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AIが2022年に世界の産業に与える影響  202112

2021-12-24 23:26:15 | なるほど  ふぅ〜ん

AIが2022年に世界の産業に与える影響
  @DIME  より 211224


 AI が世界の産業に与える影響に関する 2022 年度予測
NVIDIAが2022年度にAI が世界の産業に与える影響に関するレポートを公開した。

■執筆者: CLIFF EDWARDS氏

 不確実な時代にこそ優れたビジネスが発展すると、古くから言われている。大規模な激変の前兆が見える 2022 年、このことが試される年になることは間違いないだろうか。

 パンデミックによるサプライチェーンの混乱は、自動車や電子機器から玩具やトイレット ペーパーに至るまで、あらゆるものの生産に影響を及ぼしている。また、食料事情に関しては、労働者の不足、工場の閉鎖、商品価格の高騰により、最も高度な予測や物流業務ですら計画が破綻したため、世界の食料価格はここ 10 余年で最高水準に跳ね上がった。

 昨年、NVIDIA のトップ エキスパート数人に、AI とアクセラレーテッド コンピューティングの世界に 2021 年がもたらすものは何であるかについて、インタビューを行なった。
 企業が製品予測、サプライチェーン管理、科学研究のための新しい道を模索する中、それぞれが計画段階から稼働段階へと移行するだろうという予測を立てていた。

 2021 年の 1 年間で書かれたさまざまなドキュメントの見出しを見てみると、彼らの予測が正しいことが分かる。小売企業の Home Depot、Target、Walmartは、クリスマスに向けて自社専用の貨物船をチャーターし、世界中の店舗に商品を配送した。
 BMW や Ericsson などの企業は、市場投入までの時間を短縮するためにデジタル ツイン テクノロジを使用して実世界の環境のシミュレートを始めている。

 AI の導入は有名企業に限ったことではない。
 事実、銀行や医療、エネルギーなどの 9 つのセクターにわたる 1,000 社を超える企業を対象として 2021 年半ばに行なわれた PWC の調査では、調査対象の 86% が AI を「主流のテクノロジ」に据える態勢を整えているという結果が出た。

 NVIDIA のエキスパートに話を戻す。今年、企業がビッグデータを解析して新たな収益機会を探すにあたり、AI の取り組みをどこに集中させると考えられるかを尋ねた。

ーブライアン カタンザロ (Bryan Catanzaro)氏 ディープラーニング応用研究担当バイス プレジデント

 対話型 AI: 私は昨年、対話型 AI の使用により、リアルタイムのやり取りによるキャラクター主導のアプローチが具体化され、ビデオ ゲームはさらに没入感のあるものになるだろうと予測しました。今年、対話型 AI は業務向けが中心となります。
 企業は、自然言語処理の使用によってさらに効率的かつ効果的に作業できる新しい対話型 AI ツールを導入するでしょう。音声合成は、2022 年には人間の声と同じように感情がこもった説得力のある音声となり、小売、銀行、ヘルスケアなどの業界は顧客の理解をさらに深め、より良いサービスを提供できるようになります。
 顧客を知る: 自然言語処理に留まらず、他社や顧客との対話に音声とテキストの両方を使用している企業は、AI を採用することにより、人の発言の中にある背景や感情を理解できるようになります。顧客は不満を感じているか。
 上司は皮肉を言っているのか。プログラマーの作業を効率化するOpenAI Github Copilotのようなツールの採用が加速するでしょう。

ーサラ タリク (Sarah Tariq)氏 自動車部門バイス プレジデント

 プログラマブル自動車: 自動車を買ってカーディーラーから出た瞬間に車の価値が下がる、そんな時代は終わります。
 通勤時のストレス解消: ソフトウェアデファインドのアプローチへ移行することで、日常の運転のストレスや煩わしさも解消されます。AI アシスタントが運転手のパーソナル コンシェルジュとして機能し、車両での移動がより改善され、より安全で便利で楽しく過ごせるようになります。

 運転手や同乗者は常時作動しているインテリジェント サービスにアクセスし、リアルタイムの対話型 AI を使ってリコメンデーション、アラート、車両制御などを利用できるようになります。
 長距離向けの設計: 自動車メーカーは、より多くのエンドツーエンド スタックを検証するためのシミュレーションやデジタル ツインの使用、およびディープ ニューラルネットワーク モデルのトレーニングに、多額の投資を始めるでしょう。
 AI とデータ分析によって自動運転車を幅広い運転条件でトレーニングおよび検証できるようになるため、長距離運転を目的とした日常の運転にも安全性がもたらされます。

ーレヴ レバレディアン (Rev Lebaredian)氏 Omniverse Engineering、シミュレーション テクノロジ担当バイス プレジデント

 3D の新たな標準: 仮想世界を表現するための高度な 3D 標準が登場するでしょう。現実世界にあるあらゆるものの対を成す正確でリッチなデジタル オブジェクトを構築することは、コンピュータ サイエンスにおける最大の課題の 1 つです。
 インターネットや Web が登場した頃と同様に、開発者、企業、および個人ユーザーによって基礎的なオープン標準が出来上がっていき、Universal Scene Description(USD) や glTF といった標準が、Web3 やデジタル ツインの基礎的なニーズを満たすために急速に発展するでしょう。
 合成 3D データが AI の次の時代を実現: AI のイノベーションのペースはこの 10年の大半において加速していますが、高品質かつ多様な大量のデータがなければ AIの進歩はあり得ません。
 現在、現実の世界からキャプチャされ人間がラベル付けしたデータでは、品質と多様性の両方の点において、次のレベルの人工知能にステップアップするには不十分です。
 2022 年には、物理的に正確な世界のシミュレーターによって仮想世界から生成された合成データが爆発的に増加し、高度なニューラルネットワークがトレーニングされるようになるでしょう。
 シミュレーションによる業界再考: 運用効率やコスト削減につながる可能性があるため、多くの業界がデジタル ツインや仮想世界の調査、採用を始めています。飛行機、車、工場、橋、都市、さらには地球自体に至るまで、私たちが現実世界で構築するすべてのものをデジタルで表現し、仮想世界において対となる必要があります。
 高精度のシミュレーションをデジタル ツインに適用することで、複雑な設計を現実世界で構築する前に、体験、テスト、最適化を行うことができます。

