世界中の微生物が「プラスチック」を食べられるよう進化している | 海の中にも地上にも… 爆発的に増えたプラスチックゴミ
COURRIeR より 211217
世界中の海や土壌に生息している微生物が、プラスチックを食べられるように進化している──そんな驚きの研究結果が発表された。
スウェーデン、チャルマース工科大学のアレクセイ・ゼレズニアック教授が率いた同研究により、バクテリアによるプラスチックの分解能力が初めて大規模に評価された。
自然環境から採取された2億以上のDNAサンプルが調査され、10種類のプラスチックを分解する、3万種もの酵素が見つかったという。研究者らは見つかった酵素の数やタイプが、採取された地域のプラスチック汚染の規模や種類と一致していることも明らかにした。
彼らはこの結果について「プラスチック汚染が世界中の微生物生態系に与える影響の重大さを示す証拠」だと語る。
毎年、地球上では何百万トンものプラスチックが投棄されており、プラスチック汚染はエベレストの山頂から深海にまで、地球上のあらゆる場所に及んでいる。
プラスチックの使用量を減らすことや、廃棄物の適切な回収・処理が重要だが、いまのところ多くのプラスチックは分解やリサイクルが困難だ。
こうした酵素を使ってプラスチックを素早く分解できれば、古いプラスチックから新しい製品を生み出すことができると同時に、真新しいプラスチック製品の生産の必要性を減らすことができる。
ゼレズニアックはこう話す。「私たちは今回、地球上のバクテリアのプラスチック分解能力が、プラスチック汚染の測定値と強い相関関係にあることを示す証拠を発見しました。
私たち人間が環境に対してかけている圧力に、彼らがどう反応しているかが示唆されたのです」
同じくチャルマース工科大学のヤン・ズリメックは、「これほどまでに多くの酵素が、異なる生息域の異なる微生物から見つかるとは思っていませんでした。問題のスケールを物語る驚くべき発見でしょう」と言う。
⚫︎未知の分解方法
プラスチックの製造量は過去70年間で、200万トンから3億8000万トンまで爆発的に増加した。その間に、微生物たちはプラスチックを食べられるように進化したのだろうと研究者らは言う。
学術誌「マイクロビアル・エコロジー」に論文が掲載されたこの研究は、すでにプラスチックを分解可能だと知られている95種類の微生物のデータをまとめることから始まった。そうしたバクテリアはゴミ捨て場などプラスチックが多く存在する場所で見つかることが多いという。
それから研究チームは、世界中の236ヵ所で採取された自然環境中のDNAサンプルから同様の酵素を探した。
67ヵ所,3つの異なる水深で採取された海洋サンプルからは1万2000種類,加えて,38ヵ国,169ヵ所で採取された土壌サンプルからは1万8000種類のプラスチック分解酵素が見つかった。
土壌には、海中よりもフタル酸エステル類(プラスチック製品を柔らかくするために用いられる物質)を含むプラスチックが多いと考えられており、研究者らは、これらの化学物質を攻撃するより多くの酵素を土壌中のサンプルから見つけ出した。
さらに、新たに見つかった酵素の60%近くは、これまでの酵素の分類に適合しないことも明らかになり、こうした酵素はまだ知られていない方法でプラスチックを分解している可能性もあるという。
「次のステップは、もっとも有望な酵素を研究室で検査し、その特性とプラスチック分解能力を研究することです」とゼレズニアックは言う。「そこから、特定のポリマータイプを狙って分解する機能を持った微生物群を作り上げることができるでしょう」
プラスチックを食べる生物が初めて見つかったのは、2016年、日本のゴミ捨て場だった。また、2020年には仏カルビオス社によってペットボトルを数時間で分解する変異型酵素が生み出され、
ドイツの科学者らは、通常埋立地に捨てられる、有害なポリウレタンを餌にする細菌も発見している。
2021年12月初旬、人々が食品を介して摂取するマイクロプラスチックが、人体の細胞にダメージを与えているという研究結果も発表された。微生物のこうした働きへの注目はますます高まるだろう。