いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
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自民党と公明党は憲法の存在を忘れた議論をしている/山崎孝

2008-06-15 | ご投稿
【自公の派兵恒久法検討/「警護活動の追加」狙う/「掃討作戦」参加に備え】(2008年6月15日付「しんぶん赤旗」)

 自衛隊の海外派兵を常時可能にするための恒久法を検討する自民党と公明党のプロジェクトチームが、国会の会期延長に伴って議論を継続させています。その焦点になっているのは、自衛隊の活動のメニュー(活動類型)に「警護活動」を追加し、武器使用権限を拡大することです。

 「警護」とはどのような活動か―。自民党は、警護活動の「四類型」として「随伴」「配置」「巡回」「駆けつけ」を挙げています。この間の議論で、「随伴」とは、移動・移送中の物や人への付き添い、「配置」とは指定される建物や施設など対象物への張り付き、また「駆けつけ」とは危機に際して応援に駆けつけることなどとされています。

 自民党は「なぜ、警護活動が必要か」として、「現在の(イラクなどでの)活動は、他国に警護してもらっている」「目前で、危機にある人を放置することはできない」などの「理由」をあげています。

 この「理由」が示すように警護活動の前提は攻撃の危険とその予防・排除です。戦闘部隊による任務としての武器使用が必要になります。

「対テロ」を想定 これまで海外での武器使用について政府・与党は、正当防衛や緊急避難だから、「武力の行使」にはあたらないとごまかしてきました。任務遂行のための武器使用はこの説明の放棄になります。

 自民党メンバーの一人は「警護が武器使用を伴うなんてことは当然だ。憲法の範囲でやれといわれれば厳しい」と言い放ちます。「憲法の制約」など意識していたら、警護活動などできないというホンネです。

 さらに、議論の中では自民党メンバーから「積極的な『見つけ出し』を除く、“掃討作戦”を可能にし、点から線、『面』の警護で安全を守る必要がある」との発言や資料も出されています。

 「面」で安全を確保するというのは、攻撃があって初めて反撃するということを超えて、一定の範囲を事前に「調査」し掃討作戦で安全を確認する。そして、攻撃に際しては、迎撃・反撃するだけでなく、追撃して掃討作戦を展開し、一定の地域全体の安全を確保するということにほかなりません。米軍がイラクやアフガニスタンで展開している「対テロ」掃討作戦を想定してのものです。

武力行使の危険 移動中の他国の部隊や人の警護(随伴活動)は、警護対象の動き次第で活動範囲が大きく変化する危険なものとなります。オランダ軍やアメリカ軍の車列を自衛隊が警護するという場合を想定すると、車列の動きに従属して自衛隊も常に移動しながら、攻撃に備えることになります。

 また、駆けつけ警護では、文字通り戦闘状態への参加が問題になります。警護活動のメニューへの追加は、海外での武力行使に直結する危険なものです。

 与党プロジェクトの会合では、「非戦闘地域」という限定があるから武力の行使にはならないという説明(政府)もされています。

 しかし、そもそも「非戦闘地域」という概念は、戦争の現場であるイラクに自衛隊を派兵するために創作された「説明概念」にすぎません。四月の名古屋高裁の判決でも政府の「非戦闘地域」という認定が覆され、バグダッドは戦闘地域であると判断されました。

 警護活動では、イラクのサマワで輸送部隊や補給部隊の車列を戦闘部隊の装甲車で囲み、攻撃があれば反撃し撃退することまで想定しています。これが憲法九条が禁じる海外での武力の行使につながることは明白です。(中祖寅一)(以上)

6月15日6時台のNHKテレビの国際ニュースは、アフガニスタンのタリバン勢力に対するインタビューの模様を伝えていました。タリバンの小グループが米軍やNATO軍(国際治安維持支援部隊)の通る道路に5分で地雷を仕掛ける場面がありました。その道路にはタリバン勢力の仕掛けた地雷で破壊された残骸がいくつも写っていました。

自衛隊がテロとの戦いに参加すれば、米軍やNATO軍と同じように標的にされることは容易に推察できます。現在の憲法の下では自衛隊員は海外で戦闘する義務は負ってはいません。自民・公明が検討している自衛隊海外派遣恒久法の内容は憲法を変えない限り、法律として制定はできません。

