北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」1月号(2016)

2016-04-10 | 未来

安物の箸でくずせば卵黄のあまい嘆きは粘りをおびて 

朝な朝な綻びながら綴じながらただ負けたくてここにいること

分かつまでどれほどの雨 街路樹の枝の傷みにふれることなく

搗色に深まりながら手荷物のツバメノートをひらく男よ

裂け目から鮮やかな香がたつことの、木のかなしみを言わせたいのか

眉尻をあげて遮る一瞬を驟雨のように性はよぎって

白湯で溶く蜜のぬめりのどんなにかくるしいだろう ふゆがはじまる

 


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