小野前市長の独断公文書作成交付問題と
田久保市長のささやかな個人情報の表示違い
なんで、これほどに扱いが違うのか?
ここまで何回かこの度の「学歴詐称問題」を書いてきて、どうにも得心がいかないのが、「ここまで問題が大きくなったのはなぜか」ということです。それは、当然、「そもそもこれを仕組んだのは誰なのか」という疑問と表裏一体なのです。
結果として、いまのところ表面にはあらわれていない人間の画策が図に当たって、というよりも、目論見を遥かに超えるレベルで “当たっちゃって“ 、テレビ、新聞、雑誌、市議会、幹部ら市職員、市内外の観客席にいる野次馬やらお笑い芸人らが総ぐるみで田久保市長を葬り去らずにはおかない、おさまらない、という大きなうねりが出来上がってしまったのです。なぜ、誰が、の疑問は強くなるばかりです。
そもそも、田久保市長が東洋大学卒業を東京大学卒業と偽ろうとも、東洋大学除籍を東洋大学卒業と表示しようとも、現実世界にはなんの影響もないし、実際なかったのです。除籍か卒業かなんてことは、それ自体は単に田久保の個人情報の問題にとどまる無価値なものです。 (この無価値こそが、小池百合子東京都知事の「カイロ大学首席卒業」のウソが生み出した「価値」と決定的に異なる点であり、追記します。)
前回にも触れましたが、不鮮明ではあるものの下の確約書の画像をもう一度ご覧ください。これは前市長の個人名で作られた私文書ではありません。画像右肩あたりにはっきりと「伊東市長 小野達也」と読み取れますよね。自筆の署名がある市長名義の公文書なのです。庁内手続きをまったく無視して公文書を独断で作成し、秘かに委任状を携えた市職員1名 ( 確約書の存在を知っていたのは前市長とこの市職員のたった2人だけでしたから、ヒラの職員ではありますまい。) を使って業者に交付させたのです。これは明らかに伊東市の公的な行動の外観を呈しています!それが反故になったので、業者側が報道にタレ込んで問題が報道先行で発覚した、という経緯のようです。

このような小野前市長の確約書事件と比べれば、その重さにおいて田久保の学歴問題なんぞは比較にならないほどの軽微な失態です。確約書事件が小野前市長の本人提案で10%減給3か月という屁でもないレベルで幕引きされてしまったのに対し、今回の田久保の件では、市議全員一致で辞任勧告決議をするは、わざわざ100条委員会は開くは、の大騒ぎに発展してしまった、発展させた、のはいったい誰で、どうしてなんだろう、との強い疑問を呈さざるを得ません。
また、何を根拠にそんなことができるのか、とこちらも強い疑問を持つのですが、7月31日の「田久保まき報告会」開催の前に市の部長が全員一致で田久保市長の辞任を求めたという朝日報道が後になされました。まさか前記の小野前市長の懐刀であろう「市職員1名」が今回の「部長全員」の中に含まれているなんてことはありませんよね! あるかしら? これは判決書等でもう少し調べてみたいものです。
私も現役時代に自治体の首長の不祥事を複数回取材したことがありますが、コトが決着するまでは市の幹部や秘書課は外部にあらわれる形ではどこでも完全沈黙でした。これは当時の私のような取材側にはまことにいまいましいネックでしたが、自治体の機能としては当然であろうと思います。せいぜい絶対内緒のオフレコ、「書かない」という前提のひそひそ話しか聞けませんでした。それは、形骸だけでも市職員とりわけ市幹部は首長を支え助けるべきものであるからでしょう。また、自分たちの首がかかっているということもあります。首長が変われば、秘書部門の長や主だった部長はすげ替えられるのがあたりまえですからね。ひょっとして、田久保市長は重要ポジションの異動に未着手で、小野たっちゃん市政時の取り巻き連中がそのまま残っていたのではないか、そんな気もしないでもありません。そうであるとすれば、田久保のまきちゃんて、ほんまにヒトがいいわ、まっこと脇が甘いわ、と言わざるを得ません。
