北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」06月号(2013)

2013-07-03 | 未来

ゆびさきを揃えたままで来し方を語り始める波 つらかろう

丘を行くつもりの足がぬかるみを何度もみつけてはよろこんで

四十度傾けて読む寄せ書きのゆるいひらかな絵文字はなびら

春を待つ熊よおまえの悔恨に寄り添えなくてすまなく思う

気短な眉をしているその人がいきものとして吐く朝の息

割られたがる氷があって割りたがる手足があった いってらっしゃい

蠢蠢と食べてねむって春になれば深いところがついに泣きだす

みずうみがひらくのを見にゆきましょう(裂けているから尊い心)

くるしいと言えばいいのに明るくてあなたからいただく春帽子

新しい感情がくる 三月の枝はおのおの花を兆して

 


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