北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」11月号(2014)

2014-12-03 | 未来

立ったままのむコーヒーの尊さよわたしは誰の娘だったか

日の陰にシルバーリーフけむらせて隣家の人という慕わしさ

夏闌けてきしむ手足をなだめつつ没ファイルから拾うプランは

あたらしいことばいくつもおそわって発音すればぎこちない口

夏空をかきまぜている枝先よ種子の時代を遠くへだてて

葉裏までよごれているね 炎天のぼうりょくだけがともだちだった

広すぎる夜のことばの悔恨のおととし買った線香花火

虫たちのはしゃぎやまない夜の底わけへだてなく愛してやるよ

どの性もすこしふるえて立っているあおいうつしみ芯までひやし

はらわたに塵を芥をひからせて鮒に近しい者でありたい