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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (140) 長尾家 53

2024年07月15日 09時58分13秒 | 甲越軍記
 原三郎、衣服を正して廊下を行き、お時の座敷に着いて見れば、大床には唐の蒔絵の二幅一対を掛け、金紫銅の花入れに露もこぼれるばかりの白菊を生け花にして青磁の硯屏、珊瑚の筆架、金砂子に花鳥を色よく描きたる屏風を立てまわし
空焼の匂い余る計なるは張文潜の仙窟に入った心地がする
お時の方を見れば、年のころはまだ三十前、眉目の美しさ小袖、打ちかけなよやかに衣通姫の再来かと心は浮かれ、袖の移り香身に染みて、忍び忍びの日々を重ねた。

新発田の家士らは府内殿の寵臣と聞き、禍を恐れて皆、見て見ぬふりにて耳を塞ぎ、目を閉じていた。
されど新発田尾張守の舎弟、掃部介(かもんのすけ)は新発田の城でこの噂をほのかに聞き、府内屋敷の家士を呼んで詰問するが事実は明らかにならなかった。

ついに掃部介は府内に至って真実を明らかにしようと新発田屋敷へ行き改めて家士らに問うても、やはり誰一人知らぬ存ぜぬを貫き通す
ついに掃部介は侍女を捉えて白刃を胸に押し当てて厳しく問うと、侍女も怖れおののいてついには小督が仲介した逢瀬を逐一白状した。

掃部介も一度は小督と三郎の通るを見たけれど、まさかあの女中が三郎の女装であったとは気が付かず、「不覚」と悔やみ、今度会ったらと待ち受ける。
そんなこととは知らず、いつもの通り女装した三郎が、お時の座敷廊下を行く
掃部介は何食わぬ顔で、女装の三郎が通るのを見過ごした
すでに身元が知れているとは露知らず、三郎は今宵もお時との逢瀬に胸ときめかして座敷に入った。

そして夜更けを待ち、頃合いを計ると畳を蹴立てて奥に飛び入った
侍女たちは驚き、掃部介の袖を引き「奥方様の閨に入り給うとは何事ぞ、御用あらば表に居る役人を通じて問うのが筋道でありましょうや」と言えば
掃部介は大いに怒り、「汝らは一つ穴の賊なり、無用の言を吐くではない」と一拳に三、四人を打倒した
この物音に閨に同衾する三郎と、お時は「何事か」と起き上がるところに掃部介が躍り込み、「汝、姦婦人を欺き、ほしいままに不義をなすとは奇怪千万、こなごなに裂き殺してもあき足らぬ」
三郎の髻を掴み力任せにねじねじつければ、哀れや三郎の細首は怪力によって目と口から血を吐いて、たちまち息絶えた。
お時の方は驚いて逃げようとするが掃部介の剛力に踏みつけられて身動きできず、叫ぼうにも声は出ず亀の如く掃部介の足の下で手足をばたばたするだけであった。

掃部介は何ら躊躇せず、お時の方の素首を一刀のもとに打ち落とした
これを見て侍女たちは部屋の中でじたばたするのを、片っ端から七名ほど殺し
小督を見つけ「汝がこの元凶である、肝太き女め」とこれまた一刀に切り殺した。
掃部介は「快よし」と打ち笑い、新発田の城に帰って行った。

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