北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」10月号(2014)

2014-11-03 | 未来

雨の日のバスにこもったにんげんの息のとろみに体を入れる

文字もたぬことの清しさ思いつつ車中にひらくアイヌ語辞典

朝な夕な駅にこごっているひとの灰色の荷を鷗がつつく

ある朝はちぎれるように立ち上がり誰の名前を呼んでいるのか

紙パック入りの緑茶をすすっては道ゆくひとに何かつぶやく

最下部のレイヤーに朱を塗りこめておりてゆくとき匂う指先

返却用ポストの口にさしこめばDrrと落ちてゆく資料たち

繰り返すアンドゥ 雨はやまなくてどうしているかわたしの犬は 

肩書きで呼ぶそのひとのワイシャツの水際のような飾りステッチ

労働というには少しにぎやかな日々に付箋を増やしつづけて