アフガニスタンは米軍やNATO軍とタリバン勢力の消耗戦の様相を呈しています。タリバン勢力の兵士は米軍やNATO軍の攻撃で命を失っていますが、米軍やNATO軍は住民を巻き添えにした攻撃をするので、犠牲になった住民は怒りに燃えてタリバンに兵士を提供してゆきます。それに比して既にブログで紹介しているように、国際治安維持支援部隊は危険な南部への展開を巡り軋轢を生まれています。

また、アフガン戦争開始から7年経ても住民の生活に向上がみられず、このこともタリバンに住民が味方している原因になると番組は伝えていました。

米国に一番忠実な行動をした英国が陥った苦境と苦渋/山崎孝

2008-06-12 | ご投稿
【アフガンで英軍兵士3人死亡、展開開始以来の死者100人に】(2008年6月9日付読売新聞)

【ロンドン=本間圭一】英国防省は8日夜、アフガニスタン南部ヘルマンド州をパトロールしていた英軍兵士3人が同日、自爆テロを受けて死亡したと発表した。

英軍が交戦していた旧支配勢力タリバンの攻撃と見られる。これにより、2001年10月のアフガン展開以来、英軍要員の死者は計100人となった。

英軍は06年にタリバンの拠点とされる同国南部に兵力を集中させて以降、犠牲者が増加している。

アフガンには現在、北大西洋条約機構(NATO)主導の国際治安支援部隊(ISAF)に約40か国が派兵しているが、英政府はパリで近く開催されるNATO関連の会合で、治安が比較的安定した北部に駐留する国などに負担の分担を求めていく方針だ。

【英、イラク完全撤退を検討 BBC報道、年内にも】(2008年6月11日付朝日新聞)

【ロンドン=土佐茂生】英BBCは9日、英政府がイラク駐留英国軍を年内にも完全撤退させること検討しでいる、と報じた。

 国防省は「何も決まっていない」としているが、正式に決まれば、ブッシュ米政権にとって大きな痛手となりそうだ。

報道によると、政府は7月にまず、現在の4千人から規模を縮小することを発表。さらにバスラ周辺の治安改善が進めば、年内に完全撤退を決める方向で検討しているという。

 ブラウン英首相は昨年12月までに、治安維持を担当していたイラク南部4州の権限をイラク当局に移譲。今春には2500人まで削減する計画だったが、権限移譲後にバスラの治安が悪化し、削減計画を中止していた。

 今月8日に約7800人を派遣するアフガニスタンで英兵の死者数が100人を超えたこともあり、政権内に「イラクでの軍の負担を軽くするべきだ」との声が出たとみられる。(以上)

【コメント】《英政府はパリで近く開催されるNATO関連の会合で、治安が比較的安定した北部に駐留する国などに負担の分担を求めていく方針だ》と報道されました。激戦地のアフガン南部にドイツとフランスが部隊を展開することを渋ったため、米国の国防長官は怒って南部への派遣を要求しています。ドイツは国民の反対が強く正式には南部への部隊の展開は決定していません。

かようにISAF内部で激戦地への部隊の展開をめぐって軋轢が生まれています。タリバン勢力との戦いで苦戦を強いられ、勝利の展望が持てず、自国兵士の損耗を減らそうとして軋轢が生まれているISAFに日本は憲法解釈を変えてまで加担する可能性があります。

米国に一番忠実な行動をした英国は苦難と苦渋を強いられました。日本も米国に忠実な国ですが、憲法の規定が歯止めになって英国のような運命は免れています。このことを国民に宣伝する必要があります。

政府、アフガンに調査団派遣…自衛隊活動も検討/山崎孝

2008-06-11 | ご投稿
(2008年6月9日付読売新聞より)

政府はアフガニスタン本土への自衛隊派遣の可能性を探るため、内閣官房と外務、防衛両省の職員で構成する調査団を8日から現地に派遣している。

海上自衛隊によるインド洋での給油活動の根拠となっている新テロ対策特別措置法が来年1月に期限切れを迎えるため、政府は支援策の継続について、アフガン本土での自衛隊活動の可能性を含め検討する必要があると判断した。

調査団は10日間前後、首都カブールなどで治安情勢や支援活動のニーズなどを調べる。政府は、陸上自衛隊による国際治安支援部隊(ISAF)の後方支援活動や、航空自衛隊による物資輸送などを検討しており、調査団には陸自と空自の隊員が加わっている。

ただ、部隊派遣には課題も多い。派遣には、新法か新テロ対策特別措置法の改正が必要となるが、民主党が参院で主導権を握る「ねじれ国会」のもとで、調整は容易ではない。また、現地では旧支配勢力タリバンなどによるテロで多数の犠牲者が出ており、治安回復のメドは立っていない。(以上)

