頼子百万里走単騎 "Riding Alone for Millions of Miles"

環境学者・地理学者 Jimmy Laai Jeun Ming(本名:一ノ瀬俊明)のエッセイ

1990年代半ばにおける予測(Ichinose and Yasui, 2004)

2023-11-30 00:30:20 | 日記
2010年
京都会議で決められた日本の温室効果ガス削減目標は結局達成不可能となる。
ダイオキシンなどの化学物質によるものと見られる遺伝子異常・生殖異常が多発。
紫外線は確実に強くなっている。皮膚ガンなどの影響が白人種を中心に見えている。
世界的な食料供給危機が到来。温暖化のためではなく、むしろ米国、中国、ロシア、オーストラリアが同時に低温になったため。異常気象かもしれない。

一ノ瀬の見解
IPCC AR6に「温暖化を2℃より低く抑えることが更に困難になる」とあり、世界的にも当たっている。
京都メカニズムで採用された柔軟化措置の多くを利用し、森林による「吸収源」を増やすことで日本はCOP3時点の目標を「達成」するも、二酸化炭素排出量自体をマイナスにすることは叶わなかった。予測を難しくした背景としては、リーマンショックの影響(プラス)や東日本大震災に起因する原発事故(マイナス)の影響があった。
一方、緩和に対処する政策および法律はAR5以降一貫して拡充してきており、2014年度から温室効果ガス排出量が減少し始めた。しかし2030 年までに 46%の削減(現在の政府目標)を達成するのであれば、サーキュラーエコノミーの促進や、使い捨てプラスチックの使用量削減などに急速に取り組む必要がある。
現時点では、ダイオキシン類が原因であると考えられる遺伝・生殖異常が多いとの報告は見当たらない。法規制・焼却施設の整備や産官学の連携による調査研究と技術開発などを行い、適正処理を推進してきたため、総排出量は大きく減少してきた。
フロンガス規制やリサイクル関連の法整備なども進み、オゾン層の破壊は回避できた。2050年頃に南極のオゾン層は1980年レベルに回復するとの予測がある。
一方紫外線は緩やかに強くなる傾向にあり、メラノーマの発生率も年々上昇している。高齢化によるリスク上昇の影響もあると思われる。
気候変動対策の一つとして、動物性食品を減らす動きもみられるが、代替品として使われる穀物も気候変動による影響で今後生産量が減少するのではないかと予測されている。
2010年代においては顕著な世界的食糧危機は生じなかったものの、パンデミックとウクライナ戦争を主な背景として、食糧不安が生じている。
アメリカ、中国、ロシア、オーストラリアにおいてはいずれも平均気温が上昇傾向にあり、4か国が同時に低温になった事象は観察されていない。
2010年前後において、国際食料価格は高い水準にとどまった一方、金融危機によって引き起こされた所得低下は食料入手に悪影響を与え、世界の栄養不足の割合をさらに上昇させることになった。とりわけ農地利用による土地の劣化と気候変動が影響を及ぼしている。食糧生産ではなく食糧供給システムの問題で、経済的弱者がリスクにさらされている。また、紛争やコロナウイルス流行のような経済的ショックによる影響もある。
食品ロスの改善、畜産・食肉の見直し、そして紛争地域の経済基盤を整える、といった社会基盤の変革が必要となっている。

2020年
原油価格が急騰する。エネルギー危機到来。第一次石油ショックほどではないが、着実にエネルギーの価格が上昇。これによりエネルギー源を石炭に依存し始めたために、酸性化が進む。同時に、バナジウム、マンガンなどの排出量が増加している。

一ノ瀬の見解
2020年前後に始まったというわけではないが、現実はこうなっている。円安の影響もあり、2022年現在日本社会はこの問題に直面している。石炭への一時的な回帰は、2011年の東日本大震災・原発事故に起因する電力不足への対応にはじまる。最近ではこれらにウクライナ戦争の影響が拍車をかけている。
化石燃料資源の残余年数は年々伸びていたり、なかなか減少しない背景として、アメリカにおけるオイルシェール(石油成分を含んだ頁岩)利用技術の進歩などもある。再生可能エネルギー(バイオマスや太陽光発電など)も徐々に増えてきているが、設備投資や原料としての穀物の供給(気候変動の影響を受けやすい)など、リスク要因も少なくない。
また予測当時、海外出張の大幅削減も予想されていたが、想定外であった感染症の拡大や、テレワーク環境の整備により、ここ数年ではそのようになっており、今後は回復していくものと予想される。一方、円安の影響により、今日海外出張のコスパは低下している。

Ichinose, T., I. Yasui : (2004) FUTURE SCENARIOS: PREDICTING OUR ENVIRONMENTAL FUTURE. in Regional Sustainable Development Review: Japan, [Eds. L.D. Kiel], Encyclopedia of Life Support Systems (EOLSS), Developed under the Auspices of the UNESCO, Eolss Publishers, [http://www.eolss.net]
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