いせ九条の会

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北朝鮮の核廃棄への道はまだ遠い道のりだがここまで来た/山崎孝

2008-06-20 | ご投稿
日本の安全保障にとって重要な要素である北朝鮮の核の放棄は、6者協議合意の第2段階の終章となる見通しが開け始めました。以下、二つの新聞報道をご紹介します。

(2008年6月19日読売新聞の情報)【ワシントン=黒瀬悦成】ライス米国務長官は18日、ワシントン市内の政策研究機関「ヘリテージ財団」で講演し、「北朝鮮が近く(放棄対象となる)核計画の申告書を(6か国協議議長国の)中国に提出する」との見通しを明らかにした。

長官はその上で、ブッシュ大統領が申告提出を受けて「北朝鮮に対するテロ支援国指定を解除する意向を議会に通告する」と述べた。

ブッシュ政権高官が、核申告に合わせ、テロ支援国指定解除の具体的見通しを明言したのは初めて。6か国協議の米首席代表のクリストファー・ヒル国務次官補は19日、東京での日米韓首席代表会合に出席し、20日には北京で同協議議長で中国首席代表の武大偉・外務次官と会談する予定で、北朝鮮の申告提出をにらんだ詰めの調整が行われる。

ライス長官によるとブッシュ大統領は、テロ支援国指定解除に加え、北朝鮮に対する敵国通商法の適用停止の意向も議会に通告する方針。

その上で、指定解除が発効するまでの45日間に、北朝鮮を除く6か国協議参加国と国際原子力機関(IAEA)が、無能力化が進められている寧辺(ヨンビョン)の核施設の現地査察や稼働記録など関連書類の精査、関係者への事情聴取などを行い、北朝鮮の申告内容が「完全かつ正確」かどうかを検証する。ライス長官はまた、北朝鮮の申告内容や検証への協力が不十分だった場合は、指定解除の撤回や再制裁、追加制裁を科すなどの「相応の措置を取る」と強調した。

一方、北朝鮮による日本人拉致問題についてライス長官は、米国が「日朝による対話促進を手助けした」と指摘し、北朝鮮との交渉で引き続き拉致問題を含む人権問題に配慮する姿勢を見せたものの、拉致問題の進展とテロ支援国指定解除の関連には具体的に言及しなかった。北朝鮮は6か国協議の合意に基づき、昨年末までに申告を提出することになっていたが、提出は大幅に遅れている。(以上)

【米、指定解除へ向けて布石】(6月20日付朝日新聞「時時刻刻」記事から抜粋)

 「北朝鮮が近く核計画の申告をし、それを受けて大統領が北朝鮮へのテロ支援国家の指定解除を議会に通告する」。ライス氏は保守系シンクタンク、ヘリテージ財団での講演で、解除方針に明確に踏み込んだ。

 米政府にとって指定解除は既定路線だった。だが、あえて「解除を通告する」と断言した背景には、非核化の「第2段階」の完了に向けた強い決意がある。

 米朝関係筋によると、北朝鮮は米国に対し、申告をする条件として指定解除の日時の「確約」を求めていた。米朝は申告の内容についてはすでにほぼ合意しているが、米政府は「申告内容を見て判断する」と公言してきた経緯がある。正式な申告前に具体的な解除日時を確約するのは難しい中で、ライス氏なりの誠意を示したといえる。

 日本に向けたメッセージとの側面もあった。19日、東京の外務省であった日米韓首席代表会合を終えた米国のヒル国務次官補は、拉致問題について記者団に「米国にとっても関心事だ。日本と緊密に連携していく」と言及。日本の懸念に一定の配慮を示した。

 しかし、ヒル氏が記者団に繰り返し強調したのは、6者がそれぞれ負っている「オブリゲーション(義務)」という言葉だった。北朝鮮が核計画を申告すれば、米国は約束どおり、テロ支援国家指定を解除せざるを得ない。そんな思いが強くにじんだ。

 米国内には、チェイニー副大統領や議会の一部議員ら、北朝鮮との積極対話政策に慎重な勢力も残る。朝鮮半島問題に詳しいマンスフィールド財団のフレーク所長は「政権内に、このまま進めるかどうかの議論があった」と指摘する。申告がまだ実現していないのもこうした強硬派の反対があったため、との見方がある。ライス氏の講演は、こうした政策論争に終止符を打とうとするものであった。

 ヒル氏は19日、「6者協議に専念すべき時だ」などと協議を進める必要性を強調。来年1月に終わるブッシュ政権の残り任期をにらみ、核廃棄を行う最終段階入りを急ぐ考えを示した。ライス氏も講演でこう触れた。「我々の政策で望むすべてを得られるのか。そうではない。だが、最終的な判断として、いろんな選択肢の中でこれが最善かどうか。答えはイエスだ」

一方、北朝発言を受け、指定解除に向けた確かな手応を感じたに違いない。韓国政府当局者は「申告の内容うんぬんはもとより、6者協議全体が北朝鮮に厳しいことを言う空気でなくなっている」と話した。