北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」10月号(2013)

2013-11-02 | 未来

ところてん涼しかったと書き置いてそれきりいなくなる人だろう

折れ曲がり折り重なってはつなつの波頭からお悔やみがくる

明け暮れを選りわけて啼く鳥たちのかしこい声を聴いて育った

食パンに咲いた青黴 どのように閉じるまぶたであれあたたかく

斑かすように並んだ顔文字のオメガは最後尾を飾る文字

半夏生 くるしみかたが足りないと森のみどりに諭されている

炎天にむせる真昼もうなされて目覚める夜も 心臓はけなげ

漕ぎ出せばいつも無念でありましょうぼくらは舳先から年老いて

くさはらを踏んでいたっけ光ごとかきまぜていた貴い素足

もういないひとよ(嘘だろ)明け方のひとさしゆびを握っておくれ