【コメント】《陸上自衛隊による国際治安支援部隊(ISAF)の後方支援活動や、航空自衛隊による物資輸送などを検討しており、調査団には陸自と空自の隊員が加わっている》と報道されました。小沢一郎代表が雑誌などで「ISAF参加」を表明している民主党がどう対応していくのかが、大変注目されます。

イラクにおける航空自衛隊の後方支援が憲法違反と判断されています。民主党が完全に憲法に背を向けた政党なのかどうかが政府の動向にどう対応するのかで判ってくると思います。9条は守ると言っている公明党はすでにその行動から見れば憲法に背を向けた政党といえます。

私たちは政府のこの動向に特段の注意が払い抗議していく必要があります。

アフガニスタン戦争に対するラテンアメリカ・カリブ海諸国の見方/山崎孝

2008-06-09 | ご投稿
アフガニスタン戦争に対しては国連決議があり、アフガニスタンを攻撃した米国などの行為を正当化する情報が圧倒的に多く日本には伝えられてきました。しかし、国連の加盟国が一致してそれを支持しているとは限りません。ラテンアメリカ・カリブ海諸国から推薦された次期国連総会議長は就任演説で、イラク戦争やアフガニスタン戦争について「侵略行為」と述べました。そして、次期国連総会の課題は「国連の民主化」で、「効果的な多国間主義のために国連総会の再活性化を目指す」と語りました。以下はその記事です。

【イラク戦争は「侵略」次期国連総会議長が演説】(2008年6月7日付「しんぶん赤旗」) 

【ワシントン=鎌塚由美】九月開会の第六十三回国連総会議長ミゲル・デスコト・ブロックマン氏は四日、議長選出にあたっての演説で、イラク、アフガニスタン戦争について「侵略行為」だと述べ、名指しは避けながらも米国を批判しました。

 デスコト氏は、ニカラグアのサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)政権で外相(一九七九―一九九〇年)を務めたカトリックの神父。米ブッシュ政権の単独行動主義に批判的な立場をとってきました。地域持ち回りで選出される国連総会議長にラテンアメリカ・カリブ海諸国から推薦され、全会一致で選出されました。

 演説で、国連のもとに世界各国が結束する必要性を強調したデスコト氏は、「一部の加盟国のふるまいは、戦争を終結させ地球から貧困を撲滅するという国連の信頼を失わせた」とも語りました。次期国連総会の課題として「国連の民主化」を挙げ、「効果的な多国間主義のために国連総会の再活性化を目指す」と語りました。(以下略)

【コメント】米国防総省の資料よれば、このような侵略戦争に、在日米軍が2004年12月から2007年9月までの期間に、「イラクの自由作戦」(OIF)、アフガン関連の「不朽の自由作戦」(OEF)で、千五百人から四千五百人規模の兵力を派遣しています。

この派遣には沖縄米軍基地が大きな役割を果たしています。その沖縄の県議選の結果は与党が惨敗しました。

【野党が逆転 26議席/自民惨敗、民・共躍進】(沖縄タイムスの報道)

任期満了に伴う第十回県議会議員選挙は八日投開票され、野党中立が二十六議席と過半数を獲得し、与野党逆転に成功した。自民、公明両党を中心にした与党は、後期高齢者医療制度に対する有権者の強い反発を受け、二十二議席にとどまる惨敗。稲嶺前県政から続いた与党の安定多数は崩れた。県議選で県政与党が過半数を割り込むのは一九九二年以来十六年ぶり。投票結果を「自らへの評価」としていた仲井真弘多知事は今後、厳しい県政運営を迫られる。普天間飛行場移設協議や経済振興など政策課題への影響も必至だ。野党圧勝で、争点となった後期高齢者医療制度の修正・廃止論議も加速されそうだ。投票率は57.82%で、前回を0.9ポイント下回り、過去最低となった。(以上)

【コメント】沖縄県議選は定数は48です。与党側は参議院選挙でも野党統一候補に敗北しています。

政府はアフガニスタンに自衛隊を派遣することを視野に入れて、調査団の派遣する準備に取り掛かっています。

アフガニスタンには、憲法で定められた自衛隊が海外での武力行使を避けるためには選択しなければならない、非戦闘地域などはないことは次の報道でも明らかです。アフガン南部はタリバン勢力との戦いの激しいところです。

