「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和五年(2023)2月9日(木曜日)
通巻第7627号 <前日発行>
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
その後のアフガニスタンに強力にアプローチする国がある
タリバンをテコ入れする中国の狙いとは何か?
**************************************
アフガニスタン。2021年8月15日にタリバンが首都カブールを制圧した。バイデンが無様な撤退をしたからである。
爾来、タリバンは国際的に孤立し、国内では反政府のテロ組織ISIL─K(イラク・レバントのイスラム国・ホラサーン州)による過激な爆破テロが頻発している。
タリバン政権を承認したのはサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、パキスタンの三ケ国と国際社会が認めない「チェチェン・イチケリア共和国」だ。
タリバン政権は国連でも承認の議論はない。国際連合のアフガニスタンの代表権は「旧北部同盟」である。
在アフガニスタン日本国大使館は、2021年8月15日をもって閉館。23年2月現在、在カタール日本国大使館内に臨時事務所を設けている。
首都カブールをはじめ、全土において「ISIL─K」がシーア派住民や外国関連機関、民間人等を標的としたテロ、あるいは身代金目的の誘拐が多発している。タリバン政府の統治は全土の90%くらいだろう。
この隙間を衝いて中国はアフガニスタンへの浸透を強めた。
中国はタリバンがETIM(東トルキスタン独立運動)のアフガンからの追放に協力的なので、ドローンなどの武器供与の構えを見せている。
米国は2001年911テロで中国にも協力をもとめるためにETIMを『テロ組織』と認めたことがあったが、トランプ政権で、この指定を削除している。
2021 年 7 月、中国はタリバンの代表団を天津に迎え、王毅外相(当時)が応接した。まっさきに提示した条件は「ETIM がアフガニスタン国内で反中国活動を行うことを許可しないという保証」を求めた。
中国のアフガニスタン政策は第一にこのETIMへの取り組みであり、第二に中央アジアとパキスタンにおける「一帯一路」プロジェクトを保護することだ。
中国政府はタリバンを正式に承認していないが、カブールに大使館を運営している。双務的にタリバンの代表者が北京のアフガニスタン大使館使用を許可している。事実上の外交承認である。
▲中国の狙いは銅鉱山と石油採掘
中国はすでアフガニスタンのアイナク鉱山など鉱業とエネルギー資源開発に投資しており、またタリバン政権はCPEC(中国・パキスタン経済回廊) がアフガニスタンに延長される可能性を受け入れている。とはいえパキスタンのパロチスタン州は反中国であり、すでにグアダール港の開発は頓挫した。
1月5日、中国企業は推定8700万バレル相当の原油を含む、アフガニスタン北部のアムダリア盆地での石油採掘契約に調印した。また2008 年に契約を結んだ アイナク銅鉱山での採掘作業再開も望んでいる。採掘作業における安全の確保が前提条件である。
十年前の『日本経済新聞』に次の記事が報じられたことがある(2012年10月22日)
「【イスラマバード=共同】アフガニスタン北部ファルヤブ、サリプル両州にまたがる油田で、中国の国有石油大手、中国石油天然ガス集団(CNPC)が原油の採掘を開始した。アフガンで大規模な原油生産は初めて。ロイター通信が21日報じた。アフガンでは治安の改善が見られず、多くの外国企業が参入をためらう中、中国企業の積極的な進出が目立っている。
アフガン鉱工業省によると、油田の推定埋蔵量は8700万バレル。契約期間は25年で、油田開発の全収益のうち7割をアフガン政府が得る。CNPCは昨年12月、政府との開発契約に調印。シャフラニ鉱工業相は油田開発が「アフガンの経済的な自立につながる」と語った。中国はアフガン中部ロガール州の銅山開発も落札し、周辺道路や鉄道の建設などインフラ整備も行っている』(引用とめ)。
この動きに対して中国人を標的とするテロが頻発している。昨師走にも中国人ビジネスマンが宿泊するカブールのホテルにテロ攻撃を仕掛けた。
令和五年(2023)2月9日(木曜日)
通巻第7627号 <前日発行>
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
その後のアフガニスタンに強力にアプローチする国がある
タリバンをテコ入れする中国の狙いとは何か?
