静かの海

この海は水もなく風も吹かない。あるのは静謐。だが太陽から借りた光で輝き、文字が躍る。

s08 古代国家ペトラの遺跡

2016-02-28 15:04:10 | 日記

  古代国家ぺトラの遺跡

  シリアのパルミラは砂漠の中に咲いた都市であったが、ヨルダンにあるぺトラは山に囲まれた都市であった。

 「ペトラという名の町に住むのはナバタエ人だ。その町は幅が2マイルにも足りない深い谷にあって、その谷の間を一本の川が流れているが、そこは近づくことが出来ない山々にかこまれている。ペトラで2本の道、シリアからパルミラに通ずるものと、ガザから来る道とが会する」(『博物誌』)。

 千年以上前からペトラ周辺には幾つもの種族がいたが、前一世紀頃ナバタエ人が支配する都市になったらしい。だがまもなくローマに支配されローマの一都市となった。

プリニウスは幅2マイルに足りないというが、繁栄期には20万の人口を擁したとも言われ。信じがたい気もする。しかし交通の要衝として栄え周辺に領土を拡張し、ローマの文物を取り入れ、灌漑用水路も整備するなど都市機能も整っていたようである。山中なので農業には向かないが果樹などは栽培されていた。プリニウスは、このペトラからもたらされるミュロバラヌム<香果>という果実は香り豊かで、その名の通り絶品であると称揚している。ペトラの発掘はまだわずかだが、それでも多くのローマ風の都市作りの足跡を見ることができる。

 

1、 断崖の中を行く

山に囲まれたぺトラに入る道は幾つかあったようだが、今は大方がシクと呼ばれる断崖に挟まれた狭い道を辿ってゆく。この地方の山塊は水成岩だから比較的柔らかで、しかもこの地はしばしば大雨によって洪水にも見舞われた。シクという隧道のような道は、激しい水流によって穿かれたのだろ。 

 

  

2、ぺトラの表徴カズネ

 シクを歩いてゆくと突然視界が開き、真正面にカズネ・ファルウン(ファラオの宝物庫と呼ばれる)が現れる。しかし宝物庫でもなく墳墓でもない。これはぺトラ国のモニュメントだ、私見だが。

 

  

3、カズネの中から

 カズネの中、奥行きはほんのわすか。集会などができる場所ではない。中から見た広場の風景。左手先に見える岩の裂け目がシクへの出入り口。結局このモニュメント的な構築物は何の実用にも適さないということ。人間はしばしば無用の長物を作る。このカズネがなんであろうと原爆を作るよりずっとましだ。

 

 

4、ローマ劇場

 カズネの岩塊の後ろに回ると、ぺトラの遺跡が広がる。破壊が激しいのと発掘が遅れているために、素朴でのどかな風景だ。この劇場もローマ風である。背後に山が見える。山のなかの劇場だ。

 


s07 パルミラの光と影(2)

2016-02-21 14:22:41 | 日記

      s07 パルミラの光と影(2)

 パルミラの遺跡はシリアのほぼ中央にある。今の政権を倒して政権を握ろうとしているISISを中心とした反政府軍と政府軍との間に戦闘が続いている。双方が外国の援助を受けていて予断を許さない。パルミラも戦場と化したらしい。ようやく形を遺していたバール神殿などが過激派によって爆破されたという報道もあった。20年前(1997年)のシリアは平穏で、数多くの遺跡は観光客で賑わい、街の市場は人で溢れ、広いシリア砂漠の中でも草が生えている場所には長閑に放牧が行われていた。現地のガイドは「シリアは社会主義国です。だから、この砂漠は殆どが国有地で、人々は国から土地を借りて牧畜をやっているのです」と説明した。シリアが社会主義国だとは初めて聞いたので全く驚いたことを覚えている。隣の国ヨルダンはそれとは違って国王の統治が続いている。シリアからヨルダンに入国するとき、銃を構えた兵士による厳重な検査があり、ガイドは怪しまれるような行動は慎むようにと警告した。今、両国の国境は閉鎖されて、どちらからも容易には入れないだろうし、パルミラにも行けないのだろう。

 1,バール神殿

古来の神を祀る神殿である。相当壊れているがおおよその様子はわかる。過激派ISISがこの神殿や凱旋門などを爆破したという報道もあったが真偽の程はわからない。

2、カメラを構える人

陽が傾いてパルミラ遺跡は太陽光線の素粒子に包まれたようだ。この遺跡は、どちらを向けても絵になる。それは、撮る人の意識の反映なのかもしれない。

 

  3,瓦礫の中を歩く人

 沈む陽が長い影をつくりだす。ここでは瓦礫も撮ることの対象だ。一つ一つの石のカケラにもそれなりの歴史の重みがある.