ーキンバリー パウエル (Kimberly Powell)氏 ヘルスケア担当バイス プレジデント兼ゼネラル マネージャー

 AI が生み出す Million-X (数百万倍) の創薬: AlphaFold と RoseTTAFold の同時期のブレイクスルーにより、これまでの 1,000 倍ものタンパク質構造が解析され、さらに AI が新たに 1,000種類以上の化学化合物を生成することが可能になったことで、新薬の発見の可能性が 100 万倍に増えました。
 分子シミュレーションにより、ターゲットと薬物の相互作用をコンピュータ シミュレーションで完全にモデル化することが可能になります。Million-X の可能性に遅れを取らないために、システムのサイズやタイム スケールから量子精度まで、新しいクラスの分子シミュレーションの導入が AI によって進んでいます。
 AI による SaaS型医療機器: 医療機器業界には、コストの最小化、自動化、アクセシビリティの向上と、製品のライフサイクル全体にわたって継続的にイノベーションを実現させるような根本的変化が、AI によってもたらされる可能性があります。
 医療機器企業の役割は、ハードウェアの提供から、導入後のデバイス使用を維持できるようリモートでアップグレードできるSaaS型システムの提供へと進化していくでしょう。
 連合学習(Federated Learning)による AI 2.0: AI アプリケーション開発者が AIテクノロジを産業化し、アプリケーションのビジネス上のメリットを拡大するためには、グループ、施設、地域の外に存在するデータで AI をトレーニングし、検証する必要があります。連合学習は、機密データを共有することなく堅牢な AI モデルを共同で構築し、実際にモデルを検証するための鍵となります。

ーアニマ アナンドクマー (Anima Anandkumar)氏
ML リサーチ ディレクター兼カリフォルニア工科大学ブレン プロフェッサー

 AI4Science: この分野は今後も大きく成熟し、現実世界に影響を与えるでしょう。AI はスーパーコンピューティング スケールで HPC と深く統合され、気象や気候のモデルなどの分野で前例のない規模と精度での科学シミュレーションとモデリングが可能になります。
 AI は新薬や治療法の発見に飛躍的な進歩をもたらし、ヘルスケアに革命をもたらすでしょう。連合学習や差分プライバシーが広く採用され、医療現場などの機密データの共有がシームレスになります。
 アルゴリズム開発: シミュレーションの基礎となるアルゴリズムの開発や、強化学習を大規模に処理する GPU の能力に大きな進歩が見られることが期待されます。



ーロニー ヴァシシュタ (Ronnie Vasishta)氏 通信事業担当シニア バイス プレジデント

 AI が通信事業者のエッジへ: 将来有望な 5G がエッジ コンピューティングの新しい可能性を開くでしょう。主な利点として、顧客が特定のアプリケーションに専用の帯域幅を割り当てることができるネットワーク スライシング、無線環境での超低レイテンシ、およびセキュリティと分離の向上が挙げられます。
 AI-on-5G により、新しいエッジ AI のユースケースが可能になります。例えば、プラントの自動化、工場のロボット、監視や検査といった「インダストリー 4.0」のユースケースのほか、有料道路や車両のテレメトリ アプリケーションといった自動車システムのユースケース、さらには小売、都市、サプライチェーンにおけるスマート スペースなどがあるでしょう。
 AI と OT ソリューションの融合: 新しいエッジ AI アプリケーションにより、インテリジェント ファクトリなどのインテリジェント スペースが成長を見せています。これらの工場では、カメラやその他のセンサーを使用して検査や予知保全を行っています。ただし、検出は第一歩にすぎません。検出後、アクションを実行する必要があります。アクションに必要となるのが、推論を実行する AI アプリケーションと、組立ラインやロボットアーム、ピックアンドプレース装置を管理する監視制御 (OT) システムとの接続です。
 現在、これら 2 つのアプリケーションの統合は、カスタム開発作業に依存しています。今年は 産業環境でのエッジ AI の採用が簡素化され、AI と従来の OT 管理ソリューションの統合がさらに進むと予想されます。

ーアジータ マーティン (Azita Martin)氏 小売および消費者向け製品グループの人工知能部門バイス プレジデント兼ゼネラルマネージャー

 人手不足に AI が対処: 人手不足と、迅速なサービスを求める顧客の要求の高まりの中で、クイック サービス レストランは自動注文受付に AI の採用を進めていくでしょう。
 自然言語理解と音声の進化に、レコメンデーション システムを組み合わせ、ファスト フード レストランは自動注文受付を導入してドライブ スルーにかかる時間を短縮し、レコメンデーションの向上を図ります。
 小売業者はスーパーマーケットや大型店舗でのインテリジェントなビデオ分析およびコンピュータ ビジョンの利用を拡大し、自動チェックアウトや自律型ショッピング、レジなしショッピングを展開していくでしょう。
 企業は AI を活用して物流を最適化: AI の最大の力は、非常に複雑な問題を簡素化することにあります。サプライチェーンの最適化は小売業者にとって、製品の入手性と配送の迅速化という顧客の要求を満たす上で欠かせません。
 AI により、頻度や正確性がさらに向上した予測が実現し、適切な製品が適切なタイミングで適切な店舗に置かれるようになります。
 コンピュータ ビジョンとロボティクスは、物流センターに AI インテリジェンスをもたらします。自律型フォークリフト、ロボット、インテリジェントなマルチシャトル キャビネットといったソリューションは、コンベヤの深刻な不足やダウンタイムを解消し、商品のピック & パックを自動化して処理能力を倍増させます。データサイエンスを活用したラストマイル配送により、動的な再ルーティングおよびシミュレーションが可能になり、ソルバーの応答時間が 1 秒未満になります。
 顧客と 1 つに: 小売業者は大量のデータを抱えていますが、リアルタイムにデータを処理することは困難なことがよくあります。AI を使用することで、小売業者はほぼリアルタイムにデータを解析して、顧客を 360 度見渡せるようになり、さらにパーソナライズされたオファーやリコメンデーションを提供でき、ひいては収益と顧客満足度の向上につながります。2022 年には、超パーソナライズされたショッピング体験を提供する小売業者が多く見られるようになるでしょう。

ーケビン レビット (Kevin Levitt)氏 金融サービス向け産業および事業開発担当ディレクター

 自分の声が ID に: 金融機関は AI に多額の投資を行うことで、不正と闘い、KYC(Know Your Customer: 本人確認) や AML (Anti-Money Laundering: マネー ロンダリング防止対策) などのコンプライアンス規制を遵守していくでしょう。オンライン取引の認証に顧客本人の声を使用している企業や、目で生体認証を行なう虹彩認証の採用を進める企業があります。
 グラフ ニューラルネットワークは、金融機関の AI 研究者や AI 実務者が、エンティティおよびデータ ポイント間の関係性を理解するために使用している、最先端の手法です。不正防止を強化し、関係性をマッピングして不正との闘いをさらに効果的に進めるためには、この手法が重要になるでしょう。
 ESG 向けの AI: 消費者や政府機関は、企業に対し、環境への影響、社会、および企業統治 (ESG) についての説明責任をますます求めるようになるでしょう。
 企業は、ディープラーニングや自然言語処理モデルなど、ESGに関する企業のパフォーマンスを追跡するために必要なすべてのデータを分析するAIモデルを実行するために、重要なコンピューティング性能に投資することでしょう。また、利用可能なデータを外部で分析して、ESG ベンチマークと比較してどの企業が優れている、または劣っているかを評価する必要が出てくるでしょう。