【BBC記者、遺体で発見 アフガン、誘拐後に銃殺】(2008年6月9日付中日新聞)

【カブール8日共同】英BBC放送によると、同放送のカブール支局に所属するアフガニスタン人記者が8日、アフガン南部ヘルマンド州で銃殺された遺体で発見された。7日に誘拐されていた。

この記者はアフガンの公用語パシュトゥー語放送を担当。治安当局者によると、旧政権タリバンを非難する内容の報道をしていたという。

一方、東部ガズニ州では8日、タリバンの残存勢力が警察官の車列を待ち伏せして攻撃、少なくとも警察官11人が死亡、5人が負傷した。またAP通信によると、東部ホスト州の国連事務所近くで同日、何者かが爆弾が爆発させ、通行人らが負傷した。

アフガニスタンで活動する中村哲医師の言葉/山崎孝

2008-06-08 | ご投稿
【アフガン:陸自派遣検討 NGO代表・中村医師「派遣なら難民支援中断」--危険招く】(2008年6月8日付毎日新聞)

 アフガニスタンとパキスタンで難民の医療支援や水源確保事業を続ける福岡市のNGO「ペシャワール会」の現地代表、中村哲医師(61)は帰国中の7日、福岡市で会見し、政府が検討を始めた陸上自衛隊のアフガン派遣に反対した。派遣された場合「日本人が武装勢力の攻撃対象となるのは確実で、会員の安全確保が難しくなる」として、現地の邦人スタッフを全員帰国させ、活動を一時停止せざるを得ないと述べた。

 同会は84年にパキスタン北西辺境州の州都ペシャワルを拠点に両国で医療活動を始め、01年の米軍のアフガン攻撃開始後も活動を継続。現在、両国で計16人の日本人スタッフが働いている。

 中村医師は「アフガンに非戦闘地域はほとんどなく、仮にあっても軍が進駐すれば戦闘地域化する」と治安情勢を説明。その上で「深刻な食糧難や相次ぐ誤爆で政府や外国軍への反発が強まっており、制服を着た自衛隊が行けば『敵(米軍)の味方は敵』と攻撃を受けるだろう。これまでの民生支援が築いた良好な対日感情が崩れる可能性が高く、我々の活動も危険にさらされる」と批判した。

 自衛隊のアフガン派遣を巡っては、町村信孝官房長官が5月31日の講演で検討を始めると表明。福田康夫首相も今月1日、記者団に「可能性は常々考えている」と述べ、政府は調査団を現地に派遣する方針を固めている。【阿部周一】

政府はアフガニスタンへ陸自派遣を視野に調査団を近く派遣/山崎孝

2008-06-05 | ご投稿
【2008年6月5日付毎日新聞の情報】

 政府は6月4日、アフガニスタンへの陸上自衛隊派遣を視野に、外務、防衛両省の調査団を近く現地に派遣する方向で調整に入った。政府高官は同日夜、「派遣を検討する時には調べなければならない」と認めた。アフガンへの陸自派遣については、町村信孝官房長官が5月31日の講演で検討を始める考えを表明。福田康夫首相も今月1日、記者団に「可能性は常々考えている」と述べていた。

 日本政府は国連平和維持活動(PKO)スーダン派遣団(UNMIS)への自衛隊派遣を検討してきたが、治安情勢が安定せず決断できていない。今回の調査団派遣は7月の北海道洞爺湖サミットを前に、福田首相が掲げる「平和協力国家」を具体的行動でアピールする狙いがある。

 アフガン支援では、現在実施しているインド洋での給油活動の根拠となっている新テロ対策特措法が来年1月に期限切れとなる。民主党は同法に反対したが、一方で小沢一郎代表が、アフガン本土で活動中の国際治安支援部隊(ISAF)参加に前向きな考えを示したことがある。このため、陸上での活動を可能にする同法改正を視野に、民主党の理解をとりつけたい思惑もあるとみられる。

 防衛省幹部は4日夜、アフガン派遣について「(自衛隊派遣の)恒久法のからみで何ができるか幅広く検討している」と述べ、新テロ特措法の改正にとどまらず、恒久法制定も視野に入れた調査になる可能性も示唆した。

 政府はイラクへの陸自派遣に際しても、現地情勢を見極めるため同様の調査団を送っている。【坂口裕彦】(以上)

