いせ九条の会

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国連の潘基文事務総長に関する報道と関連して/山崎孝

2008-06-28 | ご投稿
【北朝鮮核申告:国連総長「重要な進歩」 拉致問題に懸念】(6月28日の毎日新聞の情報)

 【ニューヨーク草野和彦】国連の潘基文(バンギムン)事務総長は28日の就任後初訪日を前に、日本メディアと国連本部で会見した。北朝鮮が26日行った核計画の申告を「重要な進歩だ」と評価する一方、日本人拉致問題について「日朝2国間対話を通じ、問題が解決されることを期待する」と述べるにとどまった。

 潘事務総長が日本人拉致問題に言及するのはまれだが、「懸念している」と語った。

 一方、北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)の主要議題の一つ、気候変動については「(問題解決に向けた)十分な合意がされていない」と不満を表明。「参加首脳らが温室効果ガスの削減に向けた政治的決意を示すべきだ」と述べ、「議長国・日本の指導力発揮」を強く促した。

 また、日本政府が検討しているスーダンでの国連平和維持活動(PKO)への自衛隊派遣について「歓迎する」と評価。具体的には後方支援や技術面での貢献を求めた。

 潘事務総長は日中韓歴訪後、サミット出席のため7月7日に再来日する。(以上)

【コメント】日本のメディアの報道は、米国政府の北朝鮮のテロ支援国家指定解除との関連で、拉致問題を解決するための圧力が失われる懸念を指摘する傾向が強く、今回の進展は東アジア地域が大きな緊張緩和の方向に向かっていること、東北アジアの平和と安定という観点で捉える視点が弱いと思います。

潘事務総長は、6月27日、ジャパン・ソサエティの講演で「6者協議を通じて北朝鮮問題に正しく対処できるなら、このプロセスをより広い安全保障協力の枠組みに格上げすることは検討に値する」(6月28日の朝日新聞の情報)と述べています。

私は拉致問題を話し合う場が、6者協議の進展によって設けられた作業部会によってしかないことを認識する必要があると思います。2007年2月13日の6カ国共同文書の採択によって、寧辺の核施設閉鎖が合意され、朝鮮半島非核化やエネルギー・経済協力、米朝・日朝の関係正常化など課題別の5つの作業部会が設置されています。この作業部会が出来るまで北朝鮮と交渉する場がありませんでした。このことを忘れて拉致被害者家族会の事務局長は拉致問題の交渉を「政府は6者協議の枠組みから脱退する覚悟で臨んでほしい」との意見を出しています。この意見は拉致問題の交渉の場を失う危険性があり、交渉の場を失い経済制裁を続けて相手がそれに屈服することを待つしか方法がなくなります。この方策は安倍前首相が試した方策で拉致問題を膠着させてしまいました。北朝鮮の核廃棄の問題、日朝正常化の問題、拉致問題とこの作業部会を活用して6者協議と歩調を合わせながら交渉することが一番の良い方法だと思います。

テロ指定国家を解除されれば、北朝鮮は国際社会の一員としての待遇を受け、国際金融機関による支援対象になります。具体的には(1)世界銀行などから融資などを受けられる(2)先端技術の対北朝鮮輸出の制限が緩和される(3)米朝間で商業金融取引が活発化する--などに道が開けます。これを考えない感情的で論理性を欠いた意見で残念です。

潘事務総長は、日本政府が検討している(政府は決定)スーダンでの国連平和維持活動(PKO)への自衛隊派遣について「歓迎する」と述べています。私は紛争当事者が停戦に合意して国際部隊を受容れているPKOであれば、後方支援や技術面の協力は行うべきだと考えます。