北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」04月号(2014)

2014-05-01 | 未来

水仙の茎のつよさに諭されて磨きなおしているふるい床

傾いているような気もするけれどあかるい場所に犀の暦を

ゆびさきに獣脂の匂い消残るをそのままにして年の始めは

お焚き上げのけむりの裾を行き来するひとりひとりに松の香は添う

これひとつきりの体と思うことも少なくなってすする甘酒

電線の弛みのままに降りつもり雪はかすかに弧をなしてゆく      ※ルビ「弛み」たゆみ

春菊の気むずかしさをもてあます睦月であれば言葉すくなく

マッシュアップめいた暮らしに慣れてゆき〆のうどんを今日も忘れる

雪雲よ まだやわらかな喉笛のあたりを裂いてさしあげようか

吐きなさい吐きなさいと背をさすられる夜もあり また水際にいる