【コメント】毎日新聞は《日本政府は国連平和維持活動(PKO)スーダン派遣団(UNMIS)への自衛隊派遣を検討してきたが、治安情勢が安定せず決断できていない》と伝えています。スーダンの場合は、紛争当事者は一応の停戦合意と国際部隊の派遣の容認が出来ています。しかし、アフガニスタンは戦争をしている所で、7年目に入っていますが、情勢安定化の展望は見えないまま、昨年は戦闘で8千人以上が死亡し、開戦以来で最悪の年となっています。これだけを見てもPKOのスーダンさえ政府は危険として決断できないのに、アフガニスタンへ自衛隊派遣を考えるのはとても矛盾しています。米国へのおもねりのゆえでしょうか。

自衛隊を海外に派遣する時の憲法規定に基づく規定、戦争するイラクに派遣した自衛隊の活動地域《現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。》規定はアフガンの場合はどうなるのでしようか。

【参考情報】2008年2月11日付朝日新聞【「増派しないとNATO崩壊」アフガン問題で米警告】

【ミュンヘン(ドイツ南部)=金井和之】ドイツ訪問中のゲーツ米国防長官は2月10日、ミュンヘン安全保障会議で演説し、独仏など北大西洋条約機構(NATO)同盟国の一部が戦闘の激しいアフガニスタン南部への展開に難色を示していることを念頭に「(戦闘に参加する意思のある国とない国に二分するなら)事実上NATOは崩壊するだろう」と強く警告した。

 ゲーツ氏は「NATOはもっと負担を共有していかなければならない」とも述べ、アフガン南部への増派をNATO各国に改めて要請した。

安倍前首相より油断ならない福田首相(2)/山崎孝

2008-06-03 | ご投稿
昨日の文章に引き続いての文章です。名古屋高裁でイラクにおける航空自衛隊の活動は、他国の軍隊の武力行動と一体となるから憲法違反だと判決が下っています。3日の中日新聞記事は、《アフガン本土に展開する国際治安支援部隊(ISAF)の後方支援業務として、自衛隊による人道支援物資の空輸などが想定されている》と報道しています。これはイラクにおける航空自衛隊の活動と同じ性格の活動です。イラクでの輸送は、自衛隊は輸送物資の中身は点検していないと言われています。憲法の規定それに基づく裁判所の判決が堂々と政府の手によって無視されていきます。日本は法治国家と言えるのかと大きな疑問がわきあがります。

【アフガン本土で活動も 新テロ法改正で政府検討】(2008年6月2日中日新聞)

政府は2日、アフガニスタン復興への貢献策をめぐり、インド洋での海上自衛隊の給油活動を来年1月の期限切れ後も延長するための新テロ対策特別措置法の改正に伴い、アフガン本土での自衛隊活動を可能にする新たな規定を盛り込む方向で検討に入った。アフガン本土に展開する国際治安支援部隊(ISAF)の後方支援業務として、自衛隊による人道支援物資の空輸などが想定されている。

町村信孝官房長官は5月末、新たな人的支援策を検討する考えを表明していた。政府は活動の根拠となる法的な裏付けが必要と判断。自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法は、制定までに「あと1-2年はかかる」(政府関係者)との観点から、新テロ法の改正で対応する方向になった。

政府は民主党にも協議を呼び掛ける方針だが、賛同が得られない場合、秋に想定される臨時国会での衆院再議決による成立も念頭に改正作業を進める考えとされる。ただ武力行使を伴うISAF活動への関与は政府部内でも慎重論が根強く、法改正までには曲折も予想される。(共同)

【陸自アフガン派兵 首相発言】(2008年6月3日付「しんぶん赤旗」)

 福田康夫首相がアフガニスタンへの陸上自衛隊派兵について「可能性は常々考えている」と発言(一日)したことは、自衛隊の派兵拡大にとどまらない重大さを帯びています。発言の問題点、背景には何があるでしょうか。

問題点 戦争行為への参加 恒久法先取り アフガンの陸上で活動している米軍と国際治安支援部隊(ISAF)は反政府武装勢力タリバンに対する武力掃討作戦を行っています。ここに陸上自衛隊を派兵することは「治安維持」を名目に、対テロ掃討作戦=戦争行為そのものへの参加を意味します。“戦闘地域には派兵しない”“海外での武力行使は許されない”としてきた政府の憲法解釈からいっても違憲の海外派兵です。

 自民・公明のプロジェクトチームが検討している派兵恒久法策定では、復興支援や停戦監視などの従来の自衛隊の活動のメニュー(類型)に加え、警護・治安維持への拡大が含まれています。それと同時に、武器使用基準の緩和を進め「任務遂行の必要上の武器使用」や「駆けつけ警護」も検討対象とされています。