ーチャーリー ボイル (Charlie Boyle)氏
NVIDIA DGX Systems バイス プレジデント兼ゼネラル マネージャー

 企業は理解を深めるために大規模言語モデルを導入: 2022 年には、大規模言語モデル (LLM) の採用が急速に進み、より多くの業界やユースケースで見られるようになるでしょう。
 大量の一般データや業界固有のデータで学習された LLM は、高度な専門知識を必要とする質問に答え、言語を翻訳し、ドキュメントを理解して要約し、ストーリーを書き、プログラムを計算することができます。
 しかも専門的なトレーニングや監督は必要ありません。すでに、さまざまな言語や専門分野に対応する AI チャットボットや AI サービスの構築に LLM が利用されており、世界中のつながりやコミュニケーションを向上させています。
 企業の次のデータセンターは自社以外に所属: 多くの企業は、クラウド コンピューティングに移行した際に、独自のデータセンターを所有することを止めています、2022 年には企業は、高性能な AI インフラストラクチャ向けのコロケーションサービスを活用し始めるべき時期が来ていることを認識するでしょう。
 導入が容易で、24 時間年中無休でインフラストラクチャのエキスパートにアクセスできるため、必要なときにいつでもどこでも安全に提供されるオンデマンド リソースのメリットを享受する企業が増えていきます。

ーケビン デアリング (Kevin Deierling)氏 ネットワーキング担当シニア バイス プレジデント

 データ センターは新しいコンピューティング ユニット: 以前は 1 台のコンピュータで実行されていたアプリケーションは、もはや 1 つのボックスに収まりきらなくなっています。コンピューティングの新しい世界ではソフトウェアデファインドとハードウェア アクセラレーションが進んでいくでしょう。

 アプリケーションが細分化されて大量のデータ セットを使用するようになると、ネットワークは 1 つのコンピュータとして動作する多数のサーバー間の高速レーンと見なされます。ソフトウェアデファインドのデータ処理ユニットは、分散スイッチ、ロード バランサー、ファイアウォール、およびこのデータセンター規模のコンピュータをつなぐ仮想化ストレージ デバイスとして機能するようになります。
 ゼロ トラストにおける高まる信頼: アプリケーションとデバイスがデータセンターとエッジの間をシームレスに移動するようになると、企業はマイクロサービスを検証した上で構成する必要があります。
 ゼロ トラストでは、企業システムに接続しているすべての人を認証および監視して、悪意のある人物によるネットワークへの侵入試行がないことを確認することを前提としています。
 エッジとネットワーク内のすべてのノードの両方にあるあらゆるものを保護する必要があります。データはIPSEC や TLS で暗号化し、すべてのノードを高度なルーターとファイアウォールで保護する必要があります。

ースコット マクレラン (Scott McClellan)氏 データサイエンス製品グループ シニア ディレクター

 アクセラレーテッド データ サイエンス プラットフォームが企業のデータ レイクを活用: 企業のビッグ データ戦略の基盤となるデータ レイクについては、多くの人が論じています。
 企業のデータ レイクは大規模なデータ処理に効果的ですが、機械学習のトレーニングや推論パイプラインからは切り離されているため、この数年間はその広範な有用性はほとんど活用されていません。
 2022 年には、集中型インフラストラクチャ、Kubernetes ベースのアプリケーションの機敏性、タスクに適したクラス最高のストレージという 3 つの転換点により、データ レイクは最終的にエンドツーエンドのデータ パイプラインを通じて近代化されるでしょう。
 AI 採用が主流になることで MLOps が拡大: 世界の AI パイオニア企業は、AI ワークフローの開発および本稼働の管理を支援する特注の MLOps ソリューションを構築しています。
 MLOps の専門知識の獲得を先延ばしすることができました。企業が AI の使用を拡大し、アクセラレーテッド インフラストラクチャをオンプレミスに導入する中で、エンタープライズにおけるギャップが浮き彫りになってきました。このニーズに対応するために、来年は MLOps ソリューションが広く採用されるようになるでしょう。

⚫︎超高速 AI 採用の時代に突入
 長引くパンデミックにより、多くの企業や科学組織が発明や再発明を加速しなければならない時代となったことは間違いありません。こうした時代の最終形は、その時々のニーズを満たす短期的な対策を講じながら、同時に長期的な利益と根本的な変化に備えた構築をすることです。
 2022 年も引き続き危ぶましい年となるのでしょうか、それともAI を堅実に取り入れて不確実な状況に対処する企業にとっては、より順風満帆な年になるのでしょうか。

⚫︎関連情報:https://blogs.nvidia.com/blog/2021/12/07/2022-predictions-ai-global-industries/
構成/DIME編集部
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🧠老化した神経幹細胞を若返らせて認知機能を回復させることに成功 京都大学 202112

2021-12-24 22:04:00 | 気になる モノ・コト

老化した神経幹細胞を若返らせて認知機能を回復させることに成功 京都大学
  大学ジャーナルオンライン編集部 より211224


 脳を構成する神経細胞(ニューロン)を生み出す神経幹細胞は、加齢とともに増殖能やニューロン産生能を失い、認知機能の低下をもたらす。このような老化状態の神経幹細胞の「若返り」を、京都大学のグループが成し遂げた。


 本研究ではまず、神経幹細胞が活発に増殖して多くのニューロンを産生する胎生期に高発現する遺伝子を、老齢マウスの神経幹細胞で強制発現させることでの「若返り」を目指した。結果、亜鉛フィンガータンパク質Plagl2の強制発現が最も強力に老化神経細胞を活性化できることが見出された。

 次に、Plagl2の強制発現と、老齢期で高発現する遺伝子のノックダウンを組み合わせて老齢マウスの神経幹細胞の活性化を試みると、ダウン症候群関連キナーゼDyrk1aのノックダウンが最も効率良く老化神経幹細胞の増殖能とニューロン産生能を活性化することがわかった。増殖能とニューロン産生能をほぼ完全に失っていた老化神経幹細胞も、この組み合わせにより、幼若期並みに復活したという。若返った神経幹細胞は、少なくとも3ヶ月以上の間増え続け、多数のニューロンを産生した。

 研究グループは、Plagl2の強制発現とDyrk1aのノックダウンの組み合わせをiPaD(inducing Plagl2 and anti-Dyrk1a)と名付けた。iPaD処理を施した老化マウスでは、空間記憶や認識記憶を調べる試験で認知機能の改善が認められた。iPaDによって神経幹細胞のクロマチン構造が変化し、老齢期で働く遺伝子の発現が低下し胎生期に働く遺伝子の発現が増加する、すなわち老齢期の遺伝子発現パターンと若年期の遺伝子発現パターンの逆転現象が誘導されたとしている。

 老齢期の神経幹細胞を若返らせてニューロンを産生させ、認知機能を改善できることを示したこの研究成果は、認知症の新たな治療法開発に発展することが期待される。

論文情報: 【Genes & Development】Functional rejuvenation of aged neural stem cells by Plagl2 and anti-Dyrk1a activity
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🧠多くの人が誤解している「脳に関する3つの科学的神話」とは?

