北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」01月号(2015)

2015-02-09 | 未来

いっさいを疎みつづける夕暮れの家長の椀に粥はつがれて

五分粥の白の濁りをのぞきこみどんな時間にいるかあなたは

褶曲の半島なれば肉体のおちこちに咲く思いがけなさ

四歳と八十歳が入れ替わり立ちあらわれて否と言いつぐ

拒まれて近くなりゆく不可思議に脛をさすれば息吐くばかり

立ち上がるためのちからをかき集め一日ごとの長さを進む

情緒から先にくずれてははそはの(かあさん)と呼ぶ声のすはだか

くやしさの底にねむっているひとのやわらかすぎる目鼻を拭う

釣りにゆく約束をして或る午後はこの世の外の海岸にいる

複雑に複雑に死をたぐりよせ生の庭面に立つ霜柱