**************************************
アフガニスタン。2021年8月15日にタリバンが首都カブールを制圧した。バイデンが無様な撤退をしたからである。
爾来、タリバンは国際的に孤立し、国内では反政府のテロ組織ISIL─K(イラク・レバントのイスラム国・ホラサーン州)による過激な爆破テロが頻発している。
タリバン政権を承認したのはサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、パキスタンの三ケ国と国際社会が認めない「チェチェン・イチケリア共和国」だ。
タリバン政権は国連でも承認の議論はない。国際連合のアフガニスタンの代表権は「旧北部同盟」である。
在アフガニスタン日本国大使館は、2021年8月15日をもって閉館。23年2月現在、在カタール日本国大使館内に臨時事務所を設けている。
首都カブールをはじめ、全土において「ISIL─K」がシーア派住民や外国関連機関、民間人等を標的としたテロ、あるいは身代金目的の誘拐が多発している。タリバン政府の統治は全土の90%くらいだろう。
この隙間を衝いて中国はアフガニスタンへの浸透を強めた。
中国はタリバンがETIM(東トルキスタン独立運動)のアフガンからの追放に協力的なので、ドローンなどの武器供与の構えを見せている。
米国は2001年911テロで中国にも協力をもとめるためにETIMを『テロ組織』と認めたことがあったが、トランプ政権で、この指定を削除している。
2021 年 7 月、中国はタリバンの代表団を天津に迎え、王毅外相(当時)が応接した。まっさきに提示した条件は「ETIM がアフガニスタン国内で反中国活動を行うことを許可しないという保証」を求めた。
中国のアフガニスタン政策は第一にこのETIMへの取り組みであり、第二に中央アジアとパキスタンにおける「一帯一路」プロジェクトを保護することだ。
中国政府はタリバンを正式に承認していないが、カブールに大使館を運営している。双務的にタリバンの代表者が北京のアフガニスタン大使館使用を許可している。事実上の外交承認である。
▲中国の狙いは銅鉱山と石油採掘
中国はすでアフガニスタンのアイナク鉱山など鉱業とエネルギー資源開発に投資しており、またタリバン政権はCPEC(中国・パキスタン経済回廊) がアフガニスタンに延長される可能性を受け入れている。とはいえパキスタンのパロチスタン州は反中国であり、すでにグアダール港の開発は頓挫した。
1月5日、中国企業は推定8700万バレル相当の原油を含む、アフガニスタン北部のアムダリア盆地での石油採掘契約に調印した。また2008 年に契約を結んだ アイナク銅鉱山での採掘作業再開も望んでいる。採掘作業における安全の確保が前提条件である。
十年前の『日本経済新聞』に次の記事が報じられたことがある(2012年10月22日)
「【イスラマバード=共同】アフガニスタン北部ファルヤブ、サリプル両州にまたがる油田で、中国の国有石油大手、中国石油天然ガス集団(CNPC)が原油の採掘を開始した。アフガンで大規模な原油生産は初めて。ロイター通信が21日報じた。アフガンでは治安の改善が見られず、多くの外国企業が参入をためらう中、中国企業の積極的な進出が目立っている。
アフガン鉱工業省によると、油田の推定埋蔵量は8700万バレル。契約期間は25年で、油田開発の全収益のうち7割をアフガン政府が得る。CNPCは昨年12月、政府との開発契約に調印。シャフラニ鉱工業相は油田開発が「アフガンの経済的な自立につながる」と語った。中国はアフガン中部ロガール州の銅山開発も落札し、周辺道路や鉄道の建設などインフラ整備も行っている』(引用とめ)。
この動きに対して中国人を標的とするテロが頻発している。昨師走にも中国人ビジネスマンが宿泊するカブールのホテルにテロ攻撃を仕掛けた。