いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
会の趣旨に賛同される方、メールでご投稿ください。

「アジア安全保障会議」に思う/山崎孝

2008-06-01 | ご投稿
【石破防衛相:自衛隊機派遣見送り「過去の歴史に配慮」】(2008年5月31日付毎日新聞)

 【シンガポール松尾良】石破茂防衛相は31日、アジア・太平洋地域の国防相らが出席してシンガポールで開かれている「アジア安全保障会議」で、中国・四川大地震で自衛隊機派遣を見送ったことについて「日本が中国を支援する際、文化、伝統、民族性を理解し尊重しなければいけない」と述べ、日中の歴史的関係に配慮したことを明らかにした。

 これに対し、同席していた中国・人民解放軍の馬暁天副総参謀長は「中国の歴史、文化を理解してくれたことに感謝している」と謝意を示し、歴史問題と関連した中国国内の根強い反発が今回の派遣見送りに影響したことを示唆した。

 石破氏は「(特に)自衛隊機という要請だったわけではない」と指摘するなど、中国側への配慮を強調。馬氏も「日本の政府、軍を含む世界の救援物資と活動を歓迎している」と答え、国際緊急援助隊受け入れなどで良好に進んでいる日中関係に影響させない考えを示した。

 石破氏は、シンガポールのリー・シェンロン首相との会談で「中国の胡錦濤国家主席の訪日で強い信頼関係ができたが、日の丸をつけた自衛隊機が中国に行くのは簡単ではない」と述べた。

【恒久法制定に強い意欲 石破防衛相が講演】

【シンガポール31日共同】石破茂防衛相は31日午前(日本時間同)、シンガポールで開催中の「アジア安全保障会議」で講演し、自衛隊海外派遣を随時可能にする恒久法(一般法)制定に強い意欲を表明した。また集団的自衛権の行使を改憲や解釈変更で容認する場合は、集団的自衛権の名の下に侵略行為をすることがないよう、国会の関与など厳格な条件を定めるべきだとの見解を示した。

恒久法をめぐり、石破氏はインド洋での給油活動やイラクでの空輸活動の根拠法がそれぞれ来年1月と同7月に期限を迎えることに触れ「わが国は世界の平和と安定に責任がある。国際社会の協力要請に主体的に応えるためのメニューを示す一般法をつくるべきだ」と強調。武器使用基準の緩和や、人道復興支援と後方支援以外の活動も行うべきかなどに関して「真剣に議論すべきだ」と指摘した。

【コメント】石破茂防衛相は「日の丸をつけた自衛隊機が中国に行くのは簡単ではない」と述べました。これが日中の歴史を真っ当に認識している日本人の常識です。

ところが最近、裁判所は学校の卒業式で日の丸、君が代の強制に反対した教師に対して、日の丸、君が代の強制は個人の思想信条の自由を侵すことにはならないという判決を下しています。戦前は日本軍が占領地に真っ先に立てた日の丸は侵略のシンボルとなりました。この歴史を認識して日の丸の強制に違和感を持つのは個人の思想信条の部類に属する事柄です。ここのところを裁判所は理解していません。

「アジア安全保障会議」が開かれてアジアの国の軍事部門の首脳が集まって交流をしました。この一つを見ても、そして、5月26日、台湾の国民党の呉伯雄主席が訪中して「このチャンスをつかみ、歴史を正視し、未来を展望しよう」と述べたこと。5月27日、李明博大統領が訪中して、胡錦濤国家主席と会談し「南北対話を通じて共生の道を開く対北朝鮮政策を説明」し《両国が外交や安全保障など幅広い分野で協力する「戦略的協力のパートナーシップ」に格上げすることで合意》したこと。5月27日、ヒル国務次官補と北朝鮮首席代表の金桂冠外務次官と会談《北朝鮮の核計画申告と核施設無能力化に伴う「第2段階措置」の早期履行への協力を確認》したこと。最近の日中共同声明で日中は亜互いに脅威とならない確認をしたことを見れば、アジアは確実に大きな緊張緩和に向かっています。

このアジア情勢は国の基本を決めている憲法を変えて、日米同盟における集団的自衛権行使を可能にしなければならない必要性は見出しません。

今日要求されている国際貢献は、5月30日に閉幕した第4回「アフリカ開発会議」を見ても、現行憲法前文に掲げる「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」を謳った精神が今とても必要とされていることは明々白々です。

日本に対する軍事的な要求は、米国主導の泥沼に陥ったイラクやアフガニスタンでの「テロとの戦い」だけです。これらの「テロとの戦い」なるものは、テロリストと同じように住民を犠牲にした戦いです。このような性格のものに憲法解釈を変更して、自衛隊海外派遣恒久法を制定し参加する必要はありません。

石破茂防衛相は《集団的自衛権の行使を改憲や解釈変更で容認する場合は、集団的自衛権の名の下に侵略行為をすることがないよう、国会の関与など厳格な条件を定めるべきだとの見解》を示していますが、これは信用できません。なぜならつい最近も、宇宙空間の開発は平和利用に限るとした原則を破ったばかりです。日本は直接侵略行為を働かなくても米国に追従する自民党政権であるからです。日本政府は、如何なる国の政治的独立を侵してはならないとする国連憲章を破った米国のイラク戦争やアフガニスタンでの戦争に日本政府は現実に協力しています。

憲法による歯止めをなくせば、その時の政権に都合よく法律は変えられます。国民の圧倒的多数は海外での武力行使に反対しています。それにもかかわらず、戦後一貫して守ってきた海外での武力行使は出来ないとする憲法解釈を変えようとしていることも民意を重んじない自民党の性格を示しており、石破茂防衛相の言葉は信じられません。
削除