借りてきた声を返しにゆく夜の路上でかみ砕く糖衣錠
靴紐をきつく結んだ 好きでいることを謝りたいひとがいる
ほんとうのことをいくつもとりこぼし鳩よいつまで心苦しい
罅に似た感情をもち、もて余し、葉桜ばかり見上げては褒め
どこかすこし開いたままで挨拶をかわしたあとの杏仁豆腐
iPhoneのMapにピンを落とし込みそうかわたしはここにいるのか
あたらしい傷が加わりうつくしくなったお前を残して帰る
おむすびに傘さしかけて散りますねいけませんねと続くお花見
ひどいよ、とちいさく嘆く声がして夜の電車がひとを吐き出す
濁点がずっとからだにつきまとう春のさなかを飛ぶつばくらめ