 アフガンへの陸上部隊の派兵は、恒久法論議を先取りするものです。

 アフガンへの陸上部隊の派遣は民主党の小沢一郎代表の持論であり、昨年末に民主党が与党の新テロ特措法案への「対案」として国会に提出した「アフガン復興支援法案」にも盛り込まれました。

 政府・与党内では、小沢氏のISAF参加論に懐疑的な見解が支配的でしたが、参院での与野党逆転状況の中で、恒久法制定に向けた民主党の妥協、協力を引き出すことも狙って検討課題に上ってきました。与党は一月の臨時国会会期末の処理で、民主党の「アフガン復興支援法案」を廃案とせず「継続」させました。

 他方、四月に名古屋高裁で自衛隊のイラクでの米軍支援活動に対し、武力行使の一体化として違憲判決が下り確定したことにも示されるように、自衛隊の戦地派遣に対する重大な疑義が広がっています。憲法九条を擁護する国民世論も大きく広がっています。アフガンへの陸上部隊の派兵の動きは、国民との矛盾をいっそう激しくせざるを得ません。(中祖寅一)

【背景 悪化する現地情勢 米の増派圧力】

 政府首脳がアフガンへの陸上自衛隊派兵を検討していると公言した国際的背景として、アフガン情勢悪化に苦慮する米国が、兵力を増派するよう同盟諸国に圧力をかけてきた事情があります。

 二〇〇一年十月に米軍主導で開始された対アフガン戦争は、七年目に入っていますが、情勢安定化の展望は見えないまま。昨年は戦闘で八千人以上が死亡し、開戦以来で最悪の年となりました。

 アフガンでは現在、北大西洋条約機構(NATO)が指揮する国際治安支援部隊(ISAF)と米軍主導の「不朽の自由作戦」の二つの軍事作戦が同時進行しています。米軍は、兵力増派をNATO諸国に求めてきましたが、派兵反対の世論の高まりもあり、多くの国は応じていません。

 そのため米国は、海兵隊も含めアフガンに米軍を増派。現在アフガンに駐留する六万人以上の外国兵のうち、米兵は約三万五千人を占めています。米国は、二〇〇九年にこれを四万人に増強することを検討していると報じられています。この動きはアフガン戦争の「再米国化」と表現されています。ISAFには約五万人が所属し、うち約二万人が米兵です。

 十二日にパリで開かれるアフガン復興支援会合を前に、日米間で調整が進められてきました。五月上旬にはパキスタンを訪問していた高村正彦外相が急きょアフガン入り。カルザイ大統領らと会談し、「復興支援」継続を伝えました。五月下旬の福田康夫首相のアジア政策についての演説では、五つの課題の一つとして「平和協力国家」として「汗をかいていく」と表明。「テロとの戦い」を続けていくと述べています。(坂口明)

安倍前首相より油断ならない福田首相/山崎孝

2008-06-02 | ご投稿
昨日のブログで、石破茂防衛相は5月31日にシンガポールで開催中の「アジア安全保障会議」で講演し、自衛隊海外派遣を随時可能にする恒久法(一般法)制定に強い意欲を表明したことを紹介しました。この恒久法制定を目指す与党のプロジェクトチームが5月23日に初会合を開いています。それを伝えた5月26日付「しんぶん赤旗」の記事を紹介します。

 自衛隊の海外派兵を常時可能にする恒久法を検討する与党のプロジェクトチームが二十三日に初会合を開きました。

福田・太田会談 初会合は二月以来先送りされていましたが、十七日の福田康夫首相と太田昭宏・公明党代表との会談を機に動き始めたもの。週二回ペースで議論し、今国会中の要綱とりまとめをめざします。

 恒久法制定を最大のテーマとして四月に活動を再開した「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」も、週一回の学習会の一方で自民・民主・公明議員による法案づくりを検討しています。同会には与党から七十人以上が参加する一方、前原誠司民主党副代表、長島昭久同党副幹事長ら三十人以上の民主党国会議員が参加しています。

 恒久法検討の動きが活発化しているのは、来年一月の新テロ特措法の期限を考えれば、秋の臨時国会では活動継続の方策を確定しなければならないという“事情”があります。新テロ法の改定か恒久法かで与党内の意見は分かれるものの、福田首相らは民主党を誘い出せる恒久法推進に執着しています。

