藤棚の奥のくらみにゆきたがる人のからだという湿潤は
うねりながらた走る水に親しんで背いてはまた親しんでいる
一日の四隅燃やしてきたようなおみなごの目よ 恋愛は野火
熱のある細い手足が液体のように動いて ただいま、と言う
ひどくあやうい語尾そのままにふりこぼす火の粉(どなたを思っているか)
雨のあとの夏野にむせる準備だけしておけばいい 恋であるなら
首のない男の夢を二夜みて三夜めなれば連れ帰りたい
陸に塩こぼす小さなまじないを教えてあげるからついてきて ※ルビ「陸」くが
海に刃をあてる あなたがもう二度と死んだりしなくてもいいように
夕暮れの酸味を胸にすりこんで復讐の話をはじめよう