「自分の行動に没入しているとき、そして、そうした行動が自分にとってなんらかの意味を持っているように思えるときでも、自分が他者によって全く認めてもらえない場合、そしてまた、自分が誰にも何の変化も与えることができないと感じる場合、空虚感や無益感が生じる。」
(『自己と他者』)
R. D. レイン(Ronald David Laing. 1927 - 89)
イギリス、グラスゴー生れの精神科医。1951年グラスゴー大学医学部卒業。3年間陸軍軍医となった後、グラスゴー王立精神病院、グラスゴー大学精神科に勤務。以後、タヴィストック人間関係研究所に入り、ランダム・クリニック所長を兼務。1965年から「キングズリー・ホール」という、患者と治療者とが共に暮すコミュニティーを作る試みをした。
レインは、精神分析医でありながら、現象学的人間学の考え方をも組み入れ、独自の「自己と他者」の関係論を構築した。それは、人間関係における相互作用の中で、もっとも基本的な「自己と他者」についての考察である。
引用のレインのことばを『論語』冒頭にある、
人不知而不慍、不亦君子乎 (人知らずして慍(いか)らず、また君子ならずや)
との言と並べてみた場合、どのようなことが言えるであろうか。
孔子が、心理的に無理なのを承知で、理想を述べているだけなのか(教育的配慮?)、それとも、何らかの事情で、敢えて無理を言わざる得なかったのか(一種の強がり)。
参考資料 R. D. レイン著、志貴春彦、笠原嘉訳『自己と他者』(みすず書房)
R. D. レイン著、中村保男訳『レインわが半生 -精神医学への道-』(岩波書店)