2021-12-24 21:56:00 | 気になる モノ・コト

多くの人が誤解している「脳に関する3つの科学的神話」とは?
  GigaZain  より 211224


 21世紀は自動運転車の登場や火星探査の進展、新たな伝染病に対する迅速なワクチン開発など、多くの科学分野で目覚ましい進歩が見られた一方、依然として「時代遅れの科学的神話」も残っているとのこと。
 そこで、多くの人々が抱いている「脳に関する3つの科学的神話」について、「 バレット博士の脳科学教室 7 1/2章」などの著作で知られる ノースイースタン大学の心理学教授、 リサ・フェルドマン・バレット氏が解説しています。

That Is Not How Your Brain Works - Issue 111: Spotlight - Nautilus
https://nautil.us/issue/111/spotlight/that-is-not-how-your-brain-works

◆神話1:人間の脳は特定の機能を持つパーツの組み合わせでできている
 脳は機能ごとに「視覚を担当するパーツ」「記憶を担当するパーツ」「感情を担当するパーツ」といった各部に分けられ,これらが組み合わさって脳が作られているという考えがあります。最初にこの見方が登場したのは19世紀,頭骨の形状から性格や心的特性を推定できるとする 骨相学の普及と共に広がり,骨相学が衰退した後も一般大衆の間に残り続けました。

 現代科学においては、脳は特定の機能を持つパーツの組み合わせではなく、神経細胞(ニューロン)の大規模なネットワークであることが判明しています。ほとんどのニューロンは単一ではなく複数の機能を持っており、たとえば 前帯状皮質と呼ばれる部位は記憶・感情・意思決定・痛み・道徳判断・想像力・注意力・共感などに関与しているとバレット氏は指摘。

 他にも、 一次視覚野と呼ばれる部位は視覚と密接に結びついていますが、同時に聴覚や触覚、動きに関する情報を伝えることも知られています。視覚のある人に数日間目隠しをして点字を教えた 実験では、視覚皮質のニューロンが触覚情報の伝達に専念することもわかったとのこと。また、脳の片側の一時視覚野を損傷したからといって、直ちに対応する目が見えなくなるというわけでもないとバレット氏は述べています。

 脳がパーツから構成されているという神話に関する最も顕著な例が、人間の脳は本能をつかさどる「は虫類的脳」、感情をつかさどる「哺乳類的脳」、人間特有の論理的・倫理的思考をつかさどる「人間的脳」の3層に分かれているとする「 三位一体脳説」です。人間を人間たらしめているのは最も一番上にある 大脳新皮質であり、古代の動物から受け継いだ感情や本能をつかさどる脳を制御できるとするこの考えは、脳を検査するツールが顕微鏡だった時代に生まれたとのこと。

 しかし、近年の分子遺伝学的研究から三位一体脳説は否定されており、脳は層として進化するわけではなく、全ての哺乳類の脳は同じ種類のニューロンと単一の製造過程を経て作られていることがわかっています。動物の脳はそれぞれの環境に適応したものを持っているだけであり、特定の種の脳が他の種よりも進化しているわけではないとバレット氏は指摘しています。

「特定の機能を担当するパーツの組み合わせで脳ができている」という神話が廃れない理由の1つに、脳スキャンを用いた研究が高価であるため、多くの研究では「最も強い脳活動のみを検出できるスキャンが用いられる」という点が挙げられます。
 こうした手法で行われた研究からは、脳が平常時は静かであり、特定の状況でのみ一部分が活動するかのような錯覚を持ちやすいものの、実際には脳全体が常に活動しているとのこと。また、動物実験ではほんの数個のニューロンにしか焦点を当てないこともあるそうで、これも脳全体のネットワークが注目されにくい理由の1つだとのことです。

 人間の脳が3層に分かれているという「三位一体脳説」はなぜ長い間信じられていたのか 

◆神話2:脳は世界の出来事に反応する
 多くの人が抱いている間違いの1つに、「脳は基本的にオフの状態であり、何か特定のイベントに直面して刺激を受け取ると、必要な部位がオンになって活動を始める」という考えがあります。これは一見すると正しいように思えますが、バレット氏は「脳は刺激と応答によって働きません。全てのニューロンは常にさまざまな速度で発火しています」と述べ、刺激によってオンやオフを切り替えているのではないと指摘しています。

 常時発火しているニューロンが何をしているのかと言えば、それは「予測」だとのこと。脳は常に自分の記憶、自分が置かれている状況、体の状態といった利用可能な情報を使って「次の瞬間に何が起きるのか」を予測しており、予測が正しければ出来事に対してすぐに体を動かしたり、物を見たり、音を聞いたりできます。予測が間違っていた場合は自分自身に修正を加え、次の予測に役立てているそうです。

 過去の経験や知識から世界を予測し、自分を修正し続けることは、不確実性の高い世界で刺激と反応のみに基づいて生きるよりも、はるかに効率的な方法といえます。
 たとえば野球選手や卓球選手は、実際にボールを見てバットやラケットを動かしているのではなく、経験に基づいてボールの位置を予測することでバットやラケットを動かし、適切な位置にボールを当てています。もし、人間が単に刺激に反応するだけの動物であり、脳に予測と修正を行う能力がなければ、人々はスポーツをプレイできないとバレット氏は述べています。

◆神話3:体の病気と精神の病気は明確に別のものである
 人々に信じられている第3の神話が,「心血管疾患といった体の病気と,うつ病などの精神の病気には明確な境界線がある」というもの。今日でも多くの人々が体と心を区別していますが、近年の神経科学者らによる発見は、体を制御する脳のネットワークが精神にも深く関与しており、両者がはっきり分けられないものであることを示しています。たとえば脳の前帯状皮質は記憶・感情・意思決定・痛み・道徳判断・想像力・注意力・共感といった心理的機能に加え、臓器やホルモン、免疫システムを通じて体を健康に保つ役割も担っています。

