北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」08月号(2013)

2013-09-02 | 未来

傾きをとがめるように男らはしずかに杭を打ち糸を張る

水糸の黄に区切られ方形に鎮まる土よ ここより他郷

懲らしめるために包んだ薄紙の、なかの紙幣の、気味が悪いね

ぬさ、にぎて、みてぐら などと声に出し濁りのままに忘れるだろう

歩行からもっとも遠い足どりで火を踏みながらゆく妹よ

やさしくてひどい体を思い出す沼になるまで眠らずにいる

外塀に猫がしたたる木曜の結び目がゆるくてかなわない

ゆくりなく雨に撲たれる わたくしはあなたの瑕疵になれるでしょうか

開墾をかさねた末に刃こぼれてあらゆるものは戦争の比喩

ネヴァモア 問いはそのまま一点に凝りきれいな痣をなすまで