北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」05月号(2012)

2012-06-03 | 未来

開いたらたちまちふるくなるような書物を抱いておいでください

きざみのりふりかけるとき息を止めおかあさんおそろしいおかあさん

啜ったり舐めたりすると ひ って言ういのちだ なんとしてもかわいがる

なんまいも海を捲ってきたゆびを見ている たいせつにしますから

お前のなかに村があるって父さんが言う 煙突を数えてくれる

泣くまいとしている人にひとつずつ滝を差し入れて暮らしたい

あなたは、削られたくてしかたない崖のようだから好きでいる

とっておきのよくないこころ見せあってげらげら咲いているヒヤシンス

せかいいちかしこいお前、せかいいち野蛮なお前、あいしてやまぬ

どこからでも裂ける仕様になっている(わたしは)川としても使える