 また、 心血管疾患や脳疾患を持つ人はうつ病になりやすいとも言われるように、体の物理的な変化が精神に影響を及ぼすことも知られています。一部の研究者は、うつ病または心血管疾患がもう一方の病気を引き起こすのではないかと考えているほか、両者に共通の原因がある可能性も指摘されているとのこと。

「心と体の関係を考える時、心は脳の中に存在しており、体とは別であるという神話で満足するのは魅力的です。しかし一皮むけば、脳はあなたの体のシステムを調節している一方で、あなたの心を作りだしています。つまり、体の調節はそれ自体があなたの心の一部なのです」とバレット氏は述べました。
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👫…🏣…宇治橋…🚔…槙島農道…宇治川高架橋… 211224

2021-12-24 17:42:00 | 📖 日記
👫…🏣…太閤堤跡公園…宇治橋…🚔落し物…宇治橋商店街…肉屋…中村藤吉本店🧉…川魚屋…アプロ…宇治橋西詰:妻は帰路へ:🚶‍♀️…巨椋池:みずの道…井川排水機構前…農水路沿…槙島農道(菌場…大幡…幡貫…郡)…宇治川高架橋…Alp沿…右岸堤防道…>
🚶‍♀️10719歩3kg

☁️:微風:曇天

妻:🚔落し物を取りに…同伴
中村藤吉:喫茶:まるとパフェ:竹筒容器にたっぷりで満腹:冷えるゥ美味  しかし注文が2Dコード化でスマホで注文?時代時流…
宇治橋商店街の4軒を利用。橋西詰で分かれ🚶‍♂️散歩






太閤堤跡公園

まるとパフェと+お薄

デジタル注文2Dコード用紙

中村藤吉





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🎶 史上最高の指揮者は誰か?カラヤンやクライバーなど偉大な指揮者20選 202112

2021-12-24 03:19:00 | 🔟 番付色々🆚

史上最高の指揮者は誰か?カラヤンやクライバーなど偉大な指揮者20選
 DiscoverMusic より 211224


 史上最高の指揮者は誰なのか?ヘルベルト・フォン・カラヤン、カルロス・クライバーといった伝説的なマエストロから、グスターボ・ドゥダメル、サー・サイモン・ラトルなどの現代のスターまで、様々な角度から議論を重ね、偉大な指揮者のリストを作成した。
スクロールして、私たちが選んだ20人の指揮者をご覧いただきたい。

___
20:ブルーノ・ワルター(1876-1962、ドイツ)  🎶
偉大な指揮者の黄金時代の一人であるワルターは、19世紀のオーストリア・ドイツの音楽作りの伝統の中で、最高のものを体現していた。彼が録音したモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブルックナーは高い水準を誇る、ブラームスの交響曲やワーグナーのオペラに対する彼の共感は特に大きかった。また、マーラーと親交があったことから、マーラーの録音には特別な重みがある。
 その中でも《大地の歌》では、親交のあったキャスリーン・フェリアとユリウス・パツァークとの共演が記録されている。「私の音楽人生における最大の出来事は、キャスリーン・フェリアとグスタフ・マーラーを知ったことだ」とワルターは語っている。彼は技術的な正確さよりも、音楽の感情表現や叙情性を重視し、毅然とした態度と穏やかな説得力をもってオーケストラ(1938年以降は主にアメリカ)を指揮した。

重要な録音: ブラームス:交響曲全集
マーラー:大地の歌
モーツァルト:交響曲第36番~第41番

19:カルロ・マリア・ジュリーニ(1914-2005、イタリア)
 1964年にロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールでジュリーニがヴェルディの《レクイエム》の〈怒りの日(Dies Irae)〉を指揮している有名な映像を見た人は、その映像を忘れることはないだろう。その激しさ、正確さ、そして記念碑的な構想を超えるものはほとんどない。彼はヴィオラ奏者としてフルトヴェングラー、クレンペラー、リヒャルト・シュトラウス、ブルーノ・ワルターの指揮の下で演奏していたが、第二次世界大戦後(強固な反ファシストの信念により身を隠していた)、すぐにオペラ指揮者として脚光を浴びるようになり、1953年にスカラ座でデ・サバタの後を継いだ。

 コヴェント・ガーデンでヴィスコンティの演出によるヴェルディの《ドン・カルロ》を指揮したことで、ジュリーニの国際的な名声が確立された。彼の指揮者としての仲間意識、イタリア的な情熱、そして彼が生み出す音の感情的な暖かさは、様々なレーベルやオーケストラのために録音された数多くの作品が時の試練を経ることを可能にした。

重要な録音: モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》
ヴェルディ:歌劇《ドン・カルロ》
ヴェルディ:レクイエム

18:アンドレ・プレヴィン(1929-2019、ドイツ/アメリカ)🎶
 プレヴィンが指揮者として世界的に注目されたのは、1968年にロンドン交響楽団の首席指揮者に就任してからである。それまでのプレヴィンは、アメリカでジャズ・ピアニスト、映画音楽の作曲家、編曲家として成功を収めていた(アカデミー賞を4回受賞している)。主要オーケストラでの経験が浅いこと、若さと多才さ、そしてどんな音楽的な仕事も難なくこなすことから、彼がこのポストに就任することは物議を醸した。
 プレヴィンはメディアに精通しており、クラシック音楽を紹介するテレビ番組は絶大な人気を誇り、チケットやレコードの売り上げも好調だった。ヴォーン・ウィリアムズ、ラフマニノフ、ウォルトン、ショスタコーヴィチの交響曲を収録した一連の録音は、彼を軽薄な人間だと決めつけたがる人々を断固として撃退した。LSOの後、ピッツバーグ(1976-84年)、ロサンゼルス(1985-89年)を経て、1985年から1992年までロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めたほか、オスロや東京でも活躍した。

重要な録音: ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲全集
コルンゴルト:映画音楽集
ウォルトン:交響曲第1番・第2番

17:ニコラウス・アーノンクール(1929-2016、ドイツ)
 最高の指揮者の一人であるアーノンクールは、音楽家としてのキャリアをチェリストとしてスタートし(17年間オーケストラ奏者であった)、カラヤン、エーリヒ・クライバー、オーマンディ、カール・シューリヒトなどの下で演奏していた。1953年には、バロック音楽の世界と演奏の実践を探求する目的で、古楽器オーケストラ「ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス」を結成した。
 1957年のデビュー以来、アーノンクールはこのグループを率いて、バッハ、ラモー、テレマンなどの記念すべき録音を重ねてきた。彼は、オーケストラの音色の均質性を追求したように、演奏者に対してもお互いを尊重する姿勢を貫いた。彼の活動は、現代の多くの音楽家に大きな影響を与えている。

