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アメリカの小学生が読むアメリカ史 そして日本のアメリカ史研究入門のいくつか その4

2015年08月26日 | オリバー・ストーン、ピーター・カズニック

                      ▲『アメリカの小学生が読む歴史教科書』 2005年 Japan Book 定価1500円+税

 

 

アメリカの小学生が読むアメリカ史 そして日本のアメリカ史研究入門のいくつか その4

 

今回は、その4 原子爆弾

アメリカの小学生(高学年)が学ぶ歴史教科書には「原爆投下」はどのように書かれているのか? 

「1930年代に科学者はウラニウム235のような重い元素の原子核を分裂させると、信じられない量のエネルギーが発生することを発見しました。科学者たちは、この新しい形態のエネルギー軍事目的で使う方法に取り組みました。かつて存在したいかなる武器よりもずっと威力もある「超強力爆弾」を開発しようとしたのです。」

「アメリカの科学者たちは、ドイツが最初に「超l強力爆弾」を開発するのではという危惧もあって、この計画に熱心に取り組みました。1945年7月、ニューメキシコ州の砂漠で初の原子爆弾爆発しました。ふつうの爆発物の1万3000トンに相当する威力でした。」

「砂漠中が急に太陽よりも明るい光で、溢れました。そして強力な地震が起こったかのように地面が揺れ、ハリケーンのように強い風が、砂漠を突き抜けたのです。」

「この爆発で、膨大な量の極めて有害な放射線が放たれました。科学者たちは、巨大な雲が、空高く上がり、マッシュルームの形になるのを見ました。爆弾の巨大な破壊能力に、科学者の一人は、ヒンズー教の教典の一節、「我は死に神、世界の破壊者となるのだ」という言葉を思い起こしました。」」

 

ヒロシマ、ナガサキ、日本の降伏

「ドイツが敗北したにもかかわらず、日本は降伏を拒み続けていました。あらゆる戦線で敗北を喫した日本は、中国と東南アジアで征服した領土から撤退していました。しかし、以前として本土には200万の兵士がいたのです。日本の民間人も、侵攻に抵抗するために武装していました。」

「トルーマン大統領は日本人が死ぬまで戦うよう訓練されていることを知っていました。また日本に攻め込めば、多くのアメリカ人が犠牲になると確信していました。ですから、日本に降伏させるために2発の原子爆弾を投下するよう命じたのです。」

「1945年8月6日、最初の爆弾が広島市に投下されました。巨大な火の玉の1度の閃光で、8万人もの人が一瞬にして亡くなりました。」

「火薬や放射能の影響で、何万人もの人があとで亡くなりました。市の大部分は消失してしまいました。」

「広島の爆撃のあとでさえ、日本政府はアメリカの要求する降伏を拒否しました。3日後には、2発目の爆弾が投下されました。今度は長崎市です。」

 

「ここにきてやっと、国中が破壊されるのを、恐れた日本政府は、連合国に降伏を承諾しました。」

「第2次世界大戦は終わりました。6年にわたる戦争で、世界中で約4000万の人が命を落としました。世界史上もっとも過酷な戦争の1つが、恐るべき新兵器によって終焉を迎えたのです。」

 『アメリカの小学生が読む歴史教科書』 (220~223頁)

 

以上が、アメリカの小学生(小学高学年)が読む、教科書の中の原爆投下の記述。

このあと、アメリカの小学校教科書は「超大国のにらみあい」、「トルーマンドクトリンとマーシャル・プラン」、「冷戦」、「軍産複合体と核兵器開発競争」、「マッカーシズム」とつづくのである。

日本では、中学校以上にならないと出てこないような、「軍産複合体」なども、朝鮮戦争の記述前に習うようになっている。これは、アメリカの現代史では欠かせないものになっているようだ。

ある意味では、「アメリカの持つ特別な世界史的役割」を子供のころから把握させようというねらい(プロパガンダ?)なのかも知れないのだが。

                           ・

第2次世界大戦の死者を、4000万人としているのだが、それでは、世界戦争を戦ったドイツや、イタリアや、日本などの枢軸国と、連合国側のソ連、アメリカ、イギリス、フランスなどの国別の死者や被害の内訳がないのが、この本の読んだ最初の感想。

第2次世界大戦の国別死者数が、最近の欧米の一般的概説書で、トーンダウンして、あたかも隠されているかに見えるのは、私の錯覚だろうか?

第2次世界大戦後直後のリベラルな知識人は、世界大戦でのソ連や中国などの死者数が、1000万人を越えていると考えられていることに深い関心を寄せていたこと、またアメリカや、イギリス、フランスなどの連合国の死者が、数十万の単位で収まることもよく知っていたのだが。第2次世界大戦の舞台と、その被害は、主にヨーロッパでは、独ソの戦いを中心とする欧州東部を巻き込んだ戦い、アジアでは日中の戦いや沖縄戦、東南アジアの民衆を巻き込んだ戦いが凄惨な現実であったことを理解していたと思うのだが。

 

 

つづく

 



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