いせ九条の会

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言論の自由へ権力の介入について/山崎孝

2006-08-27 | ご投稿
徳川幕府の政策は「よらしむべし、しらしむべからず」だったと言われています。この基本的な考え方は、今でも権力を握る側に生きていること。ただし、今日では権力の側には都合よく加工・操作された情報はマスメディアを利用して盛んに流すこと。これに対抗するには、自由と民主主義・平和主義を基本にした情報を独自に民衆に伝達しなければならない。そのひとつにビラ宣伝があることを私たちは周知しています。

このビラ配布に対する国家権力の介入は、自衛隊の戦争イラク派遣の時期から目立ち始めています。しかし、一般紙ではあまり報道がなくて報道しても小さな扱いなので、あまり知られていません。8月25日「しんぶん赤旗」電子版に共産党の活動家に対する権力の介入が、まとまった形の報道がされていましたから紹介します。以下からは記事の文章です。

 ビラの配布という市民の日常の当たり前の行為が不当にも起訴され裁判となっている四つの事件が、現在きわめて重要な局面を迎えています。

 二〇〇三年いっせい地方選挙で大分県豊後高田市の日本共産党・大石忠昭市議が、告示前に後援会ニュースを配布したことを戸別訪問、文書違反、事前運動として起訴された大石事件で、大分地裁が今年一月、罰金十五万円、公民権停止三年の不当判決を出しました。

 「選挙の自由をひろげ大石さんを守る会」は七月に開始された控訴審で、さらに公正裁判を要求する署名を大きく集中することなど、世論と運動を広げるために奮闘しています。

 国公法弾圧堀越事件と世田谷国公法事件は、目黒社会保険事務所勤務の堀越明男さんが〇三年十、十一月、厚生労働省勤務の宇治橋眞一さんが〇五年九月、いずれも休日、居住地や職場から遠く離れた場所で職務と無関係に、「しんぶん赤旗」号外などを集合ポスト等に投函したことが、国家公務員法・人事院規則の政治活動の制限違反として起訴されたものです。

 堀越事件は、警視庁公安部主導の大がかりな尾行など捜査の違法性や、国公法は憲法、国際自由権規約に違反、職務の公正な執行を侵害しておらず罰するに値しないなどを論証しましたが、六月に有罪判決が出されました。有罪の理由は、勤務時間外でも公務員の政治活動を少しでも認めれば、それが累積して「行政の中立的運営に対する国民の信頼を損なう」という時代錯誤のものでした。ところが、罰金十万円に執行猶予二年という異例の判決で、有罪の理屈がいかに根拠がないかを自認、ここに弁護側の立証と支援運動の成果が表れています。弁護団と「国公法弾圧を許さず、言論表現の自由を守る会」は、控訴審で一審判決を全面的に打ち破るためにとりくみをいっそう強化することにしています。

 世田谷国公法事件の公判では、住居侵入で逮捕しながら国公法違反で起訴したことに対し、集合住宅の郵便受けへのビラの投函という、もともと住居侵入に当たらない行為で逮捕して集めた証拠をもとに、国家公務員だからと国公法違反で起訴したことの不当性、国公法が憲法と国際自由権規約に違反することを立証するために全力をあげています。

 さらに、葛飾マンションビラ配布事件は、〇四年十二月、葛飾区の後援会員・荒川庸生氏が開放型マンションの各戸郵便受けに日本共産党の葛飾区議団だよりなどを配布したことを住居侵入だとして起訴されたもので、東京地裁の判決が二十八日に言い渡されます。マンションの郵便受けに政党の政策や活動を知らせるビラの配布は、何よりも憲法の保障する言論・表現、政治活動の自由として最大限に尊重されなければなりません。「葛飾・ビラ配布の自由を守る会」は裁判勝利をめざす7・19総決起集会を成功させ、わが国に基本的人権を根づかせようと運動を強めています。

 ビラ配布に対する弾圧は、国政や地方政治の民主的改革を願う国民の要求と運動を抑えつけようとする攻撃にほかなりません。ビラ配布四裁判に勝利することは、私たちの要求と運動を発展させるための言論表現の自由と権利を確立するたたかいです。

 国民救援会などで、これら言論弾圧四事件のネットワークづくりの努力もすすめられ、各地で新たな支援の輪が広がっています。いまこそ、憲法改悪の動きを打ち破り、わが国に言論表現の自由、選挙・政治活動の自由、公務員の市民的政治的自由を確立するたたかいとして、国民的な世論と運動を発展させようではありませんか。(日本共産党法規対策部 岡田光司)(以上)

本年6月に発表された日米共同文書「新世紀の日米同盟」には、自由、民主主義、市場経済、法の支配、人間の尊厳及び人権といった価値観を共有すると謳われていました。

しかし、日本は自由と民主主義、法の支配、人間の尊厳及び人権といった権利は侵食されています。多様な価値観を基礎におく民主主義社会にとって言論の自由は欠かせないものです。法の支配の問題では、裁判所は憲法判断を回避する傾向にあります。人間の尊厳及び人権の問題では、毎年、3万人は超す自殺者の中に市場原理主義のもとで経済的破綻が理由で自殺を選んでしまった人たちが多く存在しています。

日本は世界に向かって、自由と民主主義、法の支配、人間の尊厳及び人権を大切にしていると言える資格があるのでしょうか。

自由と民主主義、人間の尊厳及び人権など、そして戦争はしないとした憲法の規定は人間の尊厳を最も大切にする理念だと思います。その憲法を「占領下でできた。憲法改正についてしっかり議論したい」と言って、先日は「憲法改正の指導権を発揮する」と発言する人が与党の総裁に一番有力されています。これからの日本の自由と民主主義の行方が懸念します。

ビラ配布弾圧事件に関る公務員は、憲法第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ、の条文の規定をよく認識して欲しいと思います。