重要な録音: バッハ:マタイ受難曲
ベートーヴェン:交響曲全集
モンテヴェルディ:歌劇《オルフェオ》《ウリッセの帰還》《ポッペアの戴冠》

16:ウィレム・メンゲルベルク(1871-1951、オランダ)
 メンゲルベルクは、1895年にアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の常任指揮者に任命され、1945年まで在籍し、同楽団を世界で最も偉大なオーケストラの一つに育て上げた。リヒャルト・シュトラウスやマーラーの作品を擁護したことでも知られ、世界のあらゆる名門オーケストラを指揮した。彼の録音には衝撃的なものが多い。シュトラウスは《英雄の生涯》をメンゲルベルクとコンセルトヘボウに捧げており、マーラーは自作曲の理解についてメンゲルベルクを高く評価していた。
 メンゲルベルクは1920年にマーラーの交響曲をすべて演奏するフェスティバルを主導しているが、この作曲家がこのように取り上げられたのは初めてのことであった。メンゲルベルクはラフマニノフ、バルトーク、ヒンデミット、ラヴェル、コダーイ、プフィッツナー、ブロッホなど同世代の作曲家にも注目した。しかし20世紀前半の最も重要な指揮者の一人であったメンゲルベルクのキャリアは、ナチス・ドイツ占領下でも指揮活動を継続していたことで事実上終わってしまった。1945年、オランダ当局は、メンゲルベルクがナチスに共鳴したことはないと認めたにもかかわらず、オランダでの指揮を禁止した。メンゲルベルクのある追悼記事では、「現代の最も偉大な指揮者の一人であり、レンブラント以来、最も偉大なオランダ人である」と書かれている。

重要な録音: リヒャルト・シュトラウス:英雄の生涯
マーラー:交響曲第4番
ウェーバー:歌劇《魔弾の射手》《オイリアンテ》《オベロン》(序曲集)

15:ダニエル・バレンボイム(1942-、アルゼンチン)
不屈の精神を持つバレンボイムは、1960年代に指揮者としての “第2”のキャリアをスタートさせて以来、音楽界のトップに君臨し続けている。7歳でコンサート・ピアニストとしてデビューしたバレンボイムは、1954年に両親に連れられてザルツブルクに行き、イーゴリ・マルケヴィチの指揮クラスに通い、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの影響を受けた。フルトヴェングラーは「11歳のバレンボイムは天才だ!」と書いている。

バレンボイムは、パリ管弦楽団(1975-88年)、シカゴ交響楽団(1991-2006年)、そして1992年からはベルリン国立歌劇場とシュターツカペレ・ベルリンの音楽監督を務めるなど、目覚ましい活躍を見せている。偉大な指揮者の一人であるバレンボイムは、現在、1999年にパレスチナ人作家のエドワード・サイードと共同で設立した、アラブ諸国とイスラエルの若手音楽家によるウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団の指揮に多くの時間を費やしている。

重要な録音: ワーグナー:楽劇《ニーベルングの指環》
ブルックナー:交響曲全集
チャイコフスキーとシベリウス:ヴァイオリン協奏曲(リサ・バティアシュヴィリとの共演)

14.ヴァレリー・ゲルギエフ(1953-、ソビエト連邦/ロシア)🎶
 ゲルギエフは、無精ひげを生やした姿、指揮棒を使わない指揮法でも知られる、今日の最も偉大な指揮者の一人であり、自国の音楽界に大きな影響力を持っている。1977年にベルリンでカラヤン指揮者賞を受賞したゲルギエフは、レニングラードのキーロフ歌劇場(現在はマリインスキー歌劇場に改称)の副指揮者として注目を集めた。1988年、ゲルギエフはマリインスキーの首席指揮者兼芸術監督に就任し、レパートリーを増やしながら、演奏のレベルを世界に通用するものにまで高めた。彼は多忙なスケジュール、絶え間ないエネルギー、情熱に溢れた音楽作りで知られている。

重要な録音: ショスタコーヴィチ:交響曲第7番
プロコフィエフ:交響曲全集
ムソルグスキー:歌劇《ボリス・ゴドゥノフ》

13:ユージン・オーマンディ(1899-1985、ハンガリー)🎶
 ブダペストに生まれたブラウ・イェネー(*オーマンディの本名)は1921年に渡米し、ニューヨークのキャピトル・シアター・オーケストラにヴァイオリン奏者として入団。彼が初めて指揮を経験したのは1924年、急病で倒れた指揮者の代役を務めたときだった。そして彼が次の段階に進んだのは1931年。フィラデルフィア管弦楽団の公演で、病で倒れたトスカニーニの代役として出演したときである。
 1938年、オーマンディはフィラデルフィア管弦楽団の首席指揮者に就任し、1980年までその職にあった。これは主要オーケストラと指揮者の間の歴史上、最も長い関係の一つである。オーマンディは、リズムの推進力、オーケストラの透明感、弦楽器の音色の豊かさなど、優れた資質を持っており、伴奏者としても優れた手腕を発揮していた。

重要な録音: サン=サーンス:交響曲第3番
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番・第3番・第4番(ラフマニノフとの共演)
チャイコフスキー:交響曲第6番

12:サー・ジョン・バルビローリ(1899-1970、イギリス)
 バルビローリは、指揮者としての正式な教育を受けていない。ヴァイオリニストの父と祖父(二人ともヴェルディの歌劇《オテロ》の初演で演奏した)から受け継いだ音楽性と、チェリストとしての経験が、彼に必要なものをすべて与えたのである。1920年代後半には、コヴェント・ガーデンにある英国国立歌劇場(現在のロイヤル・オペラ・ハウスの前身)で指揮をしていた。
 ニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督(トスカニーニの後任として)としての不幸な任期を務めた後、1943年にマンチェスターのハレ管弦楽団の首席指揮者に就任した。そこで残りの音楽人生にこの楽団と今日まで語り継がれるほどのいい関係を築いた。バルビローリは、1930年代にクライスラーにハイフェッツ、ルービンシュタインやバックハウスらのような音楽家との録音が証明しているように、交響曲のレパートリーはさておき、オーケストラの伴奏者として最高の人物の一人であった。

