いせ九条の会

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ヒル国務次官補 実効性ある検証枠組みの確立が不可欠/山崎孝

2008-12-04 | ご投稿
【「次期政権でも方針不変」 6カ国協議でヒル氏】(2008年12月3日東京新聞のHPより)

 北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補は3日、都内で共同通信と会見し、同協議をめぐる米政府の立場が「オバマ次期政権でも大きく変わるとは思わない」と言明、来年1月の米政権交代後も、多国間協議の枠組みで外交解決を図る方針が継続されるとの見通しを示した。

 また、8日に始まる見通しの同協議首席代表会合や4日からの米朝協議で最大の焦点となる核計画申告の検証方法に関し、北朝鮮との合意に基づいた実効性ある検証枠組みの確立が不可欠だと強調した。

 検証に欠かせないサンプル(試料)採取をめぐり、米朝間の主張に食い違いが生じた経緯を念頭に、明確な合意形成で実際に機能する検証体制の構築を目指す決意を示した発言。寧辺の核関連施設など現地での検証実施に一定の道筋を付けた上で、次期政権に引き継ぎたい考えとみられる。

 次官補は首席代表会合で検証議定書を作るとし「後になって北朝鮮側に『合意した覚えはない』と言わせないよう(議定書の解釈を)明確にしなければならない」と説明。「議定書より、実際の検証作業に着手することが重要」とも述べ、検証実施段階へ早期に移行する必要性を指摘した。

 また国務省がオバマ次期大統領の政権移行チームに6カ国協議の進ちょく状況を説明するなど、引き継ぎを進めていることを明らかにした。

 拉致問題に関しては「進展があるとは聞いていない」と述べる一方「被害者の消息を解明しなければならない。北朝鮮側との交渉のたびにこの問題を提起している」と言及。(共同)

【産経抄】11月29日 産経ニュース(抜粋)

▼なぜ金正日総書記は核兵器を持ちたがるのか。航空自衛隊の田母神俊雄・前幕僚長は、1発でも米国に届く核ミサイルを北朝鮮が開発すれば、「(米が)武力で制圧するのは、絶対できなくなるから」と小紙のインタビューに明快に答えている。

▼「核兵器を持たない国は持った国の意思に従属させられる」という田母神氏の指摘は一面の真理を突いている。むしろこちらで論文を書いてもらいたかったが、悪意ある隣人が核兵器保有を黙認されればどうなるか。日米同盟の根幹を揺るがしかねないヒル氏の功名心にかられた暴走を外務省は全力で止めてほしい。(以上)

【コメント】「産経抄」の考え方の根底にあるのは、ネオコンの考え方である、話し合うことよりも圧倒的な力を示してこそ目的が達成できるという考え方だと思われます。この考え方はイラク戦争のベースとなり、破綻した考え方です。

「日米同盟の根幹を揺るがしかねないヒル氏の功名心にかられた暴走を外務省は全力で止めてほしい」という主張は全く的を外れた主張です。ヒル氏の行動は米国の国務省の方針に基づくものであり、6カ国協議という枠組みの参加国の同意が得られなければ進むことが出来ないものです。だから、日本と韓国の懸念したことについて、共同通信との会見で「実効性ある検証枠組みの確立が不可欠」と述べています。

「日米同盟の根幹を揺るがしかねない」とは奇妙な考えです。この考えを裏返しすれば、6カ国協議の最終目標である東アジアの平和と安定が構築できれば、日米安保は、極東地域の脅威から日本を守るとしてきた大義を失うことです。軍事的な政策より対話により勝ち取られる平和こそ尊いとしなければならないことなのに不思議な物言いといえます。

「産経抄」の筆者のおそらく6カ国協議が進展することは「話し合うことよりも圧倒的な力を示してこそ目的が達成できる」という世界観が崩れるあせりがあるのかも知れません。これは日本国憲法の理念と対極にある世界観です。軍事力で物事を解決しても良いとする考え方は、目的を達成するためには、民衆の犠牲も仕方がないとする考え方です。

私は6カ国協議がスムーズにいかなくても、粘り強く続けられることは東アジアの緊張緩和に役に立っていると考えます。