のんびりかな打ち日記  ini's blog

NikonD7100やSonyRX100M3で撮影した画像と日々の出来事を“ かな入力 ”でのんびり綴るブログです。

メリーゴーランド

2006-12-19 00:08:53 | 通勤快読
先週は全般に体調を崩して状態は悪かったものの、週末には回復して神戸に出張するついでにひとりで実家に帰省しました。
久々に母とサブの元気な顔が見られて良かったです。

その往復の新幹線の中で萩原浩さんの『メリーゴーランド』を読みました。

主人公は都内の家電メーカーを辞めてUターンで地元の市役所に勤務する啓一。
その啓一が巨額の赤字を抱えるテーマパーク“アテネ村”を運営する第三セクターに出向して奮闘?するストーリーです。

最後の解説に“さわやかだけど、苦い”と感想が書かれてましたが、まさにその通りでした。
とても面白く読めたし、ユーモア小説っぽくて思わず笑ってしまったりするところも多々あって萩原浩さんは、ホントに上手いなって関心させられるのですが、やっぱり「苦い」、それも「ほろ苦い」とか「苦みばしっている」なんてこともなくうーん「苦い」って感じです。

こういう、「お役所仕事」というか「事なかれ主義」というか、とにかく少々オーバーに表現されているものの、そんなものかなとも思える仕事風土の中で、主人公が回りを巻き込みながら新風を巻き起こす話って言うと、一見どこにでもありそうな話ではあるのですが、そう単純なものじゃないんですね。もっと根は深いし話も深い。
でもだからこそこの小説の面白さもあるように思えます。そしてだからこそ「苦い」んですね。

萩原浩さんの小説は、苦情処理係りのストーリーの「神様からひと言」でも、とても上手いミステリーながら最後があまりにやるせなくて辛い「噂」でもそうなのですが、この小説でもご本人がもと広告代理店勤務をしていた経験と知識が見事に生かされてます。

「誰もが豆男であり村人なのさ」っていう言葉が最後まで読み手自身にもどのように折り合いをつけるのかを突きつけられているような気がしました。