重要な録音: エルガー:チェロ協奏曲、海の絵
エルガー&ヴォーン・ウィリアムズ:弦楽作品集
マーラー:交響曲第5番

11:フリッツ・ライナー(1888-1963、ハンガリー)
 アメリカの評論家ハロルド・ショーンバーグは、ライナーについて、「音楽の知識人、比類なき音楽家、そして事実上、この分野で並ぶ者がいない耳の持ち主として、フリッツ・ライナーは20世紀の音楽界と思想の中でユニークな位置を占めていた」と書いている。ライナーは、技術的な正確さ、フレージングやダイナミクスの精密さ、綿密な準備、そして彼の憧れであり、偉大な存在であるアルトゥール・ニキシュから受け継いだ恐るべき気性と鋭いまなざしによって記憶されている。
 1922年に渡米した彼は、まずシンシナティ、ピッツバーグのオーケストラを運営したが(1922-48年)、最も賞賛されているのはシカゴ交響楽団との仕事と録音である。ライナーがシカゴ交響楽団に在籍していた時期はRCAが「Living Stereo」というレコーディング・シリーズを開始した時期と重なっており、彼がこのレーベルのために制作したほとんどすべてのディスクは、伝説的なものとなっている。

重要な録音: バルトーク:管弦楽のための協奏曲
ロッシーニ:序曲集
リヒャルト・シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき、ドン・キホーテ、ドン・ファン

10:サー・サイモン・ラトル(1955-、イギリス) 🎶
 最高の指揮者の一人であるラトルは、幼い頃から「他の子供たちがマンガを読むように」楽譜を読み、1971年に王立音楽院に入学する前から、故郷のマージーサイドで指揮をしたりコンサートを企画したりしていた。ラトルはヨーロッパ各地のオーケストラに客演して経験を積んだあと、1980年にバーミンガム市交響楽団の首席指揮者に就任当時には決して知名度が高いとは言えなかった同オーケストラを、徐々に世界的なレベルのオーケストラへと育て上げ、その名を轟かせたのである。
 彼はこのオーケストラに18年間在籍し、1999年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に任命され、2002年から2018年までこのポストを務めた。2017年からはロンドン交響楽団の音楽監督を務めており、2023年からはミュンヘンのバイエルン放送交響楽団の首席指揮者に就任する予定である。ラトルの音楽的欲求は、レパートリーの範囲だけでなく、演奏法においても貪欲で、現代のオーケストラと同様にピリオド楽器の演奏にも精通している。レパートリー(彼は多くの現代音楽を演奏している)とスタイルの多様性は、ラトルの並外れた才能を特徴づけるものである。

重要な録音: ラフマニノフ:合唱交響曲《鐘》、交響的舞曲
バッハ:マタイ受難曲
ガーシュウィン:歌劇《ポーギーとベス》

9:グスターボ・ドゥダメル(1981-、ベネズエラ)
 カリスマ的な存在であるドゥダメルは、急速にその地位を築き上げてきた。これほど若くして、しかも短期間で世界的な評価を得た指揮者は、他にはおそらくレナード・バーンスタインしかいないだろう。ドイツ・グラモフォンは、わずか24歳で彼と契約した。幼少期の音楽教育をベネズエラの有名な「エル・システマ」で受けた後、1995年に指揮を始め、1999年に最初の音楽監督のポスト(シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ)に任命された。
 その10年後には、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督に就任。2026年までの契約で現在も同団の音楽監督を務めており、2021年8月1日からはパリ・オペラ座の音楽監督にも就任。2019年には、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムの「スター」を獲得した。最高の指揮者の一人であるドゥダメルは、驚異的な存在である。

重要な録音: チャイコフスキー:交響曲第5番、フランチェスカ・ダ・リミニ(シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラとの共演)
アイヴズ:交響曲全集
ウィリアムズ:ジョン・ウィリアムズ・セレブレーション

8:レオポルド・ストコフスキー(1882-1977、イギリス)
 ストコフスキーは、音楽愛好家たちに、何世代にもわたって華やかで独裁的、完全無欠で近寄りがたい存在…というステレオタイプの指揮者像を体現してきた。それは、アニメーション映画『ファンタジア』(1940年)の制作でウォルト・ディズニーとコラボレーションしたことが大きく影響している。1909年にデビューした彼は、1975年に最後のコンサートを指揮した。
 その長い音楽人生の中で、フィラデルフィア管弦楽団を率いて世界有数のオーケストラに育て上げ(1912-36年)、その後、全米青年管弦楽団(1940年)、ニューヨークシティ交響楽団(1944年)、ハリウッド・ボウル交響楽団(1945年)、アメリカ交響楽団(1962年)を設立した。有名な話だが、彼は指揮棒を使わずに指揮をした。また、可能な限り新しい作品をプログラムに取り入れるようにし、観客が音楽に親しめるように、J.S.バッハの作品を中心に、オーケストラのために数多くのトランスクリプション作品を書いた。

重要な録音: バッハ/ストコフスキー:トランスクリプション作品集
グリエール:交響曲第3番《イリヤ・ムロメッツ》
ワーグナー/ストコフスキー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》の交響的合成

7:サー・トーマス・ビーチャム(1879-1961、イギリス)
 ビーチャムの父、サー・ジョセフは、ビーチャム製薬会社(現在はグラクソ・スミスクライン株式会社の一部)の創業者で、大変裕福であった。おそらく、トーマス・ビーチャムほど、相続した富を自国の音楽界に投資し、発展を促進させたアーティストはいないだろう。彼の天性の音楽性は、彼の起業家としての能力と一致していた。

 1905年にニュー・シンフォニー・オーケストラ、1910年にビーチャム交響楽団を設立し、コヴェント・ガーデンでオペラのシーズンを開催(1913年)、ディアギレフのバレエ・リュスをロンドンに誘致(1913-14年)、1932年にロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、1946年にロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団を設立。ディ―リアス、シベリウス、リヒャルト・シュトラウスの音楽を擁護し、ハイドンとモーツァルトの演奏では他の追随を許さなかった。彼は『ロリポップス』(オーケストラのアンコール・ピース集)で知られていることからもわかるように、ウィットに富んでいたことでも有名だ。

重要な録音: プッチーニ:歌劇《ラ・ボエーム》
リムスキー=コルサコフ:シェヘラザード
ディーリアス:人生のミサ、北の国のスケッチ

6:クラウディオ・アバド(1933-2014、イタリア)
 アバドは、オーケストラの音楽家、ソリスト、そして聴衆から最も尊敬され、愛されているマエストロの一人といえるだろう。プライドが高く、無口で、非常に秘密主義な男であるにもかかわらず、彼はロンドン交響楽団、ウィーン国立歌劇場、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を歴任した名指揮者である。
 偉大な指揮者であるアバドは、2つのユースオーケストラ(EC ユース管弦楽団とグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラ)を設立し、2000年に命がけのがん手術を乗り越えた後は、トップ・オーケストラのメンバーである友人たちから厳選された奏者で構成されるルツェルン祝祭管弦楽団を設立した。