海外での武力行使 二十三日の与党のプロジェクトチームでは、「一般法(恒久法)の主要な論点」とするペーパーが配られました。与党が目指す恒久法の骨格を示すものです。重大なことは、恒久法が単に従来の海外派兵法の延長にとどまらず、これまで憲法に違反するとして認められてこなかった海外での武力行使に向けたものであることが大きく浮かび上がってきたことです。

 「主要な論点」では、「我が国が行う活動のメニュー(類型)」として、(1)停戦監視(2)人道復興支援(3)後方支援などに加えて、(4)警護(5)治安維持(6)船舶検査などを行うことが検討項目に加えられました。警護や治安維持、強制的な船舶検査は武力行使を伴うことからこれまでの海外派兵法では盛り込まれなかったものです。

 さらに「我が国が行う活動のメニューにあわせて、それに必要な武器使用権限(いわゆる『駆けつけ警護』や任務遂行のための武器使用など)についても検討が必要」だとしています。

 これらをあわせて考えるとどうなるか―。「警護」や「治安維持」活動は、怪しい人物に対する停止・身体検査・拘束のほか、住宅や建物への立ち入り、捜索・押収などの強制措置を中心内容とします。「それに必要な武器使用」を認めれば、“怪しい者”が抵抗したり、それを手助けする者がいる場合には武器を使用してもよいことになります。アメリカ軍がイラクなどで住民虐殺につながっている対テロ掃討作戦と同じです。憲法が禁じる海外での武力行使であることは明白です。

 「駆けつけ警護」は、同盟国の軍隊などが攻撃を受けたときに「駆けつけ」て反撃するもので、集団的自衛権の行使につながります。

 二十三日の会合では、「憲法の範囲内」「解釈改憲はおこなわない」などを検討の原則としましたが、検討内容は憲法の範囲をはるかに超えているのです。(中祖寅一)(以上)

【コメント】安倍前首相は、集団的自衛権について研究するための私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を設けて、憲法解釈を変更し、(1)公海上で自衛艦と並走中の米艦船が攻撃された際の反撃(2)第三国が発射し、米国を狙った弾道ミサイルに対するミサイル防衛(MD)システムでの迎撃(3)国連平和維持活動(PKO)などで、他国軍が攻撃を受けた場合、自衛隊が応援に駆けつけ支援するなどを可能にすることを検討しました。

福田首相のもとでは集団的自衛権に関係することを安倍前首相より進んだ形の与党のプロジェクトチームを設け民主党を抱き込んで恒久法を制定し、駆けつけ警護などの活動を行なえるようにしょうとしています。この点では安倍前首相より具体的な措置を取っており油断ならない政権です。このことを国民に知らせていかなければならないと思います。集団的自衛権行使可能にする改憲案を国会が発議して国民投票行なう方法より、国会議員のみの意思で決めてしまうことは許されません。海外での武力行使には国民の過半数を大きく超えています。民主主義に完全に悖ります。

与党のプロジェクトチームに乗った公明党は憲法9条を変えることに反対しながら9条の解釈を変えることには同意しているといえます。福祉の党を掲げていながら、障害者自立支援法や後期高齢者医療制度を推進したのと同じ体質です。これらは国民の批判を受けて、自らも見直しを行なわなければならない破目に陥っています。公明党は平和の党や福祉の党の看板は何のために掲げているのでしょうか。

「アジア安全保障会議」に思う/山崎孝

2008-06-01 | ご投稿
【石破防衛相:自衛隊機派遣見送り「過去の歴史に配慮」】(2008年5月31日付毎日新聞)

 【シンガポール松尾良】石破茂防衛相は31日、アジア・太平洋地域の国防相らが出席してシンガポールで開かれている「アジア安全保障会議」で、中国・四川大地震で自衛隊機派遣を見送ったことについて「日本が中国を支援する際、文化、伝統、民族性を理解し尊重しなければいけない」と述べ、日中の歴史的関係に配慮したことを明らかにした。

 これに対し、同席していた中国・人民解放軍の馬暁天副総参謀長は「中国の歴史、文化を理解してくれたことに感謝している」と謝意を示し、歴史問題と関連した中国国内の根強い反発が今回の派遣見送りに影響したことを示唆した。

 石破氏は「(特に)自衛隊機という要請だったわけではない」と指摘するなど、中国側への配慮を強調。馬氏も「日本の政府、軍を含む世界の救援物資と活動を歓迎している」と答え、国際緊急援助隊受け入れなどで良好に進んでいる日中関係に影響させない考えを示した。

