北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「NHK短歌」2月号 ジセダイタンカ 7首

2013-03-11 | その他

      wrest                  

 

親密になりすぎた日のぼくたちにふさわしい名前を授けたい

肉体が不如意なままで澄んでいる 青白い腱まで見せている

ストローで吸う(本意ではないだろう)緑茶のような味のぬるみず

くるみの木、ほしい、こよなく。ねむりから覚めたばかりの声でおまえは

(そのようにわかる)夢には夢なりの手順があって、またころされて、

ありがとう、おまえは川になるといい。僕はもぎとる係になろう。

あたためたミルクの皮を食べたがるいのちそのものとして座ってら

 

↓NHK短歌 2013年02月号  

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「未来」02月号(2013)

2013-03-03 | 未来

背景に求肥のような日没を据えて物語をはじめたい

途中だと思いつづける朝夕のとがった水に喉は応える

なだらかに(ゆ)を導いてくるだろう しずかに(ふ、)を置いてそののち

おりおりに隆起をみせる肉体のかすかなバグであれば齝む

いくたびも空裂きながら(賜物でありましょう)さびしいいなびかり 

抗ってはじける水の力量を見せている あれは川の筋肉

間違いのように降る雨舐めながらわたしどこへもゆかないだろう

サバイバルめいた遊びのただなかで塞ぎたいのはくちびるじゃない

去り際のうすいこころを渡し合うわたしたちついに凍土のままで

継ぎ足した火を持ち帰る ひとりひとりにんげんとして夜をこらえる