財政危機に陥っているギリシャで4日大規模なストライキが発生、暴徒化した群集から火炎瓶が投げられるなど3人の死者が出た。
ギリシャ国会は6日夜、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)からの総額千百億ユーロ(約13兆円)の金融支援と引き換えに、財政緊縮政策の関連法案を可決した。財政緊縮策は、付加価値税とたばこ税、酒税の増税と公務員賞与の削減などで三年間で300億ユーロの財政赤字を削減するという。しかし、火種を抱えたままの再出発という気がしてならない。
本ブログ、4月25日「ギリシャの財政破綻と単一通貨の問題点」の最後で、次のように述べた。
いったん財政破綻に陥ると、単一通貨であるが故に、その国独自の政策は通用し難い。それぞれの国が独自の通貨を保有していれば、その国の通貨が緩衝材(通貨の高低:為替の調整)の働きをする余地があるが、単一通貨の下では、その国が採りうる政策は、ただひたすらコスト削減に努めざるを得ない、従って結局は財政の健全化は国民の収入を低下(人件費を低下)させることしかない。従って、それは益々国力の低下を招き、浮かび上がれない。
ギリシャは今後、厳しい緊縮財政を余儀なくされる。だが緊縮財政からは、有効な景気対策は生まれない、したがって益々の不景気の悪循環となり、ギリシャは受けた金融支援をデフォルト(債務不履行)になる可能性が高い。
ギリシャには観光産業以外に国際競争力のある製造業がなく、貿易赤字は常態化している。緊縮財政をするだけで、財政赤字を埋める資金源がない。さらにギリシャでは、徴税能力が著しく低く、脱税がGDPの30%を超えるとさえ言われている。
経済危機に見舞われた国は通常、財政出動か金融緩和で景気回復を図る。しかし、巨額の財政赤字を抱えるギリシャは、景気対策どころか逆に緊縮策を迫られている。
もともと圏内を単一通貨にすること自体に問題があるうえに、ギリシャのような小国が単一通貨圏のユーロに加盟すること自体が無理だったと言わなければならない。グローバリゼーションの下で、市場競争すればギリシャのような小国が負け組みになるのは目に見えている。ユーロに加盟するときに、国をあげて均衡財政を至上命題として国家運営する覚悟が必要だった。ギリシャの次は、スペイン? ポルトガル?予備軍が控えている。
ギリシャ発の信用不安は世界を駆けめぐり、ユーロが売り込まれてユーロ安となり、日本などの株価が急落した。ギリシャの財政赤字と日本の財政赤字を重ね合わせ、日本の危機を煽る識者がいる。だが、国際収支(海外とのモノやサービスの取引状況を示す経常収支の黒字幅)は、縮小傾向だが、依然として高い黒字幅を維持している日本とギリシャとでは同じ財政赤字でもその意味するところは天と地ほどの差がある。