讃岐うどんやラーメン食べ歩きと、旅のブログ

讃岐うどんの食べ歩きが好きです。また国内・海外問わず旅が好きなので、ぼちぼち書いていこうと思います。

夏の怪談3 「小笠原の怪」

2013-08-03 20:00:00 | 日記
 これは事実に基づく話である。信じるも信じないも、あなた次第である。

 小笠原に初めて行ったのは、もう20年以上前のことである。小笠原に飛行場はない。竹芝桟橋から「おがさわら丸」で丸一日かけて行ったのである。GWの小笠原丸は、難民船状態である。二等船室は、人一人が横になるスペースも貰えない。床に毛布が敷いてあって、自分の番号の所に陣取るのである。横になると、隣の人と肩が触れる。足を伸ばすスペースもない。知らない人の足と足を交互に入れるように横になる。つまり、自分の膝あたりまで、人の足がくるのである。まさに難民船と呼ぶにふさわしい船旅だった。しかし決して安いわけでは無かった。

 最初に行ったとき、ある浜に泳ぎに行った。仮にA浜と呼ぶ。遠浅になっており、水は透き通り家族連れも沢山いた。沖に行くと急激に深くなっている所があるらしい。つりをする人も多いと聞いた。小笠原は1月1日が海開きである。つまり一年中泳げるのである。

 あまり報道されないが、小笠原では海難事故が多い。観光客が溺れて死ぬこともあると聞く。潮の流れが速いので、あっという間に沖に流される。流れに逆らって戻ろうとしても戻れない。そのうちに力尽きて沈んでしまうのである。そんな時の生き残る術は、黙って浮いていることだそうだ。地元の人に聞いたが、半日浮いていられれば元のところに戻ってくるらしい。その人も一度流されたが、半日後に戻されて助かったと言っていた。パニックになると助からない。そのほか、観光客がシュノーケル中に溺れて死んだという話も聞いた。

 第一回目の小笠原では、別に何もなかった。綺麗な海を堪能して帰ったのである。

 それから5年くらいたって、再度小笠原を訪ねた。その時は9月くらいだったので、観光シーズンは過ぎており、比較的ゆったりと滞在できた。レンタバイクを借りて、島中を走り回っていた。

 ある日、以前に行ったA浜にもう一度行ってみた。あれだけいた人が誰もいなかった。バイクを駐めて、一人で海に入っていった。前の通り遠浅だったので、ずんずん沖に向かって歩いていった。いつまで行っても、海面は腰くらいまでだった。

 あれ、海が濁っている。海砂が舞い上がっているのかな?

 水中マスクをつけて、海中を覗き込んだ。魚がいないし、透明度も悪い。前回と大違いだ。

 ふと、いやな気分になった。何故だが分からない。

 これ以上、沖に行くなと言う声が聞こえたような気がした。



 急に悪寒が走った。風邪か?

 陸に向かって、引き返し始めた。何故か、どんどんいやな気が大きくなってくる。怖くなった。気がついたら、陸に向かって走っていた。陸に飛び上がり、バイクにまたがって宿に向かった。

やど「おかえり~、どこに行ってたの?」
N村「A浜ですけど、すぐに帰ってきちゃいました」
やど「えっ、A浜行ったの!大丈夫だった?」
N村「いゃ、なんかちょっと変だったんで」
やど「あ~、そうなの、A浜行ったの~」

 めちゃめちゃ気になったので理由を聞いてみた。

やど「去年ね、あそこで若い女の人が溺れて亡くなったんだよ。沖の方に行くとね、海中に釣り糸とか残っていて、絡まっちゃったりするらしいんだよね。泳ぎの出来る人が沖に行っちゃうから、溺れるんだよね」
N村「えぇ~」
やど「で、それから出て困っちゃってね。もぅ、みんな見るんだよ」
N村「まじっすか」
やど「それで、内地からお坊さんを呼んで、お祓いしてもらったんだよ」
N村「まじっすか」
やど「で、どうにか落ち着いたんだけど。そうか~、A浜行ったんだ」

 自分は霊感があるわけではない。どちらかと言うと、鈍感な方だと思うのだが、その日は「沖に行ってはいけない」と強く感じた。不思議な体験だった。


 

 
コメント
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