北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」08月号(2015)

2015-08-30 | 未来

いっさいを疎むこころが満ちてくる てのひらで遮る海の色

ゆびをさす先に小さな波頭いくつもうまれ きりがなかった

生きている種子を選りわけ晩年の父によく似たひとに手渡す

あまやかに終の母音をにじませてあなたが読みあげる花の名よ 

曇り日の手足をしるく曲げながら土の深みを鋤いているひと

片仮名で事足りる日を水玉のシャツでしのいで、戦前にいる

くどくどと散り敷くまでの結構を見とどけている春の体は

 


※7月号は欠詠。