 4,孤独の夜がやってきた

 生まれたものは滅し、造られたものも滅びる。夜の帳(とばり)がそれを教えてくれるように思える。

 

 5,自由人牧夫

 若い牧夫が彼なりのポーズをとってくれた。彼の牧場も国有地だという。20年前の話だ。アメリカ合衆国は2,014年末からシリアの過激派に対する爆撃を始めた。今なお続けている。しかしISの力は一向に弱わりそうになかった。爆撃機は砂漠に爆弾を落としているのでは、という人もいる。このモデルの青年も今は中年、激しい爆撃の中をかいくぐり、元気にしているだろうか、あるいは難民となって西欧の国に流れていったのだろうか。牧夫は、古代ギリシア、いやそのもっと昔から自由の民の典型だったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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s06 パルミラの光と影(1)

2016-02-14 11:16:52 | 日記

         S06 パルミラの光と影(1)

「パルミラ(ラテン語ではパルミュラ)は、その位置、肥沃な土壌、心地よい多くの泉によって有名である。その耕地は四面広大な砂漠によって取り巻かれており、いわば自然によって世界から孤立させられている。そしてローマとパルティアの両大帝国の間に自分自身の運命を持ち・・・常にその両方の注目の的となる」(『博物誌』)。

そのパルミラも今は飛行機とバスで容易に行ける。その名はpalm(ナツメヤシ)からきているのだろうか、そのヤシの林が旅人の心を慰める。『博物誌』が書かれたのは紀元一世紀だったが、その後もパルミラは栄華と衰退を繰り返してきた。

 

1.パルミア夢の跡

都市パルミアの歴史は何千年前からと数えればいいのだろう。その遺跡に立って眺めると、遮るものもなく、陽は砂漠の地平から昇り同じ砂漠に沈む。古代都市の遺した巨大な列柱の影に佇む人は、何を感じ何を思うのだろうか。

2,ベル神殿に通ずる巨大な列柱道路。

3,長い脊柱の影が、哀愁をそそる。

4,ローマ劇場。砂漠の中でパルミラの人たちは何を夢みていたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 


s05 マリ遺跡とユーフラテス川

2016-02-07 14:07:45 | 日記

        s05 ユーフラテス川とマリ遺跡

 シリアは紀元前3,400年代のウル人から始まり、シュメール・アッカード、アムライト、バビロニアと受け継がれてきた文明発祥地の栄誉を担う。わずか二・三百年前に出来た国とはわけが違う。特にユーフラテス川の中流域や地中海の東岸域に、マリ、ウガリット、エブラなど幾多の有史前の遺跡が発見されてきた。

 1,マリ遺跡(1)

ユーフラテス川の右岸にあるマリの都市国家は始めシュメールの属州として栄えたが、のち独立した王朝として前19~前18世紀に全盛期を迎え。当時の宫殿・神殿跡が発掘されている。中でも公文書館から出土した二万五千字に及ぶ楔形文字の泥文書は世紀の最大の成果とされた。 発掘調査は今なお続いている。しかし、アサド政権を倒して国政を握ろうとしている“過激派””穏健派“勢力(外国の力を借りた)によって、現在、どのような雲行きになっているかはわからない。

 

 2,マリ遺跡(2)

 

3,ユーフラテス川の夜明け

 マリ遺跡から程遠くないところでユーフラテス川に出会った。太陽が昇ろうとしている。川岸に降りて手を浸してみる。流れは思ったより速く、淀んでいる気配もなく、滔々と流れている。少し冷たい。

 

 4.陽が昇り、空も川面も真っ赤に染まった。