前述のような他の自治体の例に反して、伊東市の市議会、ちょいちょいメディアに露出している議長、副議長はじめ、市議の面々、市幹部や労働組合は、判断すべき立場にいるわけでもないのに、自分たちで勝手にシロクロを決めてしまって、田久保に辞職を要求しているようです。また、そもそもが伊東市の市長秘書セクションは「秘書広報課」となっており、いわば逆方向の機能が一箇所に集められているところがおかしいとも言えます。広報課は必要に応じて外に向けてあたりまえに発言するでしょうが、秘書課だけしか知り得ない事実は、広報部門が広報しようにもしようがないのです。その欠陥の故かどうか、伊東市の秘書広報課長というのが出て来て、事実関係についてああだこうだとしゃべくっている、こういうのは本来の想定された機能から言っても枠を外れているのではないでしょうか。
それはそうと、既述のように伊東市議会の面々はおしなべて反田久保で肩を組んでいるように見えますが、小野前市長の確約書事件の際はどうだったのか。私はいま、プロの取材者としてこれを書いているわけではありませんので、そこまで徹底的に調べる意欲はないのです。しかし、目についたほんの一例ではありますが、現在も現役である四宮和彦市議の選挙ドットコムというサイトに掲載されている『四宮和彦ブログ』から見てみたいと思います。
<伊東市「確約書」を巡る市議会全員協議会>伊豆メガソーラーパーク合同会社と小野市長との間に「密... - 四宮和彦(シノミヤカズヒコ) | 選挙ドットコム (go2senkyo.com)
このブログの2021年7月2日付記事で四宮は、小野前市長が問題の確約書の作成交付の目的として「控訴審伊東市敗訴の場合の損害賠償対策として」と表明していることに対して、まことにまっとうな市民感覚の反論を次の緑文字のごとく書いておられます。曰く、
「そんな愚かな判断力しかない人が伊東市長をしているのであるとすれば、これは相当深刻な問題であり、今後も同じようなわけの分からない行政運営が続くことになりかねません。そうしたことを考えれば、「賠償リスクの軽減」とか言う理由が、苦し紛れの言い訳であり、本当の理由は別にあるんでしょ?と思うのは、受け止める側の良心的解釈です。」
また、四宮は次の緑文字のようにも書いておられます。( 註・文中「佃市長の汚職事件」とは、本シリーズ①で既述のとおり、いま問題の市立図書館新設の建設用地を伊東市が不動産業者から不当に高額で買い入れるにあたり、佃弘巳元市長が1000万円の賄賂を受け取っていたという贈収賄有罪事件のことです。小野前市長は、この佃元市長を自分の当選後1年間伊東市長特別顧問として任用、その政治的手法をつぶさに修業したものとみられます。)
「佃市長の汚職事件の際に設置された「土地取得に係る監視機能強化特別委員会」での検証過程でも指摘されてきたことですが、単独で交渉等をしてはならないこと、また、交渉に当たっては、必ず記録を残すことを提言してきたところであり、この提言を受けて、業務手順書の作成や、行政手続の正当性を担保するための交渉記録の作成と情報公開を行うことが定められていたはずなのにも関わらず、全くこれを無視して、市長の勝手な思い込みでわけの分からない書類に署名するという愚かな行為に及んだのであり、また、これに関与した職員も、これを止めるのではなく、積極的に進める方向で関与したという信じがたいことを行っており、言語道断としか言いようがありません。」
このように、至極まともなことを四宮は書いておられます。この方には、現在の田久保騒ぎの真相が見えているはずです。すなわち長い間続いてきた公共工事による利権享受で甘い汁を分け合ってきた勢力が、新図書館建設のみならず、田久保の登場で今後の大規模公共工事の減少は必至と予測して“食い扶持の減少だ”と強い憂いを抱く。そうして、とにかく、なんとしても田久保だけは葬り去らにゃならん、と釈迦力になっている姿、それが見えていると思います。しかし、この方もこの度の辞任勧告決議には手を挙げたのですねえ。(文中敬称略)