重要な録音: ブルックナー:交響曲第1番
ショパン:ピアノ協奏曲第1番/リスト:ピアノ協奏曲第1番(マルタ・アルゲリッチとの共演)
マーラー:交響曲第3番(ルツェルン祝祭管弦楽団との共演)

5:レナード・バーンスタイン(1918-90)
 20世紀の音楽界で最も重要な人物の一人であるバーンスタインは、間違いなく、ただの指揮者ではなかった。自然体でカリスマ性があり、ハンサムな顔立ちと高い知性を備え、すぐれたピアニスト・教育者であり、あらゆるジャンルの音楽を手がけた作曲家でもあった。最も有名なのは、1958年から1969年までニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めたことである。
 この時期、彼は多くのテレビ番組に出演したり、プレビューコンサートを行うことで、クラシック音楽の神話を解き明かすことに成功した。偉大な指揮者の一人であるバーンスタインは、多彩で広大なレパートリーを楽しみ、コロムビアとのレコーディング契約によって、自分が選んだものをほぼすべて録音することができていた。

重要な録音: マーラー:交響曲全集
バーンスタイン:チチェスター詩篇、交響曲第2番
シベリウス:交響曲全集

4:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954、ドイツ)🎶
 フルトヴェングラーは、少なくとも2つの点で後述のトスカニーニとは正反対の人物である。まずビートが不正確なことで有名であり(時には意図的にそうすることもある)、次に第二次世界大戦中も祖国に留まっていた。一方でトスカニーニはファシスト政権下のドイツとイタリアでの指揮を拒否している。フルトヴェングラーは、紛れもなく20世紀最大の解釈力を持つ音楽家の一人である。
 指揮者として、彼はその場の状況に合わせたパフォーマンスをすることができたが、これは今まで他のほとんどの指揮者が超えることも並ぶこともできないやり方であった。彼の目標は常に、音楽そのものの感情的、精神的な本質を探し出すことであり、それが並外れた力を持つ演奏を生み出すのである。

重要な録音: ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》
ベートーヴェン:歌劇《フィデリオ》(ザルツブルク、ライヴ録音、1950年)
ベートーヴェン:交響曲第3番《英雄》(ウィーン、ライヴ録音、1944年)

3:アルトゥーロ・トスカニーニ(1867-1957、イタリア)
 20世紀最大の指揮者(音楽家)の一人であるトスカニーニは、生前から伝説的な存在であり、その名声は職業の代名詞ともいえるものだった。トスカニーニは専制君主と恐れられ、完璧主義者であり、気性が荒いことでも知られているが、録音や放送を通じてクラシック音楽界を支配していた。1937年には彼のためにNBC交響楽団が結成され(1954年に最後の演奏会を行った)、その過程でアメリカでの知名度を高めていった。
 トスカニーニは膨大なレパートリーを誇っていた(彼が近眼だったからというだけではなく、常に記憶を頼りに指揮をしていた)。トスカニーニのトレードマークは、スリリングなまでに緊張感のある、細部にまでこだわった明快な演奏である。リハーサルの様子を撮影した映像では、彼が「Cantare!(歌え!)」と奏者たちを鼓舞する声がよく聞こえてくる。

重要な録音: ドビュッシー:海
ヴェルディ:歌劇《アイーダ》
ワーグナー:歌劇《ローエングリン》(第1幕への前奏曲、第3幕への前奏曲)

2:ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908-89、オーストリア)🎶
 カラヤンは、20世紀後半の最も有名で影響力のある指揮者である。彼の天才的な音楽的才能は、猛烈な野心と狡猾な政治的手腕と結びついていた。今日、ザルツブルク音楽祭のディレクターやベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者(1954年から1989年まで在任)として記憶されているカラヤンは、ドイツ・グラモフォンのクラシック・カタログの25%を占めていたこともある。
 彼の生涯で、1億枚以上の録音が販売された。偉大な指揮者の一人であるカラヤンは、クラシック音楽界を支配し、先駆的な熱意をもって新しいデジタル技術を取り入れ、彼を最も有名にしたウィーン古典派の演奏では、今でも比類のない存在となっている。

重要な録音: ベートーヴェン:交響曲全集-フィルハーモニア管弦楽団
ブラームス:交響曲全集-ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番-ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1:カルロス・クライバー(1930-2004、オーストリア)🎶
 クラウディオ・アバドは彼を「20世紀で最も重要な指揮者」と呼んだ。確かに彼は最もカリスマ的な存在であった。クライバーの指揮を見ることは(彼のリハーサルや演奏中のフィルムは数多く残っている)、結果を聴くのと同じくらい楽しいことである。彼はいつでも笑顔を絶やさず指揮をし、喜びに満ちているように見える。テノール歌手のプラシド・ドミンゴは、クライバーのことを「今まで会った中で最も音楽的な人」と言っている。
 しかし、少数の作品に集中した彼の全キャリアの中で、彼が指揮したコンサートはわずか96回、オペラ公演は約600回に過ぎない。1982年以降はスタジオ録音を行っていないが、その録音は比類なきものだと多くの専門家が評価している。気に入らないことがあるとすぐに家に帰ってしまう彼は、次第に引きこもりがちになった。さらに完璧さにこだわるあまり、1999年に最後のコンサートを行うまでの10年間、わずか数回のコンサートしか行わなかったという。

重要な録音: ベートーヴェン:交響曲第5番・第7番
ニューイヤーコンサート(1989年、1992年)
リヒャルト・シュトラウス:歌劇《ばらの騎士》

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 カルロス・クライバーの『コンプリート・レコーディング・オン・ドイツ・グラモフォン Complete Recordings On Deutsche Grammophon』には、
 オーケストラ作品の、
ベートーヴェンの交響曲第5番と第7番、ブラームスの交響曲第4番、シューベルトの交響曲第3番と第8番の3枚のCDに加え、
 オペラでは、《魔弾の射手》《こうもり》《椿姫》《トリスタンとイゾルデ》の4作品が録音されている。
「クライバーの魔法は、音楽のすべての小節に現れている。ベートーヴェンとブラームスはリリースされた時と同じように新鮮に聴こえ、3枚組の《トリスタン》にはマーガレット・プライスの華麗なベルカントのイゾルデが入っているのが何よりすばらしい…このコレクションは本格的な音楽愛好家の必需品だ」(サンデー・タイムズ紙)

Written By uDiscover Team
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