いせ九条の会

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ジレンマを抱え込んだまま越年する安倍首相/山崎孝

2006-12-30 | ご投稿
私は以前に、安倍晋三氏が9月1日に発表した政権公約の中の「文化・伝統・自然・歴史を大切にする国」と「中国、韓国等近隣諸国との信頼関係の強化」は、“歴史を大切にする仕方”によっては、対立する関係になると述べました。安倍氏は首相になってからは周知のように、自らの自虐史観批判を封印して、今までの政府見解を踏襲することを明らかにして、中国と韓国との首脳会談の実現が出来ました。この言動に対して従来から安倍氏の歴史観を支持してきた勢力の不満が高まっていることなどを指摘した報道があります。(12月29日「しんぶん赤旗」ニュースより)

【あいまい戦略とアジア外交 安倍政権 米と財界は歓迎するが】

 支持率低下に頭を痛める安倍政権にとって唯一のプラス材料といわれるのがアジア外交です。しかし、アメリカには歓迎される一方、政権のコア(堅い)支持層は――。

 「安倍首相はリスクの大きな選択をした。日中首脳会談の実現まではよいとして、来年は厳しい局面がくる。参院選後にはコアの支持層の突き上げがきつくなる。棚上げした靖国問題の決着を迫られる」。首相に近い自民党国会議員はこう指摘します。

 安倍氏が、靖国神社に参拝するともしないとも明言しない形でこぎつけた日中首脳会談。安倍氏を支持してきた日本会議など右派保守層に不満がくすぶっています。

 安倍首相は、首相就任以前、対中強硬論者の中心で、「対中国原理主義者」といわれました。九月の自民党総裁選で、「中国が軍国主義者と一般国民を分ける認識を示したことは事実だが、日本は合意していない」と発言、一九七二年の日中国交正常化の原点を否定してみせたものです。

 しかし日中国交正常化は、日本が侵略戦争の責任と反省を表明、中国が戦争責任は一部の戦争指導者にあり、一般の日本国民も被害者だったとして賠償請求を放棄して実現しました。

 ある国際政治学者は安倍氏について「発展する中国を認めたくなく、反発と警戒心が先に立つ。日本が一方的に譲歩を強いられているとの思いから中国への対抗心をかき立てる。歴史認識、アジア観の根底にそれがある」と指摘します。

 次期首相が確実視されていた安倍氏の発言がメディアを動かし、右派論客、右派保守層が呼応して排外的ナショナリズムを増幅してきました。

 しかし首相就任後、中国と戦略的互恵関係を打ち出した安倍首相。靖国参拝をすれば自身の外交成果を台無しにしてしまうというジレンマを抱え込んでいます。

 安倍政権成立の内外要因が、アジア外交を拘束しています。

 安倍首相の転換について韓国の知日派の一人、陳昌洙・世宗研究所日本研究センター長は十一月下旬、都内での講演でこういいました。「小泉首相の構造改革を引き継いだ国内政治で点数を得るところはなく、アジア外交でしかポイントをあげることはできない」

 小泉政権で行き詰まったアジアとの関係改善は、日本財界の強い意向でもあります。「日中首脳会談をやったことで、安倍政権の役割の半分は終わった」。財界からはこんな声が漏れてきます。

 アメリカのブッシュ政権は安倍政権発足に強い影響を与えました。靖国参拝問題で緊張関係がつづく日中関係でアメリカは何をするべきか。九月中旬、安倍首相と親しいマイケル・グリーン前米国家安全保障会議アジア上級部長が米国議会で証言しました。(1)日中関係の険悪化は、米国の利益にならないことを明確にする(2)日本に米国の対中戦略を説明し、理解を得る――。

 中国・アジアの安定と発展はアメリカの国益に直結しています。北朝鮮問題や東アジア共同体構想などを抱えるアジアで信頼されていないアメリカにとって、日本はアメリカのアジア戦略の土台です。

 今月はじめ、ニューヨーク。アーミテージ元国務副長官は講演でいいました。アメリカにとって日本が重要なのは「価値観を共有しているからだ」。アメリカのアジア戦略に沿って始動した安倍・アジア外交への評価です。(以上)

安倍政権を支えるために自らが選任した、中川秀直自民党幹事長と中川昭一自民党政調会長の“政策面を仕切る主導権争い・さやあて”があると報道されています。そして、マスメディアは小泉前政権の政策の負の部分もよく取り上げ、庶民は肌で負の部分を感じるようになっています。安倍政権は小泉前政権の経済政策を継承していこうとしていますが、これもジレンマの一つではないかと思います。

安倍政権は、衆院議員選挙で圧勝した小泉前政権からの余勢に乗って教育基本法の改定し、防衛庁を「省」に昇格させ、イラクの米軍を支援する自衛隊の海外活動まで本来任務にしてしまいました。

しかし、安倍政権は劇場型政治の演出に成功はしていません。国民の多数が政権党の政策に付和雷同をしていないこの機を生かして、平和憲法を守る運動を進めていかなければと思います。

前回に紹介しましたようにベートーヴェンは、「内の平和」は心の平和である。「外の平和」は自分の外部の、つまり社会の平和である。その二つは別のものではありえない。心の安らぎは、社会の平和がなくてはありえない。もし心の救いを求めるならば、それをとりまく社会の平和も一緒に実現するのではなくてはならない、と考えました。

先覚的な人々は、平和を破壊する政府の政策が決定される前から、想像力を働かせ危険を感じて自身の心の平穏を失い始めますが、多数の庶民は自分の肌で感ずるようになると、政府の政策が変だと「外の平和」の大切さを気づくケースが多いです。これでは遅すぎます。

NHKの番組で、脚本家が戦時中の日本の状況を丁寧に描きたかったと言われた「純情きらり」でも、1931年の満州事変、1937年の盧溝橋事件の頃は、社会の状況はまだ穏やかに描かれています。日中戦争が泥沼に陥る時代になると、主人公の周辺で出征兵士を見送る情景がよく描かれるようになり、太平洋戦争が始まると、極端な物資の不足と空襲の状況が描かれ、社会の平穏と多数の日本人の心の平穏を失っていきます。

米国のイラク戦争では、戦争を始めた当初は愛国心の熱気に包まれて米国人の多数、大半のマスメディアまでイラク戦争を支持しました。しかし、戦争が泥沼にはまると米兵の戦死者の増加やハリケーンの襲来で露呈した戦争政策の影響で、米国人の心の平穏は奪われました。複数の有力な米紙は、打ち鳴らされる戦争の銅鑼の音に政府のイラク政策への疑問がかき消されてしまったと反省をしました。

現在の日本人は憲法を変えることは、今年の朝日新聞の世論調査では、変えることには賛成する人も憲法9条を変えることには反対しています。12月24日の「いせ九条の会」の憲法を守る賛同署名でも、私たちが訪問した家の半数は憲法を守る立場を表明しました。このように憲法の平和理念はまだ失われていません。

追伸 私の本年のブログへの投稿は終わりたいと思います。皆様が良いお年を迎えられることを祈念いたします。