いせ九条の会

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現在の国際社会の対北朝鮮政策は、北朝鮮包囲網なのか/山崎孝

2008-02-06 | ご投稿
【韓国政権交代 対北朝鮮包囲網を再構築せよ】(2月6日付・読売社説)

韓国の政権交代を機に、日韓両政府は両国関係を抜本的に改善すべきだ。日米韓などによる「北朝鮮包囲網」も再構築し、核問題の前進につなげたい。

盧武鉉大統領時代の5年間、日韓関係は歴史認識や竹島の問題で冷え切った。だが、李明博次期大統領は関係強化に強い意欲を見せている。歴史問題に関しても、「新しい成熟した韓日関係のため、私は、謝罪せよなどの言葉は使いたくない」と強調する。

1月中旬に来日した実兄の李相得国会副議長も、福田首相らと「未来志向の日韓新時代」を作ることで一致した。

2月25日の大統領就任式の際は、福田首相が訪韓し、2年半以上中断しているシャトル外交を再開する。4月の韓国総選挙後と、7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)には李次期大統領の来日が検討されている。頻繁な首脳外交を通じて日韓関係を緊密化させたい。

日韓両国が最優先で取り組むべきは、北朝鮮政策の戦略的調整である。

盧政権は、一方的な北朝鮮支援になりがちな融和政策に固執し続けた。米国や日本との安全保障関係はぎくしゃくし、米国はアジア地域で「日米韓」より「日米豪」の枠組み重視に転じた。日米韓の足並みの乱れは、核問題で北朝鮮の身勝手な外交を許す一因となっている。

北朝鮮は、昨年末までに実施すると約束した核計画の「完全で正確な申告」をいまだに実施していない。日米韓は、緊密な協議を重ね、北朝鮮に核放棄プロセスの早期履行を迫らねばならない。

李次期大統領は、融和政策を見直し、北朝鮮への大規模な経済支援には核放棄が必要との考えを示している。400億ドル規模の国際協力基金を設立し、うち100億ドルは日朝国交正常化後の日本の経済協力を充てる、という構想もある。

日本の経済協力の規模は無論、日朝協議で決めるべきものだが、核を放棄すれば、関係国が協力して北朝鮮を支援する、という構図は自然なものだ。

その場合でも、日本の経済協力の前提は、核だけでなく、拉致やミサイルの問題の包括的な解決だ。韓国からも北朝鮮に拉致問題の進展を促すなど、日韓の連携を拉致問題にも活用したい。

経済界出身で前ソウル市長の李次期大統領は、経済重視の姿勢も鮮明にしている。当面は、2004年11月から中断している日韓の自由貿易協定(FTA)交渉の再開が重要課題となる。

日本と韓国はそれぞれ互いに、中国、米国に次ぐ第3の貿易相手国である。市場開放による双方の利益は大きい。FTA交渉を早期に再開すべきだろう。(以上)

読売新聞の社説は《核を放棄すれば、関係国が協力して北朝鮮を支援する、という構図は自然なものだ》と述べていますから、社説の見出し、北朝鮮包囲網という表現がふさわしいとは思えません。今日の国際社会の北朝鮮政策は圧力を主体とした北朝鮮包囲網ではなく、対話を主体とした北朝鮮を説得する共同努力の輪と言えます。

社説は《日米韓の足並みの乱れは、核問題で北朝鮮の身勝手な外交を許す一因となっている。》と述べますが、6カ国協議に合意した北朝鮮は身勝手な行動はできません。6カ国協議の原則である行動対行動に縛られ、核施設の無能力作業を進めています。

社説は《李明博次期大統領は関係強化に強い意欲を見せている。歴史問題に関しても、「新しい成熟した韓日関係のため、私は、謝罪せよなどの言葉は使いたくない」と強調する》と述べていますが、この李明博次期大統領の言葉は、日本の政治家が日本政府の公式見解から逸脱しないことを前提にした言葉ですから、社説はこのことも指摘した上で李明博次期大統領の姿勢を強調すべきです。

朝鮮半島情勢をみるうえで肝心なことは、朝鮮半島情勢を緊張から緊張緩和へと向かわせたのは、2代にわたる韓国政権の宥和政策です。6カ国協議の前進もブッシュ政権の宥和政策への転換が大きな推進力となっています。

社説の《日韓両国が最優先で取り組むべきは、北朝鮮政策の戦略的調整である》という主張は、6カ国協議を前進さす立場での戦略的調整でなければならないと思います。この立場は圧力一辺倒の日本の対北朝鮮政策の変更が不可欠になると思います。

朝鮮半島情勢の本流は、宥和政策でつながった南北縦断鉄道(京義線)を利用して、中国入りする南北合同オリンピック応援団の結成(2月4日合意)という動向だと思います。

【参考情報】1月22日共同通信配信記事 ロイター通信によると、米国務省の対テロ対策責任者のデル・デーリー調整官は22日、北朝鮮はテロ支援国家指定解除に必要な用件を「満たしている」と述べ、日本人拉致問題が解決していなくても解除は可能との見方を明示した。

解除は、6カ国協議の合意に基づき昨年末までに実施されるはずだった「すべての核計画申告」が遅れていることから実施されていない。

同調整官の発言は、申告さえ行えば解除に向けた条件は整うとの米政府の姿勢を鮮明にし、北朝鮮側に申告に向けて歩み寄るよう呼び掛ける狙いがあるとみられる。