北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」9月号(2016)

2016-10-10 | 未来

体からうすくこぼれて草笛は終の一音までみどりいろ

家族だから くるしい声を出さないで馬鈴薯を鍋ごとゆさぶって

古賀さんがくれた木耳ぎゅるきゅると泣いてばかりだな、ろくがつは

離りながら親しみながら雨の日は雨にかなっている柳の木

羅紗紙にとどめをさして折りたたむ 大丈夫、鶴にはしないから


「未来」8月号(2016)

2016-10-10 | 未来

よく怒るひとの体はあたたかい五月の匙をきれいに磨く

おさまりの悪いこころを割くように白木蓮は白を乱して

おまえたち、の「たち」に加わる花の下 この世の膝をそろえて座る

酢の中でかわいいものになっている野菜のことを思う一日は

息をもっと吸いな 小さく呪われて蟻が運んでいる花の種