頼子百万里走単騎 "Riding Alone for Millions of Miles"

環境学者・地理学者 Jimmy Laai Jeun Ming(本名:一ノ瀬俊明)のエッセイ

大宮知信(1987)「さよなら、東大」(文藝春秋)

2020-05-30 04:18:54 | 日記

修士のころ、とある団体で定期的に新刊書の書評を担当していたが、さすがにブチ切れて著者にクレームしようと準備した長い原稿を発掘。今読むと「青い」が、30年以上ぶれていない思いもある。
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東大生協の学生生活実態調査によれば、東大生の親の年収分布は600万以下と1000万以上の双峰となっている。一口に「東大生の親の平均年収が850万円」といっても、このゾーンの世帯数は落ち込んでいる。小生の友人には、親からの仕送りゼロ(年収600万以下で仕送りするのは厳しい)で、質素な学生寮住まいをしながら苦学している連中も少なくない。故に「恵まれすぎている」という議論は、一般的大学生の水準以下の生活を余儀なくされている50%近くの学生を見ていないものだ。
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時は巡って今度は自分自身が「親」の立場になった。当時の850万円が長男進学時の850万円であるはずはない。かみさん任せなのでいくら仕送りしたのかは小生自身も知らない。派遣留学の残金が学資保険とかになっているので、2年下に私学に行った長女もいるが、経済的に困ったということはなかったはず。小生がもらった修士の奨学金(160万円程度)にも申請せず。フランスでキャッシュカードが使えず立ち往生しかけた時も、長男(修士課程在学)が5万円緊急送金してくれた。かみさんに頼んでいたら振り込め詐欺認定で本当に立ち往生したかも。家賃相場は30年間で意外なほど変わっていないが、「不良物件」は淘汰された。教育産業のアルバイト単価はどうか。小生はマックスで時給3500円くらいだったが、長男は5000円くらいだったろうか(扶養の非課税証明もらいにいったら課税証明が発給されて焦った)。かみさんの家計采配がすごいのかもしれないが、当時の親(まだ学年主任くらいだったか)の苦労も実感できる。学費は半期10万8千円だった。苦学生にはこれでも高かった。今の学生も親もその意味では大変だ。進学率は上昇したが、世帯収入分布は「先祖返り」。行く必要のない人まで安易に進学すべき時代ではなくなっている。

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