静かの海

この海は水もなく風も吹かない。あるのは静謐。だが太陽から借りた光で輝き、文字が躍る。

神の国アメリカ(7)

2009-09-28 11:06:02 | 日記
 7 神の恵みのもとアメリカは世界の指導者になる

 オバマ氏が大統領就任演説の原稿を自身で書いたか否かは知らない。彼がその全文を全く自分の言葉で語りえたかどうか、それはは疑問である。選挙中の演説に比べても、内容・口調とも迫力に欠けていた。最初の方で率直に近年のアメリカ政治の失政を指摘したことは当然至極。一方で、自国の歴史の美化も多かった。だがベトナム戦争でのケサンの戦死者をも称えようとする姿勢はどこから出てくるのだろうか。ファシズムと共産主義を同列に扱うずさんさ。イスラムの”指導者”たちに対するお説教じみた言説、「握りこぶしをほどくならば、我々も手を差し伸べる」というような世界の”指導者”ぶり。
 演説の結語はこうだった。「地平線と神の恵みをしっかり見据えて、自由という偉大な贈り物を受け継ぎ、未来の世代にそれを確実に引き継いだ、と語られるようにしよう」と。自由は神の恵み、贈り物なのだ・・・そういう考えを自分たちが持つことは自由だろう。だが、そういう思想を他に押しつけることはやめにしてもらいたい。自由はかちとるものだという考えもある。神からのプレゼントだなどという安易な考えはごめんこうむる。辺見庸氏がかつてアメリカのアフガン攻撃を批判して言った言葉がある。「建国以来、200回以上もの対外出兵を繰り返し、原爆投下を含む、ほとんどの戦闘行為に国家的反省というものをしたことのないこの戦争超大国に、世界の裁定権を、こうまでゆだねていいものだろうか」。オバマ大統領は原爆投下にいくらかの反省を示したようにも見える。だが基本的には辺見氏のいうとおりである。オバマ氏はアフガン攻撃を止めるどころか更に規模を拡大し、民主党新政権誕生に配慮は示しながらも「同盟国」日本にも協力を強制しようとする姿勢に変わりはない。
 アメリカ西海岸の町サンディエゴに「創造と地球史博物館」があり、全地球の歴史を一万年足らずとして展示している。館長は「生物は進化で生まれたのか,神が造ったのか,誰も見たものはいない。私たちは創造論が正しいと思って、科学として研究している」と言ったという。先に紹介したアームストロロングの99%という説が正しいかどうかはわからないが、高等教育を受けた人びとでも多くがそのように信じているという。こういうアメリカの実情はしばしば伝わってくる。
 元コロンビア大学教授のエルヴィン・シャルガフ氏は大なる皮肉屋である。アメリカ大統領(多分レーガン大統領)が「私たちアメリカ人は、この世の罪と悪に立ち向かうよう聖書と主イエスに命じられている」と述べたという。そこでシャルガフ氏は自分の欽定訳聖書を調べてみたが、その聖書の中にはアメリカに関することは何も書かれていなかったという(シャルガフ『重大な疑問』)。おそらくブッシュ氏もそれに輪をかけたようなことを言っていたのだろう。オバマ氏が左手を置いたリンカーン愛用の聖書にもおそらくそんなことは書いてなかっただろうし、オバマ氏はそれほど無知厚顔(厚顔無恥の変形)ではないと思う。シャルガフ氏は、アメリカはマニ教的二元論の国だという。また、カルヴァン主義の遺産がそれと何らかの関係があるかもしれないという。ピューリタンはカルヴァン主義と密接な関係がある。善と悪、正義の味方とならず者国家。
 オバマ大統領は保守主義者のみならず民主党内からも批判・非難を浴び、支持率が低下しつつあるという。「はじめに」で述べたように、彼は「銃や信仰にしがみつく」人たちへの批判を引っ込めた。だが前途は容易ではない。
(オバマ大統領の就任式と就任演説を巡ってつたない感想を述べた。ひとまずこの項を終わりにしたい)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