紅夜叉は利用された

リングサイドに全女のフロント数名が陣取る。
メインの全女-ＬＬＰＷの対抗戦を見届けに来たのだ。
リング上で行われているセミファイナルをやや冷ややかな目で見ていた。
全女至上主義の彼等は全女出身の立野が出ると拍手を送り誇らしげに観戦する。
その立野が半田の逆エビに捕らえられた。必死に堪える立野。
カットに駆けつけた風間が半田を正面からソバットで蹴りつける。
その反動で逆エビが余計に極まり、立野はあえなくギブアップしてしまった。
失笑が起こる。立野が怒りの表情で風間ににじり寄る。
「ふざけんじゃね～よ風間！ちゃんとフォローしなかったからこうなるんだよ！」
　　「上～等～じゃないか！お前が勝手にギブアップしたんだろ！」
罵り合う二人を慌てて若手選手が止めに入る。立野は怒りが収まらない。
顔見知りの全女フロントの前で恥をかかされた、そんな気分であった。
控え室に戻ると風間は荒れまくり、立野の態度を批判した。
　　「どう思う？あの態度！自分で勝手に負けたんじゃんか！」
気にするなよ、とテーマ曲を待つ神取が声をかけた。
立野は控え室に戻ると無言で帰り支度を始めた。
いろいろ大変ですね、と鈴香が気を使い声をかけた。

全女ファンの声援と紙テープがＬＬファンのそれを圧倒する。
対抗戦らしい殺気立った雰囲気、その中でメインエベントは行われた。
神取と鈴香の視察戦に観客がどよめく。三田が鋭い目つきでハーレーを睨みつける。
ゴングが鳴るとＬＬＰＷ軍は徹底した関節技で三田を攻め立てた。
鈴香は神取に対して関節技で対抗し、その実力を見せつける。
全女は関節技が出来ない、そう思っていた神取の隙を突き膝十字を極める
神取のチキンウィングフェイスロックにも慌てずロープへ逃げる。
試合は中盤から派手な大技の続出する好勝負となった。
前回の試合で北斗に責められた三田が長身を生かし豪快な攻撃をみせる。
新技のデスバレーボムでハーレーをマットに突きつけた。
ハーレーが動けなくなると神取が飛び出し三田にスリーパーを極め る。
鈴香が神取をパワーボムで突きつけ三田に喝をいれ蘇生させた。
大混戦の中ハーレーの雪崩式バックドロップが鈴香に決まる。
そしてジャーマン、タイガースープレックスと立て続けに投げつける。
全女ファンの悲鳴の中、みなみ鈴香がフォールを奪われた。
「風間、今日のところは負けを認めてやるよ。だけどな、4.2横アリ、お前等どうすんだよ。にげんじゃねえぞ」
「みなみ！ＬＬＰＷはなぁ、逃げも隠れもしねえんだよ。いいか、4.2横アリ、 半田、ハーレー、神取、イーグル、そして私がでる！」
風間が声高らかに宣言した。それはみなみやそこにいる全女の選手、関係者だけではない。ここにはいない北斗に向けてのメッセージでもあった。