いせ九条の会

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民族対立と「複合環境汚染」をイラクに残して米軍は去るだろう/山崎孝

2008-11-25 | ご投稿
11月16日にイラクで自爆テロが起こり、15人が死亡し20人が負傷する事件が起きていますが、イラクでのテロ事件は以前よりは減り、イラク情勢はイラク駐留を可能にする、米・イラク安全保障協定の交渉の成り行きに注目され、11月16日にイラク政府は閣議で米国が示したイラク安全保障協定を承認したと新聞は伝えています。

その内容は来年6月末までに米軍はイラクの都市部から撤退し、2011年末までに完全撤退するなどとなっています。また、米軍はイラクから他国へ攻撃できないとすることも含まれています。協定はイラクの強い要求を取り入れています。イスラムの同胞の国であるイラン攻撃に基地としてイラクが使われることを拒否しました。この点で言えば、ベトナム戦争やイラク戦争の時、日米安保が一番機能した役割、他国への攻撃基地を日本が提供する日米安保よりは遥かに良い点は持っています。

最近のイラクの実情や米軍がイラクで行なったことに関するほんの一端を報告したレポートがあります。紹介します。

◆特集/イラクからの報告/フリージャーナリスト 西谷文和さん/深刻化するテロと環境汚染(「連合通信・特信版」で憲法改悪反対共同センターのHPに掲載 2008年11月20日)

イラクからの報告/フリージャーナリスト 西谷文和さん/深刻化するテロと環境汚染

●イラク人同士の戦いへ

 10月2~20日、9度目となるイラク取材を敢行した。今回は、治安が安定しつつあるとはいえ、連日のように爆破テロが起こるバグダッドに潜入することができた。

 バグダッド空港からクルド愛国同盟(PUK)の護衛つきで、バグダッド市内へと入る。空を見れば、飛行船がぷかり。

 「あれは何?」「米軍の監視飛行船だ。毎日飛んでいるよ。ああやって上空から市民生活をモニターしているんだ」。

 4年前は、街角には米軍の戦車、上空には軍用ヘリが飛んでいた。その後、治安は極端に悪化し、武装勢力のロケット弾はヘリを撃ち落すし、道路わきに仕掛けられた路肩爆弾は戦車を吹っ飛ばす。あまりにたくさんの米軍兵士が殺されるので、今では「無人飛行船」が市内を監視しているのだ。

 バグダッドは壁だらけの「監獄都市」と化した。自動車に爆弾を積んだテロを警戒して、軍や政府関係の建物はもちろん、ホテルや企業までが、「コンクリートの壁に囲まれた要さい」になっているのだ。メーンストリートを車で走行すると、約100メートルおきに「検問」がある。検問しているのはシーア派中心のイラク国防軍。その国防軍にテロがかかる。今では米軍は基地に引っ込んでいて、戦争は「イラク人同士の戦い」に変質している。

◇日常化する爆破テロ

 チグリス川沿いのホテルにいると、「ドッカーン」という爆発音。続いてパトカーのサイレン。川の対岸で煙がもうもうとわきあがる。その日のアルジャジーラテレビによれば、爆発で27人が亡くなったという。しかし、道行くイラク人はぜんぜん驚かない。「ユージュアル(いつものことだ)」と通訳のオマル。爆発は前日も、翌日も起こった。そのなかで人々は粛々と日常生活を続けている。

●多発する子どもの障害

 もっと深刻なのは、戦争で使われた兵器などによる「複合環境汚染」だ。

 アリー君(9歳)は、生まれつき左足が変形している。足が折れ曲がり、ひざに足首が張り付いたようだ。91年の湾岸戦争、98年の「砂漠のキツネ作戦」、そして今回のイラク戦争。雨あられのように爆弾と銃弾が飛び交った。

 モハマド君(3歳)は顔が変形して鼻がねじ曲がっている。イラクでは手術不可能。薬もなければ医療器具もなく、医師もいない中で、彼は障害を抱えたまま幼年期を過ごす。 カトリーンちゃん(10歳)の左足かかとに大きな腫瘍。生まれつき下半身の感覚がなく、自力でおしっこもできない。まだオムツが欠かせない。

 劣化ウラン弾の放射線による被ばくか、それとも神経まひガスや、さまざまな爆弾に使われた重金属の影響か?いずれにせよ、日本はこんな「残酷な戦争」に、絶対協力してはならないのだ。

 にしたに・ふみかず 1960年生まれ。元大阪府吹田市役所職員。イラクやアフガニスタンで取材を続ける。イラクの子どもを救う会代表。