 石破氏は、シンガポールのリー・シェンロン首相との会談で「中国の胡錦濤国家主席の訪日で強い信頼関係ができたが、日の丸をつけた自衛隊機が中国に行くのは簡単ではない」と述べた。

【恒久法制定に強い意欲 石破防衛相が講演】

【シンガポール31日共同】石破茂防衛相は31日午前(日本時間同)、シンガポールで開催中の「アジア安全保障会議」で講演し、自衛隊海外派遣を随時可能にする恒久法(一般法)制定に強い意欲を表明した。また集団的自衛権の行使を改憲や解釈変更で容認する場合は、集団的自衛権の名の下に侵略行為をすることがないよう、国会の関与など厳格な条件を定めるべきだとの見解を示した。

恒久法をめぐり、石破氏はインド洋での給油活動やイラクでの空輸活動の根拠法がそれぞれ来年1月と同7月に期限を迎えることに触れ「わが国は世界の平和と安定に責任がある。国際社会の協力要請に主体的に応えるためのメニューを示す一般法をつくるべきだ」と強調。武器使用基準の緩和や、人道復興支援と後方支援以外の活動も行うべきかなどに関して「真剣に議論すべきだ」と指摘した。

【コメント】石破茂防衛相は「日の丸をつけた自衛隊機が中国に行くのは簡単ではない」と述べました。これが日中の歴史を真っ当に認識している日本人の常識です。

ところが最近、裁判所は学校の卒業式で日の丸、君が代の強制に反対した教師に対して、日の丸、君が代の強制は個人の思想信条の自由を侵すことにはならないという判決を下しています。戦前は日本軍が占領地に真っ先に立てた日の丸は侵略のシンボルとなりました。この歴史を認識して日の丸の強制に違和感を持つのは個人の思想信条の部類に属する事柄です。ここのところを裁判所は理解していません。

「アジア安全保障会議」が開かれてアジアの国の軍事部門の首脳が集まって交流をしました。この一つを見ても、そして、5月26日、台湾の国民党の呉伯雄主席が訪中して「このチャンスをつかみ、歴史を正視し、未来を展望しよう」と述べたこと。5月27日、李明博大統領が訪中して、胡錦濤国家主席と会談し「南北対話を通じて共生の道を開く対北朝鮮政策を説明」し《両国が外交や安全保障など幅広い分野で協力する「戦略的協力のパートナーシップ」に格上げすることで合意》したこと。5月27日、ヒル国務次官補と北朝鮮首席代表の金桂冠外務次官と会談《北朝鮮の核計画申告と核施設無能力化に伴う「第2段階措置」の早期履行への協力を確認》したこと。最近の日中共同声明で日中は亜互いに脅威とならない確認をしたことを見れば、アジアは確実に大きな緊張緩和に向かっています。

このアジア情勢は国の基本を決めている憲法を変えて、日米同盟における集団的自衛権行使を可能にしなければならない必要性は見出しません。

今日要求されている国際貢献は、5月30日に閉幕した第4回「アフリカ開発会議」を見ても、現行憲法前文に掲げる「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」を謳った精神が今とても必要とされていることは明々白々です。

日本に対する軍事的な要求は、米国主導の泥沼に陥ったイラクやアフガニスタンでの「テロとの戦い」だけです。これらの「テロとの戦い」なるものは、テロリストと同じように住民を犠牲にした戦いです。このような性格のものに憲法解釈を変更して、自衛隊海外派遣恒久法を制定し参加する必要はありません。

石破茂防衛相は《集団的自衛権の行使を改憲や解釈変更で容認する場合は、集団的自衛権の名の下に侵略行為をすることがないよう、国会の関与など厳格な条件を定めるべきだとの見解》を示していますが、これは信用できません。なぜならつい最近も、宇宙空間の開発は平和利用に限るとした原則を破ったばかりです。日本は直接侵略行為を働かなくても米国に追従する自民党政権であるからです。日本政府は、如何なる国の政治的独立を侵してはならないとする国連憲章を破った米国のイラク戦争やアフガニスタンでの戦争に日本政府は現実に協力しています。

憲法による歯止めをなくせば、その時の政権に都合よく法律は変えられます。国民の圧倒的多数は海外での武力行使に反対しています。それにもかかわらず、戦後一貫して守ってきた海外での武力行使は出来ないとする憲法解釈を変えようとしていることも民意を重んじない自民党の性格を示しており、石破茂防衛相の言葉は信じられません。
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