いしころにっき

石原石子の日記です

大部屋と隣りのおじいさん

2007-08-09 13:00:10 | 盲腸
私のはいった大部屋は小便臭い。
気のせいかとおもったけれど
やはり小便臭いものは小便臭い。

かすかに香るお小便のにおい。
最初は私が気がつかぬうちに
微量にもらしているのではないかとおもっていたのだけど
なんどか確認した結果
そのような形跡はなし。

どうやら
いっしょに暮らしている他の患者さんや
これまでここに住んでいた患者さんの名残りのようだ。

大部屋は、
大部屋といっても四人まで。
それほど大きくはない。
朝から晩までカーテンで仕切りをしていて
閉塞感がある。
私は窓側でなく廊下側なので
よりいっそう

「昼なお薄暗い・・・」

といった様相を呈している。

さすがにこれは不健康だとおもい、
途中から昼間はカーテンを全て開け放った。

そんな様子ですごしているので残り三人の患者さんの姿がわからない。
べつにあえて知ろうともしないので
かまわないのだけれど、
隣りのおじいさんの声はよく聞こえるので少しは気になった。

孫がきたり
新人の看護婦さんによくあたるせいか
採血のさい
なんども注射され腕がすっかり紫色になったと
看護婦さんに愚痴を言ったり。


他の二人の患者さんはさっぱり声を聞かない。


それはともかくとして
隣りのおじいさんで気になることがひとつある。

カーテンの下は少し空いているので床が見える。
あるときふと、隣りのおじいさんの床下をチラリと見た。
なにかのカバーが落ちていた。
マクラカバーにしては小さめの、
ちょっと濃いめの水色をした布で、
紐が二ヶ所から10cmほど伸びている。

最初は

おじいさんの落としものかぁ
まあ、看護婦さんか誰か来たら拾うだろ
本人が気付いて拾うかも知れないし

くらいにおもっていたのだけれど
看護婦さんが来ても
お医者さんが来ても
拾わない。
誰ひとりとして気づかないのか。

おかしいの

とおもって気がついたときには
私は常にそれをチェックしている。

そのあいだもおじいさんはご飯食べたり
家族が来たり
採血されたり
医者に病状の進捗具合を報告されたり

誰もその水色の布を見過ごしている。
ひょっとしたら
私は見てはならないものをみているのか。
ともおもった。

ところが
1日に1回、部屋の掃除がある。
そのときに回収されてしまった。
結局のところ
誰も床は見ない
それだけのことだった。

とおもっていたら
そのあといつのまにかまた
水色の布が同じところに落ちていた。

うーん

これはいったい。

きっと、その布はおじいさんのベッドのなにかのカバーで
おじいさんはそれをつけるのを嫌がっているのかもしれない。
そして、まわりの人間はそれをわかっていて
あえて無視をしている
そうだ。
そういうことにしよう。

そうして私は自分を納得させた。


それにしてもこのベッドはいいなぁ
自分で足とか頭の部分、ベッドの高さなど調節できる。
調節しながらできるので長時間寝ても腰が痛くならない。
いいなぁこれ。
ベッドの脇をみたらフランスベッドって書いてある。

フランス

フランスかぁ

とてもフランスのにおいがしないなぁ

フランスっていうか

小便のにおいがするなぁ



今回は疲れたのでここまでとして。
本当は昨日書くはずだったのだけれど
昨日退院。
それはまた次回に書こう。

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