ところてん涼しかったと書き置いてそれきりいなくなる人だろう
折れ曲がり折り重なってはつなつの波頭からお悔やみがくる
明け暮れを選りわけて啼く鳥たちのかしこい声を聴いて育った
食パンに咲いた青黴 どのように閉じるまぶたであれあたたかく
斑かすように並んだ顔文字のオメガは最後尾を飾る文字
半夏生 くるしみかたが足りないと森のみどりに諭されている
炎天にむせる真昼もうなされて目覚める夜も 心臓はけなげ
漕ぎ出せばいつも無念でありましょうぼくらは舳先から年老いて
くさはらを踏んでいたっけ光ごとかきまぜていた貴い素足
もういないひとよ(嘘だろ)明け方のひとさしゆびを握っておくれ