が地図で記され、イラストもきちんと見せ場を押さえている安心設計。良い仕事してるわー。
 ウェブ版は携帯小説みたいな単文が続く、主人公のモノローグと会話文中心の構成で、これ、文章としてどうかなあ?と思わないでもなかったけれど、その時点で400話以上ある話をもう1度読み返し始めた時点で「ああ、この話は面白いし、自分は好きなんだ」と確信し、買いに走って正解。ただ、あえていうなら「槍は農具じゃない」と思うんです。せめて熊手かピッチフォーク、もしくはスコップにしとけよと。

【異世界のんびり農家01】【内藤騎之介】【やすも】【エンターブレイン】【スローライフ・農業ファンタジー】【万能農具】【口減らし】【鉄腕DASH】【小説家になろう】【お風呂】【塩】
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